パートナー
遅くなってすみません。
息抜き更新になってしまっている…
「おい、まどか」
「はい、貴文様」
「明後日、これに出席するから。」
洗いものを終えて明日の朝食の下ごしらえをしていたまどかに
貴文が手紙のようなものを放ってよこす。
まどかが中を見ると、それはパーティーの招待状だった。
どうやら高槻グループがまた新事業を手がけることになり、
その報告会のようだ。
「かしこまりました。貴文様、身支度は何時頃からにされますか?」
「ん~女は準備に時間かかるんだろ?ていうかよく考えたらお前ドレスとか持ってないのか」
その言葉にまどかは無表情のまま首を傾げる。
「明日必要になるものは俺が出すから、買い物からだな。
午前中のうちに出発するから準備しといてくれ。」
リビングには招待状を手に表情を変えることはないながらも
困ったようなまどかだけが残された。
翌日。
貴文は「これは契約外なのでは…」と呟くまどかを完全に無視し、
高級ブティックに連れて来た。
今日の貴文は光沢感のあるグレーのスーツに華やかながら品のあるネクタイをしていて、
色素の薄い瞳と髪も相まって、海外のモデルのような姿に拍車を掛けている。
遠くにいるお客さんが貴文を見てぽーっとなっているのを横目で見ながら
まどかはブティックのあまりの高級感に恐縮していた。
「この子を今夜のパーティー用に仕上げてくれ」
「はい、かしこまりました。高槻様。」
しばらくしてドレスに身を包んだまどかが出てきたとき、
店内のどこからか感嘆の声がこぼれた。
貴文のネクタイの色と合わせた紫紺のカクテルドレスは黒く輝く髪と最高の相性を見せている。
控えめにほどこされたメイクも決してドレスに負けることはなく、
濡れた瞳は妖艶さすら漂っている。
今までしたことのない格好をして居心地の悪いまどかだったが、
あまりに無反応の貴文が気になり、おずおずと見上げた。
「…貴文様?」
少しの間まどかを見ていた貴文は思い出したかのように動き出した。
「……っ、いいんじゃないか?」
「ありがとうございます…でも私さすがにこんなドレスを買う余裕はないのですが…」
「は?」
何を言ってんだ、という顔でまどかを見る貴文。
「今日の分の手当てだと思ってもらっとけよ。」
そんなことはできない、と遠慮しようと振った手を自然な動作でとり、
「では、参りましょうか、お嬢様。今宵は私がエスコートさせていただきます。」
キラキラした貴文のまぶしい笑顔にまどかは珍しく顔を引き攣らせ、
こくこくと頷いた。
移動の車の中に乗り込んだ後、
「今日のパーティーに兄貴が来る。新事業の担当だからな。
そこでパートナーとして紹介するから話あわせろ。」
「はい?」
「頼む!!他に頼めるやつもいないんだよ!今回だけでいいから!」
眉をひそめるまどかに拝み倒す貴文。
「……貴文様がそこまで仰るなら今回だけは協力いたします。」
「マジで助かる!!じゃあとりあえず、今日だけでいいから様づけやめてくれ。
パートナーなのにさすがに遠すぎだろ。」
「え……で、では……………た……貴文………………さん」
「ずいぶん時間かかる名前だったんだな俺。
まぁ急に言われても無理だよな。それでいい。まどか…ありがとな。」
ほっとしたように息をつく貴文の表情がいつもより暗いことに、
気が動転していたまどかが気づくことはなかった。
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