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田舎者の成り上がり  作者: 松佐
序章
5/17

ゴブリン狩り (改訂)

エミリさんの魔物及び雑学講座


「今日紹介する魔物はズバリ、ゴブリンよ。彼らは地上に棲息する魔物の中で最大の個体数を誇る繁殖能力に長けた魔物。本当に節操がなくて他種族のメスでも簡単に孕ませてしまうから随分な嫌われ者でもあるわ。反面、他種族でも母体には優しいことで知られているの」


少し給水。


「というのもゴブリンはその個体数に反してメスの個体数が少ないの。だから、母体は尊重されて衣食住も保証される。まあ、大抵は精神が壊れて死ぬまで苗床っていう悲惨な末路しかないから処遇はあんまり重要じゃないわね。ごほんっ。彼らの幼体は成長が早く妊娠から出産までの期間は一週間から二週間で幼体から成体への成長は一週間以内に終了するの。だから幾ら駆除しても直ぐに湧いてくるわ」


一息ついて


「そもそも魔物なんたるかを説明するのが先だったかしらね。魔物っていうのは世界中のあちらこちらに存在する歪みというか負のエネルギーなんかの世間一般で言う悪いものの澱から自然発生したもの。またそれらの子孫などの総称なの。ゾンビの類は死体が澱の影響を受けたものね。で、澱から発生する魔物は基本的に小物が多いの。だから、ゴブリンみたいに雑魚筆頭みたいなのは総じて個体数が多い傾向にあるわ。そういうわけでゴブリンっていう種は輪をかけて個体数が多いし、当然個体数に比例して被害も多いから冒険者ギルドでは年中ゴブリンの討伐依頼を発注してるの。報酬は一体あたり50G(1G≒1円)、新人冒険者が経験を積むのにちょうどいい依頼よ」


以上、エミリさんの魔物及び雑学講座でした。では、また次回。

************************************

冒険者(仮)になって二週間、俺は惰性的な日々を送っていた。惰性的という、どこかマイナスイメージのある言葉をわざわざ使う必要はないのだが、何せこの二週間ずっとゴブリン討伐に精を出していたのだ。朝起きて朝食を食べ、ゴブリンを狩る。気付けばすっかり習慣と化していた。


確かにゴブリン討伐は新人が戦闘経験を積むのに最適の依頼であるし、ギルドマスターにも(暗に)推奨された(気がする)。そしてギルドに行けば、受付嬢の皆さんからゴブリン討伐頑張ってくださいねという有無を言わさぬ声援(あつりょく)を掛けられる。個人的には薬草の採取とかそういう採集系の依頼を受けたいのに到底受けさせてもらえる雰囲気ではない。持っていっても、受理されない気さえする。だから、毎日毎日ゴブリン討伐だ。


戦闘も最初こそ多対一という事で戸惑ったが今では体捌きの練習台。幾ら基本が大事とは言え退屈になってしまった。それでも、冒険者学校の入学金及び諸費用を考えれば、まだまだ真面目に狩らないといけない。


そういうわけで今日も今日とてゴブリンを狩る。エンカウント率はインフレ起こして10歩歩けば8体編成のゴブリンパーティーが見つかる。ここ2、3日毎日、だ。さすがに地上で最大数を誇る種とはいえ異常な事この上ない。帰りに報告しておこう。まあ、わざわざ言わなくても俺の二週間分のゴブリン討伐数を顧みれば異常事態だと容易に理解できると思うけどな。


日暮れまで狩り続けた今日の戦果はゴブリン2000体。証拠品は親指サイズの石。俗称は魔石。澱を起源とする生物またはその子孫は全て体内に魔石を保有し、死とともにこれを体外へ排出するらしい。そういうものだと自然の摂理に組み込まれてるのよ、とはエミリさんの言だ。


ゴブリンの殺傷法は簡単。相手の内部に氣弾を生成し爆発。所要時間は一秒。正確には操氣で相手の氣力に干渉して~~と面倒な過程を経ているのだがここでは割愛する。


追加で戦果を挙げつつ街へ戻りギルドへ向かう。ん?人集りできてるんだが。手近にいた同業者に尋ねる。


「何かあったんですか?」


「おお、子鬼殺し(ゴブリンキラー)か。実はな、ゴブリンのコロニーが発見されたらしくてな。しかも、複数だとよ。この街始まって依頼の危機だってお触れだ」


ゴブリンのコロニーか。それなら、ここ二週間のゴブリン異常発生も説明がつく。しかも、複数となると。


「コロニー征伐と街の防衛、二つの強制依頼がギルドマスターから出された。報酬は一人あたり白金貨一枚だとよ。命を優先し冒険者資格を捨てるかはたまた一旗揚げるかは自由だ。子鬼殺し、どうする?」


「それを聞いて何か変わりますか」


「それもそうだな。お互い生き残ろうや」


強制依頼とは今回のような緊急時にギルドから発注される依頼で不参加者は罰金だったり、最悪の場合は冒険者資格を剥奪される。そうすると、俺のような冒険者(仮)の場合はどうなるんだろうか。あ、はい、そうですか。問答無用ですか。受付嬢方の業務用笑顔(アルカイックスマイル)には逆らえない。


そうそう、余談だがあの同業者とは二度と合うことはなかった。







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