幼馴染
「大丈夫か?」
教室に連れて行ってくれたかずは、そういって俺を抱きしめてくれた。
「お前がこんなことになってるなんて・・・。気づかなかった。すまん。」
「いや、助けに来てくれてありがとう。かずが来なかったらどうなってたことか」
幾分か、かずのぬくもりで落ち着きを取り戻せた俺はかずから離れると、
乱れた制服を直した。
「まさか、あの三上先生がこんなんだとは。」
俺は先ほどの三上の奇行に驚きが消せなかった。
「まあ、もう大丈夫だろう、何かあっても、もう近付くな。」
「ああ、もちろんさ、もうあんな目はごめんだ。」
教室の外はもう暗くなっていた。
俺は、幼馴染にまだ少し震えている体を支えてもらいながら、家に帰った。
「すまなかった。」
翌朝、昨日の夜何もできず寝てしまい、朝、いつもより早めに来た学校で一番初めに見たものは、三上先生の土下座だった。
俺が下駄箱に行って靴を履きかえた瞬間、俺の足元に先生がいた。
俺はどうしていいか分からず、無視することも考えた。
しかし、俺には昨日の行動で一つ気になってることがあった。
とにかく、ここは他の生徒も来る。
「先生、とりあえず顔を上げてください。話は別の場所で聞きますから。」
そうして俺は保健室に来てしまった。
他に2人で話せる場所もなく、ここしかなかったのだ。
保健室にはいる時、俺は一瞬立ち止まった。
怖かった。
しかし、仕方が無かった。俺は観念して保健室に踏み入る。
「本当にすまなかった。昨日の俺はどうにかしてた。本当に・・・」
「分かりました。ですがそう簡単に許せません。」
「そこを何とか。毎時間寝に来ても俺が何とかしてやるから。」
「いえ、それより、一つ聞きたいことがあるんです。」
「なんだ?」
「昨日の先生の様子、明らかにおかしかったですよね。薬・・・ですか?」
その瞬間先生の表情が固まった。
「いや。違うんだ。薬ではない。違法ではないんだ!」
「じゃあ、何なんです?」
「あれは・・・。神月。」
「はい?」
「お前が好きだったんだ。」
俺は固まるしかなかった。
今、先生はなんて言った?
自分の耳を疑うしかなかった。
「会話が成り立ってないんですけど・・・。」
俺は信じられなかった。
この先生が・・・?
「お前が好きだけど、なかなか言えなかった。言えるはずないよな。だから、いつもある人に相談してたんだ。そうしたらこの薬を飲むといいと言われて。」
「あ・・・。えっと・・・。」
「まさか媚薬とは思わなかったんだ。本当に申し訳ない。すまなかった。」
「先生がそこまでするとは・・・。とにかく先生の思いは置いといて。ある人とは誰ですか?」
「いや、言えない・・。」
「言ってください。さもないと校長に言いつけます。」
「そ、それは・・・。」
「早く。」
俺は先生の口から出たその名前に驚きとショックを受けた。
(え・・。あいつがそんなこと・・。)
「吉井かずだよ。お前の幼馴染の。」
俺は黙って保健室を後にした。
もう何も信じられなかった。