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田舎者の成り上がり  作者: 松佐
序章
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さらば田舎

燦々(さんさん)と照り付ける太陽に辟易(へきえき)としつつも一心不乱に鍬を振り下ろす。一秒毎に大粒の汗が流れ出た。一息ついて手の甲で汗を拭い、作業を再開する。麦わら帽子でも被ってれば、少しはマシになるかもしれない。生憎用意してもらえるような立場ではないが。


辺境の農村、そこのとある農家に三男として産まれたのが俺。農民にしては裕福な家庭らしいが、最終的に土地を存続するのは一番上の兄であり、二番目以降はお払い箱。大体は女児しかいない家に婿入りするのが定例だ。それに一つ上の兄は既に婿入り先も決まっている模様。


三男の俺は惰性的に畑を耕している。うちがそれなりに裕福なのは割と広めの所有地に付随する取れ高と確固たる売買ルートがあるからだ。何でも父の親戚に商人がいて、そこで卸してもらってるらしい。どうせ、関係のない事だから詳しい事は知らない。俺はただただ耕してる。広ければ広い分、人手がいるから人件費が馬鹿にならないのだが我が家は俺が働き者だから他と比べても人件費に割く費用は少ない。


常に二十人分の働きをする男、それが俺だ。格好良い響きだが、やってる事は屈み込んで麦を刈り取ったり畑を耕してるだけである。今は収穫も終わって土地を休ませる時期。少なくとも今年はそうだから畑を耕す必要はなく人件費云々もないわけだが、何分暇なのだ。


田舎の農村に大した娯楽があるはずもなく、収穫後はすぐ次の準備を始める家もあれば、うちのように少し間を空けてから準備に取り掛かる家もある。


「今日はこれくらいにするか。はぁ・・」


周囲を見渡せば日陰で休むもの、川で水浴びするもの、草地で寝るもの(全員大人)がいる。


「こうも適当でいいのか?」


毎年毎年、予定がランダムすぎる。二期作するかと思えば今年はやっぱ良いと直前に取り止めたり、その逆も然りで、前世の農業のように気候によって臨機応変な対応をしてるわけじゃない。まさに適当。何だか馬鹿らしくなってくる。


「ま、一番馬鹿らしいのは現実なんだが」


どうやら俺は口減らしのために奴隷商人へ売られるらしい。うちは麦と少々の野菜を売り物に生活してて農民にしては裕福な方だが、最近は売り物の値段が全体的に下降気味で後々、その弊害が出る。そこで三男をお払い箱にするなら、いっその事換金してしまおうという考えに至ったようだ。婿入り先が未定なのも痛かった。オマケに親戚商人の


「農村の生まれには思えないほど見目もいいし、その筋の人には高値で売れるはずだ。」


この一言である。確かに前世においても世界恐慌勃発時は農村で娘を売りに出すなんて事もあった。口減らしは苦肉の策で必要悪だと頭ではわかる。しかし考えてもらいたい。畑の手伝いを募れば人件費が掛かる。事実、この農村の住人は収入があっても人件費を払うせいで財政的にはカツカツだ。まあ幸い生活に必要な分はちゃんと貯蓄してるから餓死するとこはない。


その中で我が家は人件費を9割がた気にせずいられた。なぜか、それは俺の存在があったからだ。自意識過剰と取られても仕方のない発言ではあるが紛れのない事実。盗み聞きした所、俺の価値は紹介料を差し引くと収入十年分相当らしい。しかし、だ。俺がいなくなれば多かれ少なかれ人を雇う事になり、人件費が掛かる。うちは広い分、他の家より尚更掛かるだろう。


今までの収入額と値段の下降、この村での人件費の平均を考慮すると最初はともかく後々、俺を売らない方が絶対特になる。まあ、農村の人間に先を見据えて収入の計算をする者も出来る者はいないだろう。そもそも口減らしって、労働量に対して碌に飯も食わせてくれない連中が何をって話なんだが。


と言うのも我が家(俺を除く)は食事の量からして調子に乗ってる。他の家は普通お茶碗一杯分の穀物+漬物数枚。俺はお茶碗に四分の三の穀物、漬物一枚。俺以外はお茶碗二杯+漬物数枚+時期によるが山菜の炒め物・・ああ何たる格差。


そんなわけで育ち盛りの俺は量的にもエネルギー的にも家の食事だけじゃ足りてない。だから空き時間は基本的に木の実採集・狩猟で食糧確保に勤しんでる。使える道具はボロくなった鍬、鎌などの農具。慣れない近接戦闘で最初は生傷が絶えなかったのは良い思い出だ。この世界の動物は一般に魔物と呼ばれていて、とにかく気性が荒いのが多い。


この辺にいるのは鹿、猪、熊系の魔物で何度か殺されかけたのも思い出だ。毛皮は鞣して時折来る商人(親戚商人ではない)に売り、できた金は貯めてある。当初は特に目的があって貯金してたわけじゃないが今は過去の自分を賞賛したい。ちょうど逃走資金として申し分ないくらいは貯まった。


「もう今日にするかな。思い立ったが吉日なんて言葉もあるくらいだ」


それに森の野獣との戦いで磨かれた直感が告げている。ここにいるのは危険だと。証拠に先日から森で魔物を一切見かけていない。これが意味するのは災害が起こるか何かヤバイ存在がいるかの二択だ、多分。前世は成人する前に事故死(自転車に撥ねられて川に落ち死亡)したが今生でそれはマジで勘弁。


そういうわけで新品の鉈2本腰に下げ、逃走資金を懐に森に入る。とりあえず、日暮れ前に20キロ先の街まで行こうか。


この日、村一番の働き者と呼ばれていた少年が突如として姿を眩ませる。数日後、村は飛竜(ワイバーン)の襲撃を受け壊滅。生存者はいなかった。


相変わらず文章力のなさが悲しい。

ちなみに主人公の名前はノエルです。

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