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後継者問題が解決しました~

作者: 空のかけら

某テレビで、後継者問題についての報道があったので…

わが社は、創業約500年の木工細工を扱う会社だ。

ただ、本当に500年も前からあったかと言われると、かなり怪しい。


とは言っても、かなり昔からあった組織だったのは、確かなことで、文献にもあるくらいなのだから、大まかには間違いはないのだろう。


 最近の社長の悩みは、『後継者』問題である。

自分の後を任せることのできる後継者は、同じ世代の社長達の共通する悩みで、その後継者がいないことで、自分の体力が続いていても、従業員が再就職可能な年齢のうちに、会社をたたんでしまうことが多くなっていた。


 社長に言わせると、社長の祖父が前社長なのは、社長の父親が一度引き受けた社長職を航空機墜落事故で、遂行することができなくなったため。

 祖父は息子にバトンタッチしたはずの社長をする事になっただけではなく、息子夫婦が事故死するとは思っていなかった。

 息子夫婦には、現社長の1人しか子供はおらず、息子の義母、つまり社長の母親の母が危篤になったという知らせで、とりあえず先発した際の事故だった。(後発に、祖父母と一緒に行く予定だった)


結果、社長は祖父母に育てられることになった。

祖父母存命の時に、嫁をもらい、2人で会社を切り盛りしながら、儲けるわけでもなく、堅実な経営をしていた。


しかし、細工をできる職人も社長以外は1人になってしまい、その職人も年齢が結構高い。新しい人を入れたいが、何度求人を出しても、誰も来ない。

正直、もう駄目だと思っていた。


そんな矢先に、信じられないことが起きた。


***


 気が付いたとき、よく分からないところにいた。


座っている席から投げ出されるような感じで、もうだめだと妻の手を握っていたが、衝撃もなく、さっきまでのあの引っ張られる感じはなんだったのだろうと思ったが、今はそんなことはなく、なんだか蔵のようなところに妻と2人で居た。

蔵の中だが、ちょうど明け方の様子で、蔵の中の物が見え始めていた。


そして、見え始めた物を見て思った。

木工細工があった。

どこかで見た形だと思ったが、会社の文献にある、"失われた製法で作られた木工細工"だった。


吃驚したが、周囲に積まれている木箱の中身は、そんな木工細工が入っているようだった。


蔵の外で音がした。

蔵の閂を開け、カギを開けようとしているようだった。


カギを開けた次の瞬間、中に人がいることに気が付いた子供が、大声をあげながら、母屋の方に走って行ってしまった。

かなりびっくりしたようだ。


そのうちに、厳しい表情をした老人が近づいてきた。

どうやら、この蔵の持ち主で、この店の主人だといっている。


蔵の中にいたのは、どうしてだ。どこから来た。その見たこともない着物はなんだ。


様々な疑問をぶつけられ、気が付いたら蔵の中にいた。住所を言って、洋服というものです。

説明をしていくうちに、職業である木工細工の話になった。


すると、それまでの話で、ほら吹き夫婦として胡散臭げに見ていた主人は、目の色を変えた。

そして、その内容が一子相伝とも言える秘蔵している技術に達すると、主人はその夫婦が未来の後継者であることを認めざるを得なくなった。


夫婦が航空機事故により死んだのではなく、どこをどうなったのかが分からないが、過去の家業をしていた際の蔵の中に飛ばされた。

そして、その時の主人。

すなわち創業者に出会うことになった。

その時は、次代に後を譲っていたが、未だに主人として見られており、2代目が頼りないとこぼしていたそうだ。

そこに、遥か未来の当主が来たのだ。

普通では考えられないはずなのに、それを信じることになったのは、蔵の存在である。


今は、家業を行っている工房の近くにある、蔵だが、家業をここで行うよりも前から蔵だけはここにあり、過去に誰が作ったのか分からないという、おかしな蔵だった。


人が立ち入ると、消えるという人食い蔵という不名誉な名前が付けられていた。

しかし、知らない人が出てくることもあり、結局、よく分からないとのこと。


創業者、2代目と共に暮らしていこうと思った。

もう、未来には帰れないと思ったからだ。

失われたとされた木工細工も学び、夫婦の間にも2人の子供が産まれた。男の子と女の子。

事故に遭わず、祖父母に託した息子には合うことはできないだろうし、ここで生活していく以上、2代目の跡継ぎも考えた結果だった。



そのつもりだったが、蔵から出て5年経った、その時が来た。

明日は夜、満月になるその日。

蔵の周囲に風が舞い始めた。

周囲の空気が、蔵に向かって吹き始めたのだ。

これまで、こんなことはなかったのだが…。

爺さん(創業者)は、夫婦とその子2人に対して言った。

ここは、息子(2代目)にまかせておけばいい。お前たちは、その蔵に入れば、元の世界に帰れる。


そんなことを言い始めた。

当然、なんのことか分からない。

しかし、時間がないから、持っていくものを早く決めろと言う。

時間がないというのは、よく分からないので、爺さんを落ち着かせて聞いて見ると、過去にもいなくなった人が現れたり、いなくなったりするのは、満月が蔵の上に達した時に、起きていたという。


半信半疑だったけど、爺さんの言う通りにしようと思った。

木工細工のほとんどは、蔵の中にあるので、自作した木工細工数点と来た時に着ていた服。爺さんからの選別として、小判を奮発してもらった。使えるのか分からないけど。

そして、蔵のカギ。

カギは、数本の予備があるそうで、その予備から1本をもらった。


満月が蔵の上に近づくにつれて、蔵の上にうっすら光の道が出来つつあった。

爺さんと2代目、他の職人たち、町の人数人が蔵の前のちょっとしたところに集まり、蔵の中にいる私たちを見ている。

ここに来た時と同じ、引っ張られる感じがある。

とっさに、みんなに対してお礼を言ったような気がする。


その直後、蔵の上に満月が到達したと思ったその瞬間、強烈な光が辺りを白く染めた。


***


帰って行ったか…。

そっちでも、うまくやれよ。

しかし、500年か…

もう会えないだろうな、あの子たちには、懐いてくれていたんだけどな。


***


周囲を真っ白に染めた次の瞬間は、真っ暗。

蔵の中なので、いつもはそうなのだ。

しかし、蔵から入ってくる感じからすると、明け方のような感じがする。

さっきまで、夜中だったので、違和感がすごい。

カギを持っていることから、とりあえず、外に出ることにしようと思ったが、ふと、気が付いた。

外の閂は、どうやって外すのだろうか。

さらに、閂を外して、その次のカギを開けるのに、カギを持った人が中にいる。

記憶に間違いがなければ、蔵は実家にある昔の工房の隣に、"開かずの蔵"としてあったはず。

なぜか、閂は外れず、100年以上開けることが出来なくなっていた。

その間に、カギも紛失してしまい、結果的に放置状態になっていた。


悩んでいても仕方がないので、カギの内側から、扉が開かないか調べることにして、カギを身に着けたまま、扉に触れた…次の瞬間。

自動ドアのように、扉が横滑りをして、内扉も閂も無視して、扉が開いた。

物凄い音が出たが…。


***


航空機事故で、亡くなったと思った両親が、蔵から社長よりも若い年齢で帰ってきた。

2人の子供つきで。

そうすると、この子たちは、社長の弟と妹になるのかな。

年齢差がすごいけど。


蔵の中は、木工細工の山。私たちにとっては、財宝の山と言っても過言ではなかった。

しかも、聞けば、失われた製法も知っているという。

後継者として、帰還した両親にお願いしたので、後継者問題は解決した。

…他の後継者問題は、こういう形での解決は無理だろうけど。


***


両親が帰還後、

蔵の中にあった物をとりあえず、全部出して、その内容をチェックしていた時に、蔵の中に何もない状態の時に、それは起きた。


夜に満月の日。満月が蔵の上部になった際に、蔵の周囲が真っ白く染まった。

翌朝、両親は知っている。社長は知らない。

1人の老人が、いた。


***


後日、蔵の正体(?)について、判明するのだが、両親の戸籍は事故のあとに抹消されていて、役所に申請する際に大変困った。

地元の有力者で、社長の幼なじみの親(結構な年齢)、両親(社長よりも若い)で話した結果、そのままの情報を神社に届け出た結果、新しい戸籍等が作られることとなった。

蔵は、神社とうちが共同で管理することになり、使用する権利は、社長と両親の一族に与えられることになった。


その影響か、歴代の木工細工の職人等が絶えず訪れることになり、製法が途絶えてしまったものもあったが、それらを復活させることに成功した。


夜、満月が上る日。

その日は、蔵から帰るお客様。蔵から来るお客様。


創業500年越えの木工細工屋は、今日も時を越えたお客も相手にしている。



本当にこんなことがあったら、おおごとですけど。


これも共通世界設定の一部を使用。


たぶん、どこが設定なのか、分からないと思いますが。


よろしければ、評価などをお願いします。

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