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騒動

お待たせしました!


….待って下さってたでしょうか?(笑)

煌びやかな装飾が施されたパーティールームは、会場の雰囲気に負けじと豪奢に着飾った人達であふれていた。


「緊張してこけなるなよ?」


セレブ空間に無表情ながら緊張を身に纏ったまどかは、すっと出された貴文の肘をどうすればいいかわからず両手で掴むと、苦笑しつつ貴文に自然な形に直された。


体が密着して余計緊張してしまうのだが腕を振り払うわけにもいかず、大人しくエスコートされるがまま。


憮然としたのは表情に全く出ないが雰囲気で感じ取ったようだ。


「これ終わったら好きなケーキ奢ってやるよ」


「…一緒に食べてくれますか…?」


目の奥を輝かせたまどかに笑みを浮かべながら頷く。

ハタから見ると立派な美男美女カップルで注目を集める中、ケーキという餌をぶら下げられたまどかは、全神経を集中させる。


凛と背筋を伸ばして、口角をあげて…



「…………!!」



綺麗に微笑したまどかを見て、貴文は目を見開く。


「お前……」


小さく首をかしげたまどかから慌てて目を逸らした貴文だったが、耳まで赤くなっているのは誤魔化しようがなかった。



赤いのを誤魔化すようにズンズン人だかりができている方へと進んでいく。

中心にいたのは、悠馬と蘭であった。


「あ、きたきたータカ!と…まどかちゃん⁉︎どうしたのすっごいキレ〜だね!この後オレと抜け出さない?」


「パートナーがいますので」


にっこり。


まどからしからぬ柔らかな笑みに面食らったような顔をして黙り込んだ蘭の横で、悠馬は笑った。


「全然違和感ないよ、まどかさん。」


「はい。これでもともとどこかの両家の血筋も入ってたそうですから…やればできるものですね。道明さま、ご令嬢に関するご教授、ありがとうございました。」


「は?何、どういうことだ?」


仲の良さそうな悠馬とまどかに貴文が突っ込む。


「パーティーに行くと聞いた後、ご相談させていただいたのです。貴文さんに恥をかかせるわけには参りませんので。」


「はぁ?」


俺に聞けよ、とふて腐れた顔をする貴文だったが、蘭も、「てか、どうしてオレには聞いてこないの〜?」と不満げだ。


「 失礼ながら、伊坂さまは先程のように、思っていなくとも誘い文句や賛辞をくださるので、率直な意見や教えを乞うには道明さまが適任だったのです。」


正確に指摘されまたまた黙り込む蘭。

そして、だからなんでオレに聞かねんだよ、と呟く貴文の背後から声がかかる。


そこには若いモデルらしき女を連れた小太りな男が立っていた。


「…小林常務…ご無沙汰しています」


「珍しいですなぁ貴文さん、こういった場に顔を出されるのは!有能なお兄様がいて学生をしていられる自由な時間を、もっと満喫しなくても宜しいのですか?ゆくゆくどこか会社に勤める際に豊かな学生の時間は大切でしょうに!」


どこか演じるように大げさに棘を含みつつそう言った。


学生生活にかまけて会社に益をもたらしてもいないのによく来れたな、と言外に言ってのける男に対して、

慣れている貴文は何とも思わなかったが、側にいた悠馬や蘭は軽く眉を顰めた。



そこで声を上げたのは、先程まで会場の雰囲気に気圧されていたまどかだった。



「…会話に割りいるご無礼お許しください。お言葉ですが、貴文さ…んが大学に通うのは、ひいては高槻家のためかと存じます。」


「何を言っているんだ!実際いま会社に何の貢献もなく大学で悠長に学生生活を送ってるじゃないか。」


「貴文さんは専攻している課で、新エネルギーについて研究されています。それは、高槻家が関わっている事業にもゆくゆく大いなる利益の可能性もあるもの。ですから、貴文さんが学生として勉学、研究に励まれることに何の問題がございましょう?」



真っ直ぐに男を見据えて言い捨てたまどかに、貴文はもちろん蘭や悠馬も驚き、周囲も静まり返る。



パチパチパチ



静かな会場に拍手の音が鳴り響く。


「お見事だったよ、お嬢さん。

君が源まどかさん…だね?」


「兄貴!」

「ふ、副社長…!」


貴文と男の言葉で状況を判断したまどかは頭を下げる。


「お騒がせして申し訳ありません。お初にお目にかかれて光栄でございます、高槻晴臣さま。源まどかと申します。」


「小林さん。現在会社に何の貢献もしていないのは君も同じじゃないかな?この間の損失分、取り戻した君の部下達に感謝するんだね。」


そう晴臣が言うと、男は慌てて逃げるようにその場を去った。



「貴文くん、こんにちは。」


「詩織さん…ご無沙汰してます。」


緩くウェーブがかかった栗色の柔らかなボブが女性が笑うのに合わせてふわりと揺れる。高貴でお淑やかな雰囲気から優しさが滲み出た、可憐な女性だ。

会場の中でも思わず目を引く。



その笑顔から目を逸らしてどこか所在なさげにする貴文を不思議そうに見るまどか。


「まどかさん、貴文のことを良く理解しているようだね。君みたいな子がそばに居てくれると安心だな。貴文はゆくゆくそばに置きたいと思っているし」


晴臣のその言葉に、ざわめきが大きくなる。


次期社長が弟を重要な地位に取り上げる可能性を示唆したのだ。


皆、今のうちから貴文に取り入ろうと構え始める。


「少し出ていたほうかいいぞ」と晴臣に小声で言われて頷いた貴文は、悠馬と蘭にさり気なく脇をガードされながらまどかを連れ、来たばかりの会場を後にしたのだった。


突然姫も早く更新したいなぁ

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