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第8話 黒翼の堕天使VS純白の悪魔

前回で、水音を守る為に和也は漆黒の男、悠那と戦うが圧倒的なレベルの差で和也は血だらけに成る、絶体絶命の瞬間、和也は突然不気味な笑い声を上げた、今までの和也ではない様子に水音も背筋に寒気が走る。

第8話 黒翼の堕天使VS純白の悪魔

戦いが全てだ


その手に血塗られた者を持ち、


魂と魂がぶつかる


弾け飛ぶ魂はその一瞬、とても美しく輝く


生き残るのは一人、それを真の辺りにするのも一人、


そんな中を生きてきたんだ


殺すのに躊躇は無い、


殺す者が正義、殺された者が悪、


この世界で生きてきた僕にとって、


何でもない仕事の一つ、


戦いは僕にとってこの上ない至高















残酷な笑みを浮かべたまま、純白の何かはすざまじい速さで一直線に走り出した。

(早い!!)

悠那は慌てて2丁の拳銃を和也に向けると、引き金っを引いた。

何発もの銃弾が和也を一直線に狙う。

「ヒャハハハハハ!!!」

避け様ともせずに一直線に向かってくる和也の体中に銃弾が霞め、当たる。


だが、勢いは止まらない。

その瞬間、悠那はカチッという音に銃弾が切れた事をすぐに認識した。

(しまっ!!)

そう思った瞬間、和也は悠那の目の前まで来ていた。

悠那は後ろに下がるとサバイバルナイフを抜き取った。

「忘れたのかい!?僕にはまだコレがあるんだよ!」

ナイフを逆手に持つとそのまま和也の頭に振り下ろした。


ザクッ

鈍い肉を刺す音、


「!?」

和也は避けるのではなく、右腕を前方に出し、振り下ろされるナイフを右腕に刺させた。

悠那の顔から笑みが消えた。

(なんだ、こいつの戦い方は?)

悠那の頭の中の何処かで一瞬そんな事を考えた。


「ヒャハァ!」

右腕にナイフが刺さったまま左手の手のひらを丸めた、腰を回しての強烈な一発。



鈍い音と共に悠那の顔面に拳が入る。

「グァ!」

鈍い呻き声が口から漏れる。

「うう・・・」

顔を抑えながらヨロヨロと後ろに下がった。

顔から手を離すと真紅の血が鼻から垂れ落ちた。

それを見た瞬間、和也はさらに唇の端を広げ、不気味な声を出す。

「ヒヒ!!血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だァ・・・」

薄気味悪い和也ではない声は広い工場内に響き渡る。


悠那が歯をギリッと食いしばった。

「貴様・・・」

悠那は拳銃をほおり出すと、再び服の中から拳銃を取り出す。


再び拳銃を和也に向けて引き金を引いた、


何発もの銃弾が和也を襲った。

和也の足、腕、胸に銃弾が当たると、血が噴出した。

それでも和也の顔から不気味な笑みは消えない。

ボタボタと血が流れ落ちている。


悠那は和也に向かって一直線に走り出すとナイフを構えた。

ナイフを和也の体に振り切る。

腹の肉の切れる音と共に血が噴出す。

和也はまだ笑っている。


(なんだ・・・?)

先ほどと同じ様に頭に霞む言葉。

ナイフをもう一度振る。

同じ様に血が飛び、肉が切れる。

まだ笑っている。


殺そうとしても殺せない、今までとは違う。

逃げるのでは無い、避けるわけでも無い。


(何だ・・・?コイツは!?)

和也の不気味な笑みにゾッと寒気が襲った。

「ウァァアァァァァアアアァァァァ!!!」

叫び声と共にナイフを振り下ろす。

「ヒャハハハハハハハハ!!!!」

笑い声と共に振り下ろされるナイフの切先を素手で受け止める。


グチャッ

手の平が刃で潰れる音がした。

音と共に手から血の雫が伝い肘で落ちる。

「な・・・な・・・」

ナイフはビクともしない、それ所から逆に押されている。

和也はもう一つの手で再び顔面に拳を入れた。

「グ!」

悠那は派手に後ろに吹っ飛んだ。

さっきとは正反対の戦いになっていた。

(なんだよ・・・これ・・・どうやったら勝てるんだよ・・・)

和也はどんなに傷を負わせても、動きが弱まるわけではなかった。

自らを犠牲にし、超近距離からの攻撃、戦いというより喧嘩に近かった。

(不死身か!?)

血の量を見れば生きている方がおかしい量であった、今も流れる赤い血は夥しく体にこびり付いている。

圧倒的な差に悠那は愕然としていた。


「ヒヒ!ヒヒ!」

ニタニタと和也は笑いながら今も鳴り止まない氷鈴刀に向かってゆっくりと歩いた。

「和也・・・」

動く事が出来ない水音は和也を心配そうにジッと見守っていた。

リリリリリ・・・

和也が氷鈴刀を拾い上げると自然に鈴の音が止んだ。

「ククククク…」

また含み笑いの様な声が出ている。

「ヒャーーハハハハハハハハハハハハ!!!」

空中で両手を仰ぎ笑った。

耳に残るような気持ち悪い高笑いが工場に響き渡る。

慌てて水音は耳を両手で覆った。

それほど気分の悪くなる声であった。

先ほどとは違い、和也の声は影すら残していなかった。

本当に和也では無い物と成っていた。


右腕で握っていた氷鈴刀に炎が纏わりつき始めた。

ゆっくりと炎が刀と同化していく。

水音はその光景を見たことがあった。

(あれは・・・炎斬・・・)

だが一つだけ水音の知っている炎とは違っていた。

(黒い・・・炎?)

その炎の刀は前に見ていた炎とは違い、リンとした真っ赤な炎では無く、残酷な禍々しい漆黒の炎であった。

ニタニタと笑いながら炎を引きずる形で再び悠那の所に近づいていった。

ひきずった後はコンクリートが溶け、小さな溝の道が出来ていた。

悠那は睨み付けながらヨロヨロと立ち上がった。

苦々しそうに口の中で切った血を吐き捨てた。

「僕にもプライドがある、もう暗殺何かどうでもいい・・・今ここで君を殺す!!」

ナイフを捨て服を脱いだ。半そでの服の上からホルダーを服に巻いて被せていた。

ホルダーに入っている古ぼけた拳銃を抜き取った。

「『黒翼の堕天使』(こくようのだてんし)・・・その名の意味を思い知らせてやる!!」


ブチブチブチブチ!!


服が破ける音と共に背中が避け始めていた。

苦しそうに体を捩る。

グチグチャブチ!!

気持ち悪い肉の避ける音が木霊する。



(・・・・あ)

悠那の背に黒い翼が広がっている。

両翼の翼を足せば2Mはある大きな翼であった。

拳銃を和也に向ける、


翼から風を起こす様に大きく広げた。

そして翼の黒い羽毛が空中を浮く。

水音の体にも風が当たった。

「すごい・・・綺麗」

水音にはこのような状況でも、驚きよりも美観が頭をよぎった。



拳銃を持つ手に力が入る。

「誰にも防がれた事の無い、僕の最高の力だ!!!」


キィン!


音と共に銃口に光が集まる、みるみるうちに真っ白な光が大きくなっていく。

『GOD!! deal a crushing !!! (神よ!!怒りの鉄槌を!!!)』

悠那の体が一瞬浮いたかと思うと、引き金を引くと共に、悠那は後ろの壁へと吹っ飛んでいった。

同時に爆音が鳴り、先程までの光が和也に向かって一直線に伸びていった。


「ッキャァ!!」

すざまじい音に水音が耳を覆う。


ゴォォォォォォォォォ!!!

レーザービームの様な光は空を裂き、

すざまじい音をたてながら、みるみる和也に近づいていく。


和也は動じることなく立ち止まった。

変わりに唇の端を大きく歪め、引きずっていた刀をスッと上に持ち上げ構えた。

黒い炎がユラユラと燃え上がり、熱で刀の周りが小さく揺れる。


後ろ足でコンクリートを思いっきり蹴り、光の光線に向かって走り出した。

その怒りの漆黒の瞳は戦いのへのプライドの為に黒翼と共に全てを呑み込む光を放った。

その残酷な純白の瞳は殺戮を求め、燃え上がる不気味な炎と共に光に飛び込んだ。




ギィン!!


弾けるような音の次に一瞬の静けさが訪れた。


ドォォォォォォォ…


衝撃波と光が一気に広がっていく。

「キャァ!」

水音が吹き飛ばされない様に下にしがみ付く。


バキバキバキバキ!!


衝撃の耐えられない古びた工場は音を立てて破壊されていく。

木片や鉄の塊が飛ぶ。

光は工場から漏れ、大きな光の柱へと空中に駆け上がった。


場所は変わり。



明るい部屋に一人の女性が入ってきた。

「んー♪いいお湯加減♪」

美奈は上機嫌にタオルで頭をワシャワシャとふき取った。

ショートカットの髪がバラバラと方向性無く乱れる。

顔も少し赤く火照って気持ちよさそうに笑っていた。

何となくガラスに目をやると不思議な物が見えた。


遠くで細い光の線が天空にあがっていた。

「・・・何あれ?」




薄暗くなった空の下を2人の男が並んで歩いていた。

「あ〜つかれた〜・・・」

夜道の寮に向かう坂道でグッと腕を伸ばす今井と、

「結構長い依頼になってもーたなー」

隣でポテトチップスの袋をあさりまくっては口に運ぶ、さなぎがいた。

「お前が途中でお菓子買いに行かなきゃもっと早く終わったんだよ」

今井がじとーっと横目でさなぎを見た。

「そーゆー今井の情報源ミスはどうやねん」

さなぎも同じ様に横目で見る。

「アレは・・・まぁ・・猿も木から落ちる?みたいな?(意.得意な事でも失敗する事もあるという事)」

「よお落ちるお猿さんやねんな・・・」

ため息代わりに今井の目の前でポテトチップスの空をプラプラと振った。

「・・・・・ウルセ」

言葉に詰まった今井の最後の抵抗であった。


その時であった。


ドォォォォォォォォン!!

地響きという感じな音に二人は同時に振り向く。


「なんだ・・・?」

今井が慎重に辺りを見回した。

「今井!アレアレ!!」

さなぎが指差す方向に一本の光の線が見えた。

坂の頂上から見える異質な光景に二人は唖然としていた。





薄暗い部屋の窓際に、

小さなベッドとその上に有る布団を被る膨らみがあった。

「・・・・ん」

寝巻き姿の小柄な女の子が布団から這い出て窓の外を見上げた。

金色の綺麗な髪が少し揺れる。

天空に上る光の柱が遠くから細い糸の様に見えた。

それを見た女の子はブルッと肩を震わせて、慌てて布団の中に潜った。

「あの光・・・怖い・・・」

枕をギュッと抱え込むと小さな声を漏らした。

「先輩・・・・」




ッチッチッチッチッチッチッチッチ

時計の音が妙に耳に入る。

イライラと貧乏揺するをしながら椅子から動かない男がいた。

「あーーーー!!暇だぁぁぁ!!!」

誰も居ない寮に黒髪の背の高い男が立ち上がり叫び声を上げた。

「チッキショー・・・水音も和也も帰ってくんの遅ェよ・・・」

馬鹿っぽい男、怜次は居間でつまらなそうに伸びをする。

「・・・シャーネ・・・探しに行くか」

まだ退屈そうに目を細めて玄関に向かった。


ガチャッ


玄関のドアを開けると薄暗い夜空が空中に広がっていた。

「ほぉー・・・もう夜だったのかぁ・・」

暗い夜空を見上げて独り言を漏らす。


ドォン・・・


うっすらと耳に障る普通では聞こえない音に反射的にその音の方を見た。


「なんだありゃ・・・」

怜次の向けた目には光の糸が見えた。

その瞬間、怜次の背中に妙な感覚が走った。

「なんだ今の・・・」

不可思議な感覚に首を傾げ、もう一度光の方向を見た。

既に光は消えていた。

「・・・・何か走らなきゃいけねぇ気がする」

小言を漏らすと一気に光の糸の方向に走り出した。




暗い屋根の上に立つ一人の男が髪を風に靡かせて立っていた。

顔立ちの良い男は遠くに見える光の柱をジッと見ると、足元に目を移した。

「近い・・・ですね、あの場所の測定がわかるかい・・・?」

暗闇の中、足元で黒い物体がのそっと動いた。

真っ黒い猫はピンッと背筋を伸ばして口を開いた。

「測定位置、X261216、Y12465、推定ニヨリ、ココカラ2キロ先ト断定、致シマス」


「2キロか・・・間に合うでしょうか・・・」

顔に掛かる髪を掻き揚げると美青年の顔が覗いた。

「・・・急ぎますよ」


ビュゥ・・・


風の音がすると何も無かった様にその屋根の上には何も居なかった。




その逆の方向を、すざまじい速さで屋根を飛び交い、

光の柱に向かって走るマントを羽織る人の姿があった。

「near…(近い…)」

そう言うとマントの人間は更にスピード上げた。




パラパラと変わり果てた工場から木屑が零れ落ちた。


ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・

荒い息をしながら悠那は慌てて辺りを見渡す。

辺りは跡形も無く消え去り、天井にはポッカリと穴が開いた夜空が見えた。

離れた所で水音が倒れていたが、和也の姿はどこにも無かった。

「ククククク!!やった!!僕の勝ちだぁ!!」

翼がバサッと揺れ動いた。

「アハハハハハハハ!!」

悠那が高笑いをあげた瞬間であった。


グシュァァ!!


一瞬の出来事に悠那は呆然と立ち尽くしていた。

胸に斜めのまっすぐな切り傷から一気に血飛沫を飛ばした。

「ゲホ・・・?」

膝から落ちると両手で胸を押さえながらゆっくりと後ろを振り返った。

その後ろには燃え盛る炎の刀を片手に不気味に微笑み和也が居た。

(何故僕がやられたんだ・・??いつ?どう・・・して?僕の最高の技を突っ切ってきたのか!?そんな事出来るのか!?

あの技は人の跡すら残らない程の技だぞ!?)

「馬鹿・・・な」

ドサッと音を立てて悠那は倒れた。

胸から止まらない血が悠那の体を覆う程に広がっていく。

「う・・・」

水音がゆっくりと起き上がる。

和也の瞳がゆっくりと水音に向く。

ニタァァっと気持ち悪い笑みは新たな獲物を見つけた野獣の様な不気味さを漂わせていた。

「ぐ・・・」

うめき声を上げる悠那を素通りして、どす黒い炎の刀を片手に持ちながら水音に近づいていく。

口の端が更にゆがんでいく。

「かず・・・や」

掠れた声で水音は和也を見た。

体中に毒が回っているせいで足元がおぼつかない。

ヨロヨロと壁をつたいながら立ち上がる。

和也の目は既に人の目はしていなかった。

澄んだ白い目はギラギラとてらつく鋭い眼光へと変わっていた。

体中から垂れ出る血は和也をさらに不気味に見せていた。

手に持つ日本刀は今も漆黒の炎を包み、元の和也が10秒しか維持出来なかった炎斬は今も続いている。

水音にゾッとする物が背筋に走る。

(こわ・・・い、だけ・・・ど、和也を・・・助けな・・・きゃ)

水音の頭はボーっとして何も考えれる状況ではなかった。

だが和也を助けなければならない、それだけが何故か頭に浮かぶ。

和也がどんどん水音に近づいていく。

水音も壁を伝いながら和也に近づいていく。

みるみるうちに差が縮まっていった。

和也は水音の目の前まで来ていた。

更に唇の端を歪めた和也は、刀をゆっくりと振り上げる。

水音は小さく肩を揺らしていた。

(こわ・・・い、でも・・・でも)

力無い水音の目にッキと力が入る。

「こんなの和也じゃない!!」

燃え盛る刀が水音の頭上に振り下ろされた。

水音は目を瞑らずに振り下ろされる刀を一直線に見据えた。

「!!」

水音の数センチ前で炎の刀はカタカタと震えながら止まっていた。

熱気が水音の顔に掛かる。

水音の額に冷や汗と熱風による汗が一緒に流れた。

和也が右手に持った刀を振り下ろした瞬間、和也の左手が自分の右手首を掴んでいた。


「・・・!!」

和也の目が澄んだ白い目に戻っていた。

「和也・・・!?」

水音が驚愕の声を上げた。


「・・・・け」

和也の唇が一瞬動く。


「・・・え?」

水音には上手く聞こえなかった。

「どけェェ!!!」

和也が叫んだ、と同時に震えていた刀が止まった。

「キャ!」

水音が慌てて横に飛ぶ。

その瞬間、刀が振り下ろされた。


ドゴォォ!!!


水音がいた所の地面のコンクリートがはじけ飛ぶ。


和也が横目で避けた水音を睨んだ。

その目は先ほどの酷く歪んだ白に戻っていた。

再び和也の唇の端がニタァァッと広がる。

「そん・・な」

体に力が入らない。

水音は最早動く事は出来なかった。


和也は再び水音に向けて刀を振り上げる。

和也の顔に残酷な笑みが広がっていく。

先ほどと同じ様に刀を水音に振り下ろした。

水音は覚悟を決めた様に目を瞑った。




その時、弾かれた様な妙な擬音が水音の耳に入った。

「・・・・?」

水音は痛みを感じない自分を不思議に思いながら、ゆっくりと目を空けた。

目の前にいたはずの和也は飛ばされた様に、

離れた所に倒れていた。




なめらかな風が水音の頬に当たる。

「ギリギリでした・・・」

透き通る様な綺麗な声の男性が水音の前に立っていた。

その男性の足元に黒い猫が背筋を綺麗に伸ばして立っている。


「お・・お兄・・・ちゃん?」

水音の顔はまだ毒で苦しそうだが、驚きと喜びが浮かんだ。

お兄ちゃんと呼ばれた男性、風間は振り向くと、

水音にやさしく笑いかけた。

「しかしどういう事だい?護衛を頼んだ相手に命を狙われている、その上に暗殺者らしい男は血を流して倒れている」


「それは・・・」

水音が言おうとした瞬間、倒れていた和也が立ち上がった。


「クヒ!クヒヒ!クヒヒヒヒヒ!!!」

和也は片手で顔を覆うと、不気味な声を上げた。

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

風間の背中にもゾッとする物が走った。

「これは・・・普通じゃありませんね」


「ククククク!!何と良い日だぁ!!こんなにも特別な血が揃うなんてェェ!!」

狂気に狂った和也が始めて言葉を出した。


「!?」

水音が目を見開いた。

(しゃべ・・・た?)


「特別・・・とは?」

風間が冷静に聞き返す。

「漆黒の男!!」

そう言うと倒れている悠那を指差した。

「そして『生まれてはいけない存在』!!申し分無い・・・ヒヒヒ!!」

最後に水音の方を見ていた。

風間が和也の言葉を聴いた瞬間、凍り付く様な視線を見せた。

「お前たちの血は何色だろうなぁぁ!!クヒヒヒヒヒ!!」

とても楽しそうに和也は笑った。

「私と殺る気ですか・・・?」

風間の目が鋭く光る。

「ヒヒ!!残念ながら今の俺様では貴様に勝つ事は出来ない!!

『今の状態』ではなァァァァ!!!」

和也はまだニタニタと笑っている。

「力が開放される時、お前の血を広げてやる!!さぞ綺麗だろうなァァ!!」


「力の解放・・・?」

風間の目はまだ戦闘態勢を崩さなかった。


「ヒャァハハハハハハハハハハハハハ!!!」


(駄目だよ・・・)

水音は苦しそうに手を伸ばす。

(何が駄目なのかはわかんないけど・・・駄目だよ・・・!)

伸ばした手に何かが当たった。

(これ・・・は・・・和也の刀・・・?)

いつからそこにあったのか、元からそこにあったのかは判らない。


その瞬間氷鈴刀の鈴がまた鳴り始めた。




済んだ鈴の音はまたも、工場内に響き渡り、水音の体にも震撼しんかんした。


その時、水音の耳に幼い子供の声が聞こえた。

『もう、十分だよ・・・残り・・・2つ』

(え・・・?)


音が鳴り始めた時、

先ほどまで笑っていた和也の顔が苦しそうに歪んだ。

「ッグゥ!」


「何故だ!?何故戻ろうとする!?」

大声で誰に言うでもなく叫んだ。

「折角・・・折角出たのにィ!!」

狂気の和也の言葉は続く。

「嫌だ!!嫌だ!!もっと俺は血を見るんだ!!」

さらに顔を歪める

うずくまりながら鳴り響く刀に手を伸ばす。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だァ!!!」

不振そうに風間は狂気の和也を見据える。

「何だ・・・?」


「え・・・?」

水音にもわけがわからなかった。

唯、刀が吸い寄せられるかのように、水音の手のひらに握られた。



キィン!という音と共に刀が光りだすと、またたくまに光が広がっていき、水音を包み、風間を包み、工場内を真っ白い光へと包み込んだ。

「ヤメロォォォォォォォォ!!!!」

和也は水音に向かって走りながら叫んだ。




工場内を光に包んだかと思うとすぐに光は巻き戻しの様に刀にへと戻っていった。



瞑っていた目を開けると和也が目の前で倒れていた。

「和也!!」

持っていた刀を放すと、重たい体を腕でむりやり引きずり、和也に近寄った。

血は今も垂れ流れ、体中の傷は悪化した様に紫色になっている部分まであった。

「・・・・!ひどい・・・」

誰が見ても、重体とわかる様な怪我は見ているだけで寒気を思わせた。



風間は呆然と立ち尽くしていた。

(なんだ今のは・・・?目の前が一瞬にして真っ白い光の世界になった、これは水音の『もう一つの力』のせい・・?)

ッハと我に帰ると水音が和也の近くにいた。

「水音!離れなさい!まだその男が立ち上がるかもしれないのですよ!!」

風間が水音に慌てて駆け寄ると腕を手に取った。

「だって、お兄ちゃん!!」

水音は力無く兄に助けの目を向けた。

短いため息を付くと風間もすぐに和也の元に駆けつけた。

その後から黒猫も続いた。

風間はジッと和也の容態を見ているのを隣で心配そうに水音が見つめていた。


誰が見ても、その容態が判りきっていた。

顔もうっすらと青くなりつつあり、血は流れ続け、体中の傷口は治る兆しすら見せない程に大きな傷を開いていた。

「・・・」


「G・W00210、この少年の容態をどう見ますか・・?」

風間は、和也の状態を見せる為に黒猫を和也の隣に近寄せた。


「出血量70%、外部損傷50%内部損傷30%心拍数モ安定シテオリマセン。心臓ノ鼓動運動ガ殆ド止マッテイマス。ソレラヲ全テ総合スルト、コノ方ノ生存可能性ハ・・・・2%デス」

黒猫は真っ直ぐに倒れている和也を見据えながら早口で和也の状態を説明した。


「に・・・2%・・・・そんな」

水音が目を見開いた。


(2%・・・まだ完全に死んでいないのか)

風間は氷鈴刀を拾うと、和也の首筋に刀の刃を当てた。


「!!お・・お兄ちゃん・・・何を・・・!!」

水音が慌てて風間を止めに入る。


「この青年は危険です、今ここで完全に息の根を止めます」

風間は先ほどの和也を思い出していた。


「な・・・!?」

刀を払いのけると水音は和也の前で両手を広げた。


「・・・どきなさい」

風間が水音を細い目で睨んだ。


「いくらお兄ちゃんでも・・和也を殺したら・・・絶対に許さないから!」

水音はたじろぎながらも睨み返す。


「・・・フゥ」

風間はあきれた様に小さくため息を付いた。

刀を捨てると風間は言った。

「いいでしょう、どうせ、ほっといても死ぬ怪我です・・・」

「・・・」

詰まった様に水音は俯く。

「・・・せない」

水音が小さな声を出した。

「・・・なに?」

風間には聞き取れなかった。

「死なせない」

そう言うと、

倒れている和也に向き直るとぐったりとしている片手をギュッと両手で握り締めた。

「・・・!!!まさか・・・やめなさい」

風間の言葉は水音の耳には届かない。

「死なせない死なせない死なせない…」

ブツブツと呟く言葉と共に水音の手が光りだした。

その光は握っている和也の手から体へと連動していった。


最後には和也の体は温かい光に包まれていた。

風間がまぶしさに目を覆う。

(この光は・・・)

みるみる内に和也の体中の傷の血が止まった。


「っつ!」

水音の体中の毒が急速に体を蝕んでいく。

(倒れちゃ・・・駄目だ・・・和也を・・・助けなきゃ)


ガクンっと水音の顔が落ちた。

「たす・・・けな・・・きゃ」

そう呟くと和也の上に重なる様に倒れ、同時に光が消える。

「水音!」

慌てて風間は水音に駆け寄った。

ソっと水音の額に手を当てる。

触れた手から酷く暑い熱が伝わった。

(凄い熱だ・・・もうすぐで手遅れになる・・・)


「風間、少年ノ生存率ガ2%カラ30%ニ跳ネ上ガリマシタ!」

黒猫が驚いた様に和也を見ていた。

「何ガ起コッタノカ理解出来マセン、現在ノ状況下デコノヨウナ事ガ起キルノハ有リ得マセン!!」

「・・・水音の力ですよ」

風間はそれだけ言うと水音を抱き上げた。


「ソの力、是非気になル」

鈍った日本語が背後から聞こえた。


「!」

風間がバッと振り向いた。


「Hello」

頭からすっぽりとマントを被った男が立っていた。


(私が気づかないとは…)

「何者ですか?」


「I beg your pardon(これは失礼致した) 」

男は大げさに手を回して執事の様にお辞儀をした。


「I,m name (White joker)(私の名前は白のジョーカー)」


(白のジョーカー?)


「コノ男の仲間ダ」

そう言うと倒れている悠那を指差した。


風間が身構える。


「No、戦ウ意思は無イ、今回ハこちらノ負ケ、連レ帰ラせてもらウ」

そう言うとコツコツと足音を立てて悠那に近づいた。


「酷くヤられタ、大丈夫カ?」

しゃがみ込んで悠那の状態を確かめる。


「ぐぅ・・・」

悠那が苦しそうなうめき声を上げる。


「生きてるナ」

簡単に男は言うと風間の方を向いた、その後に和也の方に視線が行った。


「その男ハ大丈夫なノカ?」

男の視線はまだ和也の方を向いていた。


(・・・?何故和也の心配を・・・?)

風間は疑問に思いながらも言葉を返した。

「ああ、今の所は何とか生きてる」


「そうカ・・・」

風間には男が妙にうれしそうに見えた。


男は更に続けた。

「我々は犯罪組織の群衆であル」


「!?」

風間は一瞬、男が何を言ったのか判らなかった。

「組織の名は『トランプ』お互イのコードネームをトランプの記号デ呼び合うことカら付けラれた名ダ」


「何故そんな事を私に教える?その男の仲間ではないのか?」

風間は身構えながらも不思議そうに聞いた。

相手に自分の所在を悟られる事は、最も危険な行為、

その組織の名を知るだけでも、実に調べやすくなる。

自分の所在はあっさりと口にしたこの男の行動は最早裏切りと言っても過言ではなかった。


「まタ・・・いずレ」

そう言うと男は煙の様に消えた、倒れていた悠那もいつのまにか消えていた。


「・・・」

あまりにものあっけなさに一瞬、風間は呆然とした。

黒猫がまたもピンと背筋を伸ばした。

「先程ノ二名ハコノ地域200メートルカラ照合デキマセンデシタ何ラカノ能力ニヨリ、逃走、追跡出来マセン」


黒猫の機会音が工場内に響き渡ると同時に、ボロボロになった工場から木屑が落ちる。

(ここも危険か・・・)


「・・・私達もこの場を離れます」

風間の周りに風が吹くと、竜巻の様に風が渦巻くと風の塊が3人と一匹を囲み、穴の開いた天井からすざまじい速さで飛んでいった。


第8話 黒翼の堕天使VS純白の悪魔 ―完―

遅くなってスイマセンでした。

本当はもっと長かったんですが、その話は次回に入れて、ひとまず、漆黒の男との戦いをおわらします。

次の話しでもう少し続きますが、お付き合い願います。

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