ステータス (改訂)
「ところで、聞きたいことがあるんですが」
「なにかしら?」
俺は食後の運動がてらエミリさんに街を案内してもらっていた。
「俺が殺した鬼熊の母熊は普通の熊だったのに子供がどうしてC+級の魔物なのかと不思議に思いまして」
「あ~、それね。元々鬼熊は雄の個体しかいない魔物なの。だから、母体の方は普通の熊ってケースが多いらしいわ」
「なるほど」
今思えば父親の方によく狙われなかったものだな。襲われていれば、俺は今ここにいなかった可能性が高い。実際、先の戦いはジリ貧でしかなかった。まさに時の運、偶然勝利の女神が俺の方に微笑んだだけに過ぎない。
「それよりも、よく勝てたものね。鬼熊はベテランでも苦戦することのある魔物よ。それを儀式も受けてない貴方が殺しただなんて今でも信じられないわ」
「まあ、ジリ貧でしたけど筋力に決定的な差がなかったのと飛龍のおかげです」
「飛竜の?」
鬼熊は間違いなく強敵だった。それも今まで対峙した中で断トツの。死力を尽くしたから、否、死力を尽くせたから勝てたのだ。それは飛龍という次元の違う存在を識っていなければ、俺はきっと臆していただろう。初めての殺し合いに。いつもの狩り(じゅうりん)との違いに。
「飛龍というより高みにいる存在を識っていたたことで臆さずに、自分の能力を十全に発揮したから、全身全霊を持って挑めたから、勝てたんですよ。」
「なるほどね」
まあ、前提条件として対峙している相手と同等程度の能力が必要だけどね。
「そうだ。オススメの武器屋とかありますか?」
「武器を選ぶなら最適化の儀式を受けてからの方がいいと思うわよ。それに身体能力が上がれば、扱える得物も増えるし職業にあったものが一番だから」
「職業、ですか?」
「そもそも最適化の儀式って、その人の才能を呼び起こす儀式なのよ。剣の才があれば剣士、魔法なら魔法使いっていう風にね」
RPGみたいなものなのか。そういうわけでギルドに舞い戻り最適化の儀式を受けた。結果、以下のようになった。
ノエル 職業,氣術の操者Lv1
筋力C+(1115)+(900)
体力A(1687)+(500)
耐久D(790)+(900)
敏捷C-(938)+(500)
器用D(780)
魔力F-(0)
氣力A+(2064)+(300)
才能,拳闘、体術、強化、闘気、気功術、操氣術、氣弾の射手
PS,身体及び身体構造強化、並列思考及び思考加速、知覚及び反射神経強化、内功 及び外功強化、打撃威力+、近接格闘技術++、闘気
AS,氣弾、威圧、操氣、氣鎧、見氣、
儀式を受けた後、一枚のカードを渡された。持ち主の身体能力などを表記し身体能力の変化を逐次更新する機能があるらしい。何故そんなことが可能なのかは分からないが、カードを作成するために採血された事を鑑みるに血を使うことで持ち主とのリンク(繋がり)を作ったのだろう。魔法に興味はあるが、魔力値0ではどうにもできなさそうだ。
「これってどうなんですかね」
「普通に異常ね」
エミリさん曰く、職業レベル1の状態で、この能力値は破格というかコメント通り異常らしい。特に体力と気力の高さは上級冒険者並みの数値だとか。
「体力値が高いからオーバーワーク気味の農作業を行えていたのか、農作業を行っていたから体力値が高いのか、どちらなんでしょうね」
「普通は農作業をしていてもここまでの体力値にはならないわ」
呆れ顔のエミリさん曰く、才能の数は過去にも例はあるが、ことPSの数に関しては恐らく過去最も多いらしい。及びという形でまとめられてはいるが実質11個。なので、とりあえず、異常らしい。
「内容の偏り様も中々のものだけど・・とんでもない戦力だわ。明日からよろしくね、新人さん。あとね、カードを軽々しく人に見せちゃいけません」
「了解です」
エミリさん、正確には新人冒険者(仮)ですよ。さてと、がんばって稼ぎますか。