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田舎者の成り上がり  作者: 松佐
第一章
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動き出した彼の時間 (改訂)

エリナさんの世界情勢講座


「先のゴブリンのコロニー征伐を皮切りに異常事態(ゴブリンなど繁殖力の強い魔物のコロニーの出現やそれに伴う魔物の侵攻、そして活性迷宮の誕生)が世界へと波及し、たったの半年で軍事力や冒険者の質に劣る小国が次々と陥落、そしてその滅んだ国の驚くべき現状が冒険者ギルドの雇った斥候と生き残りの冒険者によって伝えられたわ。曰く、国であると。陥落した国々は魔物の侵攻を受けたものの、蓋を開けてみれば建築物などへの被害は最小限で、その場で生活していた人間に魔物がそっくりそのまま入れ替わったように生産活動が行われている。そして国を滅ぼした魔物の群れは知能の低いゴブリンやコボルトといった種であっても人語を解するらしいわ。何よりどの国にも最低でも一人、とても人間に容姿の似た抜きんでた強者が存在していて、本能に忠実であるはずの魔物を統率しているというの。どこも生き残りの人間を奴隷として使役し、武器などを生産させることで軍備を拡充し将来的には残る人間の領域への侵攻を企てているとも報告があったわ」


「様々な情報が錯綜する、そんな中で各国の王族や神に仕える者達に先日、神託が下った。創世の時代から神々と争ってきた邪神の眷族、魔族が邪神の復活を目指し活動を開始したと。神託の内容はすぐに一般公開されたわ。この神託を機に基本的に不干渉を保ってきた国家と冒険者ギルドは歩み寄り、戦力増強のため冒険者学校を各国首都に設立し引退した高ランク冒険者や宮廷魔法使いなどを講師に雇用、貴賤に関わらず門を開き、奨学金などの制度も整備もされて、同時に各国共同で繁殖能力の高い種が占領した国を大規模な儀式魔法による集中砲火で滅ぼした。また活性迷宮の不活性化と迷宮までの路を舗装を進め、という風に対魔族に向けて世界は動きだした」


「そして、十年が過ぎて、いくつかの国の滅びを代償に魔族の住まう魔界への門となるダンジョンの発見に漕ぎ着けたものの、状況は膠着しているわ。攻略のためには特定の古代迷宮の最下層にある秘宝が必要らしくて、過去の文献からその在り処を探している段階ね。最近は魔族の活動も鳴りを潜め、束の間の、偽りの平和が訪れている。それでもギルドの受付嬢は忙しいのだけど」


***************************************

村に馬車の停留所があります。簡易的な宿屋と軽食屋、道具屋があります。全長20キロ近い街道には満遍なく石畳が敷き詰められています。馬車に乗って街に向かうと以前は木造だった門が石造りとなり立派になっています。街を囲う防壁は厚みが増しています。


さて、皆さん質問です。俺は何年迷宮にいたでしょう?正解は10年です(門番さん情報)・・それだけあれば変わるな、様変わり感は否めないけど。しかし防壁の増築を迫られる有事でも起きたのか?それに身分証明にギルドカード(仮)を見せたら、初めて見た。実在したんだな、それ、と驚愕された。


街中は全体的にサイズアップした以外は建物の配置も変化なく、そのお陰で迷わず冒険者ギルドに辿りつけた。配置違ったら土地勘も何もないからな。冒険者ギルドは以前の3倍は規模がデカくなっていた。ほんと、この10年の間に何があったんだろうか。


ギルドの内装自体には変化がない。だが以前と違い利用者の中に軍人がいた。軍人、彼らは王都を防衛する者だ。それが冒険者ギルドに、しかもこんな国の端っこのギルドに来ている。恐らく目当ては迷宮なのだろうが、俺の記憶が確かなら、この国の軍隊は大陸全土に誇れる精鋭部隊だ。今更、迷宮に潜る必要性はないはずだ。いや、必要性ができたと考えるべきか?


とりあえず、ギルドカードを新しい型に変えてもらわなければ。古いままは嫌だからな。利用者が多すぎて結局、手続きが終了したのはギルド到着から2時間後。待ち時間にエミリさんやギルドマスターの話を聞いたが、あの事件の直後にギルドマスターは引退を表明して職を辞したらしい。エミリさんは変わらずギルド職員として働き新しくギルドマスターに任命された男性の秘書になって7年前にその男性と入籍。今は産休しているという。


会いたいという気持ちは多少あったがエミリさん達にとって俺はもう過去だ。わざわざ出て行くこともない。情報収集だが、そちらはギルドの資料室の蔵書で事が足りた。さすがに予想の斜め上の展開過ぎるが。


道理で軍人もいるわけだ。冒険者ギルドと軍は相互協力関係にあって、今や軍人も準冒険者扱いだし十年前からの戦力増強政策の巧妙か辺境にも軍人を常駐させられるくらいには人員に余裕が出来たのだろう。


ある程度、情報の整理はできた。現状の確認も終了。とりあえず、いつまでも冒険者(仮)でいるわけにもいくまい。というのも、冒険者学校の各種制度の整備によって入学に関する金銭面でのハードルは低くなった上に冒険者幼年学校なんていう機関まであるらしい現在、冒険者(仮)という存在はもはや化石同然。それは門番さんの反応からも想像に難くない。


つまり、ここ最近は冒険者(仮)は誕生していないということ。それこそ過去の資料を調べれば一発ではないだろうか。まあ、見た目と年齢が比例しないって事例は全く珍しくないんだけどな。Lvが高い者ほど若作りな傾向にあるから。詳しい原理については割愛するけどね。ただ十年の空白は明らかに怪しい。根掘り葉掘り聞かれるのは、ちょっと遠慮したいもんだ。そうなると冒険者ギルドで依頼を受けるのはパスかな。どうせ護衛依頼なんかは受けらんないし。


こうして止まっていた俺の時は緩やかに廻り始めた。


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