突然の別離
書き置いてた分があったので、あげておきます
「貴文様…?どうしてここに」
驚きで涙が引っ込んだまどかが目を見開く。
その質問には答えず蘭から視線を外さない貴文。
「やだなぁタカ。心配でついて来ちゃったの?保護者みたいだね〜」
「…ソイツはうちの使用人だから保護者みたいなもんだ」
「ただの使用人ってだけなら私生活まで指図は出来ないでしょ〜。契約外、だよね?」
首を傾げて微笑む蘭に、図星を指され貴文の頬がカッと赤くなる。
「…っそういう問題じゃない、ソイツが泣いてんのを主人として放って置けないってだけだ」
「へぇ…?」
いつもの軽口とは違う初めて聞く声色に、まどかは驚き隣を見上げる。
「泣かせてんのは誰だよ」
「…っ蘭さん、」
あの泣いてた時のことを話す気かと焦って袖を引くまどかに、優しい笑みが向けられる。
それを見た貴文の傷付いたような表情に蘭を見上げていたまどかは気付かなかった。
「その理屈だと、まどかちゃんが使用人じゃなければ何もしないってことだよね?」
「…あ?」
「俺本気でまどかちゃんを口説きたいからさ、いくらタカでも横槍入れてほしくないんだよね〜。てことで、まどかちゃん、うちの屋敷に来ない?いまちょうど使用人募集してるから」
伊坂家はハリウッド女優もお忍びで通うと言われている大手エステ会社を経営しており、屋敷もかなり大きい。
「え、いえあの、…契約がまだ残っておりますし、」
「奏おじさんには俺から話しておくから、大丈夫!」
「あ、でも」
言葉を切ってチラリと貴文を見るが、視線が交わることはない。
いつものようにキッパリ言えないのは、蘭が好意で言ってくれていることもあるし、貴文が何も言わないからでもある。
自分は使用人としてすらも必要とされていないのか、そう思い気づかぬうちに唇を噛む。
「…涙は、止まったみたいだね。ご両親のこと考えて辛いなら今日はここまでにして引き返そうか〜。やること増えたし!…てことだから、タカ。」
ゆるゆると、俯き加減だった顔を上げる。
その表情からは、何を感じているのか読み取れない。
「俺は、泣かせないから。」
そう言い残して、まどかの肩を強引に引き寄せて歩き出す蘭。
貴文は、その場に暫く立ち尽くしていた。




