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第4話 初依頼と黒猫と、

水音の寮に和也、怜次が来て一週間が経った。

そこで始めての依頼が突然来た、その依頼とは…?

第4話 初依頼と黒猫


天気の良い昼頃、学校の庭にある木陰の下でさなぎ、今井、怜次の3人が食卓を広げていた。

「和也は?」

さなぎが弁当に箸を付けながら二人に聞いた。

「ああ、何でも放送委員の仕事があるんだと、」

さなぎのすぐ隣りで今井がのんびりパンを食べながら言った。

「何だ?アイツもう委員会に入ったのか?」

イチゴ牛乳のパックを持ちながらかたわらに長い白い布で覆われた棒を置いている男、怜次が少し驚いた表情を作った。

「和也が来てもう1週間もたつんやしねー」

さなぎがコロコロと笑った。

「それもそうかぁ…」

ジューと音を立ててイチゴ牛乳を吸い込む音がした。

「そろそろじゃないか?」

今井がそう言った瞬間、学校内のスピーカーに音が響いた。

ガッ、ガーピー

妙なノイズを響かせながら、スピーカーのスイッチが入った事がわかった。

『あーあーこれでいいのか?』

聞き覚えのある無機質な声が3人にも届いた。

『はい、大丈夫です』

女の子の幼い、可愛らしい声が、和也の声の後ろから聞こえた。

「あ?中学生か?」

怜次がボゥッとしながら、幼い声を耳に入れた。

「まーこの学校は高等部と中等部が一緒の建物にあるしな、委員も合同でやってんだろ」

フーンと、怜次が今井の言葉をどうでもよさそうに聞きながらイチゴ牛乳をさらに吸った。

『あーあー、うん』

またしても、和也の無機質な声が響いた。



『お前の子は預かった』


ブボァ!!

怜次は口からイチゴ牛乳を噴出した。

さなぎは一瞬ポカーンと口を空け、

今井も大きく目を見開いた。

「ゲッホゲッホ!あの馬鹿、何やってんだぁ!?」

怜次はむせながらスピーカーを見た。


『わ!わ!先輩違います!それは警察同好会の資料です!』

可愛らしい小さな声がスピーカーから響いた。

『む?じゃぁこれか?』

『えー、あなたは神を信じますかー?』

間の抜けた声がまた響く、

『先輩!それはキリスト新同好教会の資料です!』

「何やってんだ・・・?あの馬鹿は」

何か妙なコントを聞きながら、口から垂れていたイチゴ牛乳を拭った。

「楽しそうやねー」

さなぎが面白そうに目を輝かせる。

「・・・」

今井はアホらしそうに、ふたたびパンに噛り付いた。

『ぬぉ?』

『ドターーンガシャァァァン!!』

何かが倒れたような音と割れる様な音がスピーカーから聞こえる。

『きゃぁぁぁ!!!先輩!ガラスが!頭に刺さってます!!』

女の子の悲鳴な様な声が学校中にこだました。

『む・・・心配するな』

『頭から血がボタボタ出てるのに心配しない人がいますかぁ!!』

(大変そうだなー・・・)

いつもなら女の子の立場にいる怜次は後輩の女の子に同情した。

『それよりスイッチ入れっぱなしじゃないのか?』

『わわ!!ええっと、お…お昼の放送は終わります』

ップッツン・・・

スピーカーの電源が切れた音が少しだけ響いた。


―――放課後、校門前


「あっはっはっはっはっはっはっは!!!!」

美奈は可笑しそうにケラケラと笑っていた。

「おい、笑いすぎだろ」

和也がムッと顔をしかめる。

「だ!だって!普通カーペットにひっかかって扱ける人いないよ〜」

美奈はまだ腹を抱えている。

「てか頭の血止めろよ」

怜次がいぶかしそうに頭にガラスの刺さったままボタボタ血を流しながらの和也を見た。

「後輩の子・・・可哀想に・・・」

怜次が悲惨そうに涙を拭う。

「そういえば詩織の奴何かえらく疲れた顔してたな」

和也は歩きながら手を顎に当てながら、少しだけ顔を傾けた。

「詩織?」

怜次が和也の口から女の子の名前が出たのを不信に思った。

「ああ、同じ放送委員の後輩だ、今日一緒に放送をした子だ」

「ふーん…ってやっぱ女の子かよ!!可愛い!?可愛い!?」

怜次が目を輝かせながら和也を見た。


「可愛い」

和也は無表情で特に感情もこもっていない言葉を吐いた。


「・・・」

「・・・」

(即答するか普通・・・)

怜次と美奈は同時に思った。

「そ・・・そういえば水音は?」

怜次が話を代える。

「さぁ?何か電話してたけど」

美奈が簡単に答える。

「あ!ほら来た」

美奈はそう言って校門を指さした。

そこに携帯電話(生徒手帳兼)を握り締めながら慌てて走ってくる水音がいた。

「ねぇねぇ聞いて!聞いて!」

水音が嬉しそうに3人に近づいてきた。

「うわ!和也まだ血出てるの!?早く止めなよ!!」

水音は怜次と同じ様に即効で突っ込む。

「まぁ、それは置いといて、どうした?」

「いや、置いとくのかよ!!」

怜次が和也に連続で突っ込みを入れた。

「それで?」

美奈が催促した。

「あ、うん!請負人の仕事だよ!!」

「へー、でも何で?」

「「何で?」」

美奈の言葉に怜次と和也が疑問をぶつけた。

「仕事だから当然来るもんじゃないのか?」

和也が不思議そうに眉を少し上げた。

「あー水音の所はね、元々二人だけだった寮だから殆ど依頼は来ないんだ」

「じゃあ学校とかの金は?」

怜次も少し眉を上げる。

「風間さんがフリーで請負人やってるからね」

「風間?」

和也が疑問を寄せる。

「あー水音ちゃんの兄貴だ、請負人界では結構有名な人なんだよ」

怜次が白い布で包んだ槍を肩から下ろしながら言った。

「ふーん」

和也が目を細めた。

「じゃ!依頼、頑張ンなよ!!」

美奈はそう言うと、ブンブンと手を振りながら校門に向かって走っていった。

「うん!また明日ー!」

水音もブンブンと手を振った。

「さて話は戻るけど」

「依頼だって、さっき電話来たんだ、

しかも特別にある人が手伝ってくれるって!」

水音がそう言った瞬間、水音の携帯から着メロが流れた。

探し物はなんですかー♪鞄の中も♪机の中も♪

ッピ、

水音が携帯のスイッチを入れる。

「はいもしもし?」



(井上揚水・・・)

(古!!)

二人が水音の着メロに違和感を感じているのを無視して水音は1言、2言、話していた。

「はい、」

水音は会話の状態で和也に携帯を渡した。

「?何だ、」

和也は腕組みを外して水音の手のひらに置いてある携帯を見る

「さっき言った特別に手伝ってくれる人!和也と話したいって」

「・・・・」

和也が不信そうに携帯をもう一度見てから手に取った。

「何だ・・・」

和也が聞くほうを口の近くに当て、声を出す方を耳に当てた。

「和也・・・それ携帯、逆」

水音は和也が携帯を持っている手を指差した。

「む?そうなのか?」

和也が無表情で不思議そうに携帯を見て首を傾げた。

『アッハッハッハッハッハ!』

携帯から楽しそうな男の声が響いた。

「お前・・・」

和也の声に嫌そうな声が混ざった。

『相変わらず機械にはうといな!和也!』

また楽しそうな声が携帯から聞こえた。

己宮内みくないか?」

和也が嫌そ〜に声を荒げた。

「あれ?和也、己宮内さんと知り合いなの?」

水音が驚いた様に言った。

「己宮内・・・ってあの請負人本部、機械・科学特別支部部長の!?」

怜次も目を見開いて驚いた。

「何だ・・・?それ」

和也が怜次の言葉に疑問を投げ掛けた。

「お前、己宮内さんと知り合いなのにそんな事も知らないのか!?

現在の請負人の武器や道具は全部この人が作ってるんだぞ!!本来ならもっと凄い人なのに請負人界に留まっている変わり者とも言われてる人だぞ!」

『変わり者って・・・そんな風に呼ばれてたのか』

携帯から何か悲しそうな声が漏れた。

「何だお前そんな凄い奴だったのか?」

『オイ、色々手伝ってやってたのにそりゃないだろコラ』

「でも和也が己宮内さんと知り合いだったのはびっくりだね」

「そーだぞ!お前超有名人だぞ!」

怜次も奮闘気味に声を荒げる。

「で、その有名人が何でいきなり手伝ってくれるんだ・・・?」

和也の声に射すような冷たい声が混じった。

「そういえば・・・水音ちゃん依頼ランクは?」

「Fだよ、確かにFランクでそんな有名人が手伝ってくれるのは変かも…」


『あー・・・』

さっきまでの楽しそうな声が突然困った様に小さくなった。

『相変わらず勘がいいな・・・だがこれは機密事項だ、黙って従ってもらう、いいな?』

己宮内の声に少しだけドスの聞いたような声が入った。

「・・・ああ、分かった」

また和也の声が無機質に戻る。

『分かったならいい、じゃあ今後の行動はメールで送る』

一瞬間が空いた。

『和也・・・』

「何だ」

『沙羅さんの事だけどさ』

その瞬間、和也の目が大きく見開かれ気持ち悪いまでの殺気が漂った。

「!?」

水音が和也の豹変に驚いた。

(これは・・・あの時の射す様な・・・殺気・・・)

水音は夕日のクラスでの告白の時の事を思い出していた。


「ちょ、水音ちゃん!?」

怜次が気分が悪そうに顔を顰めた水音の肩に手を置いた。

「己宮内・・・」

いつもの無機質な声とは違うどすぐろくかすれた、低い声が水音の耳に入った。

(やだ・・・!また!何・・・これ!)

水音がひざを地面につけた。

普通の人よりも感覚が鋭い水音はもろに和也の殺気を浴びていた。

それは丸裸で矢を全て受け止める事と同じ様な意味を持つ。


「水音ちゃん!?水音ちゃん!!」

怜次が水音を何度も呼ぶ。

それを無視し和也はまた重苦しい口を開ける。

「今・・・その話をする必要はない」

『・・・!嫌、そうだな・・・悪い、じゃな』

携帯が切れた音だけが和也の耳に残った。

「何やってんだ?」

携帯を切って振り向いた所に気分が悪そうにしている水音と心配そうにしている怜次が居た。

いつもの無愛想で眠そうな顔

「え?・・・うん何でもないよ」

水音が慌てて笑った。

「水音ちゃん・・・今のは・・・」

怜次が心配そうに水音を見た。

「大丈夫・・・うん、大丈夫」

水音はゆっくりと言って、もう1度言い聞かせるように言った。

「で?どうだって?」

水音が話しを戻した。

「ああ・・・今後のことはメールで教えるってさ」

和也は携帯を水音に返しながら言った。

「ん・・・わかった」

水音はジッと和也を見た。

「なんだ?」

「・・・なんでもない」

和也はさっきまでの恐ろしい殺気からいつものめんどくさそうな顔付きに戻っていた。

「それじゃあ行くか」

和也はサッサと先を歩き出した。

「和也・・・お前は・・・一体・・・」

怜次がジッと和也の背中を見つめた。

―30分後、寮内にて、

「それじゃぁ己宮内から来たメールをまとめるか、」

「『赤い首輪の黒猫を探せ』」

「・・・・は?」

怜次が眉をしかめる。

「うん、これだけ・・・だね」

水音も困ったように笑う。

「嫌々嫌々嫌々和也さん?どゆことよ?」

ブンブン顔の前で手を振りながら突然礼儀正しい言葉で聞いた。

「だから『黒猫探せ』って事だろ」

腕組みをしながら和也は言った。

「フッザケンナァァァァァ!!!!請負人のFランクでもこんなのねーよ!!請負人は何でも屋じゃねーよ!」

怜次は体を小刻みに揺らしながら叫んだ。


「まぁ何でも屋みたいなもんだろ」

「そうかもしんねーけどさー!」

怜次はぶつくさと頬を膨らませた。

「まぁいい、そんじゃ行くか初依頼だ」

和也は立てかけていた刀を手に取った。

「あれ?武器いらねーだろ?猫探しだぜ?」

「嫌、持って行ったほうが良い、何かわからんがー・・・嫌な予感がする」

「フーン・・・じゃぁ俺も持ってくか、」

そう言うと、怜次は同じように立てかけていた槍を手にした。

「それじゃ行こっか」

水音が先に玄関に向かった。


賑やかな商店街、歩いている人達の殆どが能力者であり学校の生徒であるのが制服を着ている事で分かる。


「探すっつっても学校内の町何だな」

和也がジッと地図を見ながら言った。

「まぁ〜な、学校から外に出る依頼も結構あるけどFランク内は大体、学校内だ」

和也の右を歩いている、制服姿の重そうな槍を背中に背負った怜次が淡々と答える。

「外に出る場合や、依頼で能力を使う場合はちゃんと許可を取るんだよ?」

和也の左を歩いている、同じく制服姿の水音が言った。

「フーン・・・」

和也はどうでもよさそうにまた地図を見る。

「つかお前ずっと地図見てるけど何かあんのか?」

怜次が和也の持っている地図を覗き込む。

「ああ、猫がいそうな所に目星を付けている、今判ったのは三つ

この真ん中の大きな池、そして次はこの町、唯一のスーパー、最後はこの商店街だな」

和也は地図に赤ペンで丸を付けた所を次々と指した。

「まースーパーと商店街は食いもんの倉庫だしな、解るんだけどよ、池ってのは何でだ?」

怜次が覗き込みながら地図の池の部分を指さした。

「動物ってのは人間より敏感でな、空気の状態等で水の位置がわかる事があるそうだ、食物もいいが水も欲しいだろうしな、ここは絶好の場所だ」

「ほぉ〜よく知ってるなぁ」

怜次が関心したように腕を組む。

和也はピタッと2つの分かれ道のところで止まった。

「どうした?」

「?」

怜次と水音が不思議そうに和也えを見た。

「ここで一旦別れる、片方の道はスーパー、俺はスーパーの方に行く、お前ら二人は広い商店街に行ってくれ、」

そう言うとサッサと先を歩き始めた。

「あ!おい」

怜次が慌てて止めようとしたが、和也は後ろ向きで軽く手を振っただけだった。

「和也・・・」

水音はジッと和也の後ろ姿を見つめた。

商店街のベンチで一休みしている二人。

「ったくよーアイツもわがままだよなー」

怜次が怒った様に頬を膨らませる。

「・・・うん」

水音は一瞬だけ見えた和也の悲しそうな顔が気がかりだった。

午前2時♪踏み切りーで♪

怜次の携帯から着メロが流れた。

「はい、もしもし」

怜次が携帯をとった。

(BUMP・・・なんてマニアックな・・・)

水音が心の中で突っ込む。

『や、怜次だったっけ?』

お気楽な声が携帯から漏れた。

「己宮内さん!?てか何で俺の携帯番号しってんすか」

怜次が驚いた様に目を丸くする。

『まーそれは置いといて、どうよ?依頼の方は』

「まだ探してる途中っすよ」

『そうか・・・和也は?』

少しだけ声色が変わる。

「?、今は俺と水音ちゃんだけっすよ」

怜次は不思議に思いながらも答えた。

『そうか、じゃぁ2人に言いたいことあるからスピーカーにしてくれ』

怜次が言われるがままにスピーカーボタンを押した。

『や、水音』

己宮内の声が水音に届く。

「こんにちは、己宮内さん」

水音が軽く会釈する。

『君達を和也の友達と見て、聞きたいことがある』

少し深刻そうに声色がまた変わる。

『君達は和也の事をどう思う?』

「え?」

「は?」

二人が同時に首をかしげた。

(もっと大事な事、聞くと思ったのに)

「親友だ!」

怜次はグッと携帯に向かって親指を立てて即答した。

(単刀直入だね・・・)

水音が苦笑した。

『水音、君にとっては何だい?』

「へ?私・・・ですか?」

水音は何も考えていなかった。

(私にとって・・・和也は・・・)

(何だろう?)




一瞬だけ水音の中で妙な間が出来た






「友達・・・です」

その言葉は何故か少し重く感じた。

『そうか、だったら二人にお願いがある

あの馬鹿を支えてやってくれないか?』

「?」

「?」

二人がまた同時に首を傾げた。

『あいつは・・・不安定なんだよ』

「不安定?」

水音が不思議そうに言った。

『ああ・・・あいつは不安定なんだ・・・君達は突然和也が変わったのを見たことはないかい?』

「・・・・」

水音は夕焼けの教室の中の出来事を思い出していた。

「・・・・」

怜次もまた、先ほどの和也を思い出していた。

『あるんだね・・・・』

二人の沈黙を無視して己宮内は話を進めた。

『あいつは不安定なんだよ・・・』

己宮内はまた同じ事を言った。

『泣いたり笑ったり怒ったり、・・・あいつにはその感情全てが不安定なんだ・・・、いつも冷静に見せるのは、弱点を見せない為だ、それとも、もっと別に理由があんのかね』

己宮内の言葉は感傷に浸っていた、優しく、悲しく、複雑な感情が見え隠れしていた。

『だから、君達で支えてやってくれるかい・・・?』

「当然っすよ!!」

怜次はニッと笑った、

「な!水音ちゃん!!」

怜次がそう言って水音を見た。

「え?あ・・・うん」

水音が一瞬戸惑った様に頷いた。

『頼んだぜ』

嬉しそうな声が電話から響いた。

それだけ言うと、電話が切れた。

少し不信に思ってから怜次が携帯をポケットに戻した。

「それじゃぁ猫探しの続きと行きますか!」

怜次がッスとベンチから立ち上がった。

「・・・」

水音はまだ座っていた。

「どうした?」

「和也は・・・何なんだろうね・・・」

水音は俯きながら重苦しい声を出した。

「・・・俺はアイツが何だろうと友達だと思ってる」

ッスと水音が顔を上げた。

「あいつは俺の親友!それ以上でも以下でもない、」

怜次は一息空けるとニッ笑った。

「だろ?」

水音もベンチから立ち上がった。

「そうだね、行こう!」

(怜次君の言うとおりだ、和也は私の友達だ)

「お、和也!おーい!」

和也が商店街の入り口から歩いて来ていた。

怜次がブンブンと手を振った。

和也も気付いたのか軽く手を上げた。

「こっちは駄目だ、そっちはどうだった?」

和也は腕組みしながら2人に言った。

「まあ今の所、目撃はせんな」

「うん、黒猫は見てな…」

水音が1部の部分を直視しながら固まった。

「「?」」

二人が不思議に思いながらも水音が直視していた部分を同時に振り返った。

赤い首輪をした黒猫が路地の所でこっちを見ていた。

「いたーーーーー!!」

怜次が叫ぶと同時に3人が猫に向かって一斉に走り出した

黒猫も走り出した。

怜次は重い槍を持ちながらも、ずばぬけた運動能力でぎりぎり三人の最後尾に付いていた。

それでもかなり速いスピードで走った。

一番前を和也が、そのすぐ後ろに一生懸命和也に付いて行こうとする水音がいる。

「ックッソー!!あの猫早ェーな!!」

怜次が走りながら言った。

猫が音と共に塀に飛んだ。

「ック…」

和也も慌てて塀に飛び乗った。

「わ!わ!」

水音も慌てて飛び乗る。

「フベェ!?」

怜次がタイミングを逃してモロに顔面から壁に当たる。

「あんのぉ!ク!ソ!ネ!コォ!!」

鼻血を出しながらすぐに塀に飛び乗った。

(確かに早いな・・・)

和也がそう思った瞬間、猫が立ち止まった。

「ぬぉ!」

和也も慌てて止まった。

「っとっとっと!」

塀の上で何とかバランスを取った瞬間、水音が後ろから飛び込んできた。

「キャァ!急に止まられちゃ…」

二人は仲良く塀から落ちた。

ドォン!

「痛い〜」

水音が尻を摩りながら涙目で言った。

「水音・・・重い・・・」

水音は和也の上に乗っていた。

「ひゃ!ごめん!」

水音が慌てて飛びのく。

「何だお前『以外に重いんだな』」

和也の言葉に水音が敏感に動いた。

「ねぇ!それ、どういう事!?私太ってないよ!?むしろやせたよ!?やせたんだもん!!」

水音が和也の胸倉を掴んでグワングワンと揺らした。

「おい!何してんだよ!早く追いかけんぞ!!」

追いついた怜次が塀の上から叫んだ。

「!、怜次後ろだ!!」

和也が叫んだ時には一瞬、遅かった。

「え?」

怜次が振り向いた先にはとてもいい笑みを広げている黒猫が座っていた。(怜次にはそう見えた)

黒猫が自分の肉球で怜次のふくらはぎを軽く押した。

「うわぁ!」

怜次がバランスを崩し、水音と和也が倒れている所に落ちて言った。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

怜次の叫び声が響いた。

「やばいな」

和也ものんきな声を出した。

「ふぇ?」

水音は今気付いたようだ。


ドォン!!

音に驚いた小鳥が何羽か鳴きながら飛んで行った。


「イッテェェ…」

水音に乗っかっている怜次が苦しそうな声を上げた。

「重い〜」

更に和也の上に乗っている水音も苦しそうな声を上げた。

「お・・・重・・・早・・・ど・・・け」

1番下になっている和也が死にそうな声を出した。



「あんの猫〜」

怜次はワナワナと震えていた。

「お尻まだ痛い・・・」

水音も悲しそうな声を出した。

「確かに頭の良い猫だな」

和也は体に付いた砂を落としながら、立ち上がる。

「次こそは!!」

怜次は走り出そうとした。

「待て」

和也が怜次の首根っこを引っ張った。

「グェ」

怜次の首が綺麗に絞まり、嗚咽が漏れた。

「何度やっても同じだろうな・・・こちらも唯追いかけるだけじゃ駄目だ」

「ちょっと・・・和也、怜次君聞いてないよ・・・?」

青い顔をして倒れている怜次を水音は心配そうに見ていた。

「手筈通り、怜次ぜっっっっったいに!!猫を見逃すなよ」

和也が腕組みをしながら怜次に言った。

「おうよ!!安心しな!!」

怜次がビシッと和也に親指を立てて見せた。

(こいつの場合、途中で見逃したら迷いそうだしな・・・)

「それじゃ一旦ここで別れるぞ!」

「うん!」

「おう!」

水音と怜次が同時に頷いた。








黒猫はせまい路地裏で走る足を止めた。

クルッと首を少し回し振り向いた、さっきの追いかけてきた3人組はいない。

疲れたように腰を下ろした、

その時、もの凄い音と共に後ろからうっすらと影が浮かんだ。

音が大きくなるにつれて影が濃くなっていく。

影は長い棒を持った先ほどのアホっぽい顔をした青年だった。

何か青年が叫んでいる。

「待て待て待て待て待て待て待て待てェ!!」

もの凄い勢いで怜次は走っていた。

そこまで連続に言わなくても妙なスタントなぞ出ないが怜次はとりあえず叫んだ。

黒猫は俊敏に気付くと立ち上がり、走り出した。

「待てって!!」

怜次と黒猫の追いかけっこが始まった。


黒猫との距離は約2mと少し、差は縮まらない。


黒猫が左に曲がろうとすればすぐに怜次が左に回り行かせない、

右に行こうとしても同じ事を繰り返した。

路地裏からゆっくりと森林に近い背景になって来ていた。

約10分は経ったか、怜次にうっすらと汗が滲み、息も絶え絶えである。

猫が振り向いた。

怜次には猫がいやらしく笑った様に見えた。

「あんのぉ・・・ッゼェ、クソ・・・ハァ・・・ネコォ・・・」

苦しそうに独り言を漏らし、死ぬ気でスピードを上げた。

路地裏の出口が見え太陽の光で光っている様に見えた、黒猫がそこに向かって飛び込んだ。

「!?」

黒猫が飛び出した先に地面は無く、あったのは水、水、水、あたり1面の水だった、空中を足がバタついただけであった。

ドッボーン!!

黒猫は池の中に落ちた。

一つの水柱ができて、水の粉が回りに舞う

「ギィァァァァ!!!」

黒猫に釣られて出口でスピードを上げたバカも一緒に池に落ちた。

もう一回り大きな水柱が同じ様に出来た。

「何やってんだ?お前…」

和也が池に浸かっている怜次を見下ろしていた。

「いや・・・・まぁ・・・」

照れたように怜次は水に浸かったまま頭を掻いた。


黒猫はバッシャバッシャと水の中で暴れていた。

「水音、助けてやれ」

「うん」

水音はそう言うと手のひらを池に付けた。

その瞬間、水が噴出し、生き物の様に猫を救い上げた。

猫はゆっくりとコンクリートに降ろされる。

「水音ちゃ〜ん俺も優しく掬い上げて〜ていうか救って・・・寒い」

ブルブルと震えながら、池を囲っているポールにしがみついた。

「あ〜そいつは別にいいぞ」

和也が冷たく言った。

「ンだ!どういう事だコラー!」

怜次は怒りながらポールにしがみつき池から上がった。

「アハハ」

水音は二人の会話を面白そうに聞いていた。

「大体!公園まで誘導すんのはお前がすればよかったじゃねーか!お前の作戦なんだからよ!」

「これは猫を池にはめる為の作戦だ、炎使いが水に浸かるなんざ洒落にならん」

「池に落ちるかもしれないって知ってたのかよ!!」


「あ!逃げちゃ駄目だよ」

水音は2人の会話を無視して、逃げようとした猫を抱き抱えた。

その時黒猫の赤い首輪が目に入った。

「G・W 00210?、何これ?」

それを見た瞬間の事であった。

「!ッキャ!」

黒猫が鋭い爪を水音の腕に向けた。

3本の爪痕が腕からとめどなく血を流した。

「水音」

「水音ちゃん!」

水音の声に気付いた二人が慌てて駆け寄った。


「っ痛・・」

水音は痛そうに右腕をおさえた。

怜次と和也が覗き込む様に水音の腕を見た。

「大丈夫か?」

和也が少し心配そうに顔を曇らせる。

「うん、大丈夫、それよりあの猫ちゃんを・・・」

水音の言葉に、怜次と和也が同時に顔を上げた。

黒猫は真っ直ぐに3人を睨みながら毛を逆立てッフー!!よ黒猫特有の警戒態勢を見せていた。

・・・クナイ

「?、怜次、何か言ったか?」

和也の耳に不可思議な声が聞こえた。

「・・・いや?」

怜次が何を言っている?という顔で和也を見た。

死ニタクナイ!!!

今度は怜次にもハッキリ聞こえた。

聞こえた瞬間、黒猫の口が顎が外れた様に大きく開いた。

「な・・・何だこりゃぁ!?」

怜次が驚いた声を上げた。

「これは・・・」

和也の背中に戦慄が流れた、怜次の雷光が来る瞬間を思い出す様な戦慄であった。

「まずい!!怜次、飛べ!」

和也が慌ててうずくまっている水音を抱き抱えて横に飛んだ。

黒猫の口から円形の鉄柱が飛び出した、鉄柱は尻から火を噴出し、こちらに向かった。

「ミ…ミサイルゥ!?」

ゴォォォ!!という音と共に真っ直ぐに飛んだ。

「ぅわぁ!?」

怜次も慌てて飛びのいた。

和也達が居た所を通り過ぎ、さっきまで浸かっていた池に突っ込んだ。

爆音が響く

響く音を連鎖の様に先ほどよりも大きな大きな水柱が出来る。

池で爆発した水は、呆然とする和也達に降りかかった。



第4話 初依頼と黒猫と、―完―


第4話・・・短い、ですがここで一旦止まります、次がまたこの話の続きになりますので

どうか読んでいる方は見捨てないで下さい、嫌マジで・・・

ちなみに、後に修正して話を付け加える可能性有り

それでは次の題名が思いついたら編集してあとがきにかきますんで、それで、また会いましょう

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