第3話 和也と水音
水音と裏庭で別れた後の話、水音の用事はもう一つあった、今回はあの後の水音のもう一つの用事の話、
第3話 和也と水音
親父は悪魔
御袋は鬼
最初は何処にでもいる親だった
ある日
あの力を手に入れてから
兄貴と姉貴は俺を守ってくれた
兄貴に聞いた
『何でそんなにやさしい?』
兄貴は困った様に笑って
何も答えなかった
姉貴に聞いた
『何でそんなに強いんだ?』
姉貴は無表情で槍を構えながら言った
『強くなればわかる』
俺にはさっぱり解らなかった
だから
俺は
この答えを知る為に
強さを求む
「ん〜でも誰だろ?」
水音は高学等の1年1組に通じる廊下を歩きながら、きよ先生の言葉を思い返していた。
『もう一つの用事はね、水音ちゃんにある人から伝えてって言われたの』
『ある人って誰ですか…?』
『それは行ったらわかるわよ』
「わかんないなぁ…」
水音はグルグルと頭の中を回転させて呼びそうな人を考えていた。
「美奈かなぁ?」
ゆっくりと教室のドアに手を掛けて、少しだけ力を入れた。
ガラッ
夕日が射した赤色に染まる教室の中に居たのは、美奈ではなく、男性用の制服を着た青年だった。
(え?)
水音は少し困惑した面持ちで、言葉を探していた。
「さ・・・碕草さん」
青年は動揺した様に水音に話掛けた。
「えと…滝口…君?」
水音は不思議そうに、クラスメートでもあまり話したことの無い青年に言った。
「あ・・・あの・・・お・・おおお覚えてますか?」
滝口と呼ばれた青年は緊張した様に震えながら言った。
「え?覚えてるって?」
水音は震えている滝口を不思議そうに見ながら言った。
「だ…だから…あの…た…助けてくれた時の…」
俯きながら滝口はモジモジと震えながらしゃべった。
水音は小さく頭を傾けて、?を頭上に浮かべた。
滝口は残念そうに顔を歪め、続けて言った、
「ほら、あの時の…」
水音は思い出したようにポンッと手を叩いた。
「あ〜あの時の!あの後、傷は大丈夫だった?」
「う!うん!それは大丈夫!」
滝口が嬉しそうに言った後続けて言った。
「そ…それで今日は話したいことが…」
「話たいこと?」
水音はもう1度顔を少し傾けた。
「そ・・・それは・・・」
顔を真っ赤に染めて意を決したように、水音を見た。
「す!」
(巣?)
水音はまた頭を少し傾けた。
「す!」
(酢?)
「す!!」
(素?)
水音はオロオロしている滝口に優しそうに言った
「ねぇ、深呼吸して!ほら、何が言いたいかわかんないけど、そんなに慌てなくていいよ」
「う!うん!」
滝口は顔を真っ赤にした状態で、胸を上下に揺らした。
深呼吸をした後、もう1度、意を決した様に、叫んだ。
「ぼ!ぼくは!」
「き!君のことが!」
「好きだぁ!!!」
滝口が叫ぶ一瞬に教室のドアが開いた。
ガラッ
「水音ー探したぞー?」
そこには和也がめんどくさそうに突っ立っていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
3人の沈黙が夕日を照らす教室中に広がった。
今から15分前、寮内の台所にて
┃
┃
┃
┃
┃
「だーーー!!だから!それは砂糖!塩はこっち!!」
怜次がおたまを振り回しながら、和也に向かって叫んでいた。
「む?そうなのか?」
和也は不思議そうに手に持っている砂糖ビンを見た。
「もういい!!お前野菜切っとけ!!」
怜次はあおすじを浮かべながら叫んだ。
「ふむ、より火を通りやすくする為に小さく分割するのだな?これでも日本刀を使うものとして失敗は許されぬな、うむ任せておけ」
和也はグッと親指を立てて見せる。
「御託はいいからさっさとやれ!」
怜次は和也の説明口調にいらいらとお玉を振り回す。
(ったく、何で料理が一つも出来ねェンだよ!まぁ、日本刀使いだし、包丁で切る位出来るだろ、あれ?醤油どこだ?)
怜次は小さくため息を付くと、和也に背中を向けた。
ッザッザッザッザッザ
(お?結構出来てるんじゃないか?)
そう思うと、怜次はゆっくりと和也の方を振り向いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
怜次が現状を見た瞬間、飛びのきながら叫んだ。
「む?どうした?」
和也が少し驚いたように、体を揺らし、作業を止めた。
「何やってんだよ!っていうか!野菜が真っ赤になってんじゃ…っていうかお前、自分の手を見ろぉぉぉぉ!!」
怜次は雄叫びを上げながら和也の手を凝視した。
「む?」
和也は不思議そうに、自分の手を見た。
そこには、包丁の切った後が数十箇所も見て取れた。
濃い赤が野菜やら、服やら、に不気味にこびり付いていた。
「ああ、少し失敗したが、野菜は上手く切れたぞ?」
あっけらかんと怜次に言うと、また作業に戻ろうとした。
「少しじゃねぇよ!っていうか、そんな鮮血な野菜、食いたくねぇし!しかも、切れてねぇ!
さっきからの音は手を切ってたのか!ああ〜!もう止めろ!」
怜次は慌てて和也を止めてから、あきれたように続けて言った。
「お前、もう、皿出しとけ!」
「ふむ・・・変な奴だな・・・さっきから作業を代えてばかりではないか・・・」
和也は小さくため息を付くと、腕を組んで言った。
「お・ま・え・の・で・き・る・作業がないんじゃぁぁぁ!!!!」
怜次はさらにあおすじを浮かべ叫んだ。
「仕方ない」
和也はやれやれといった風に大げさに手を振りながら、怜次に背を向けた。
手を振るたびに血がそこらじゅうに飛んだ。
(何が仕方ないんだよ!!)
怜次は心の中で突っ込んだ。
「これを持っていけばいいのか?」
和也は台所に置いてある、数枚重なった皿を持とうとした。
「ゆっくり持ってけよ!」
怜次は後ろから、ふらふらと皿を持っている和也に言った。
「む?」
和也が皿を持ちながら後ろを振り向いた瞬間、自分の足にもつれた。
「わ!わ!」
怜次が助けようとしたが、遅かった。
和也は無様にこけ、皿は宙を舞った。
ガシャーン!!!
皿の割れた音が寮内に響いた。
「・・・・」
「・・・・」
割れた破片を見ながら、二人が沈黙を続けた。
沈黙を先に破ったのは怜次だった
「こぉんのぉ!!!クソ白髪ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「もういい!お前は、水音ちゃんに醤油が何処にあるのか聞いて来い!!」
・
・
・
・
・
・
そして、水音を呼びにきた和也が、現在に至る。
夕暮れの照る教室に3人の影が無言で立っていた。
(な、何で!?い、今のって…こ、こここ告白!?
それで何で和也がここに!?)
水音は自分の髪の様に顔を薄赤く染め、驚いていた。
先に沈黙を破ったのは和也だった。
「あ?あ〜・・・悪い・・・邪魔したな」
そう言うと和也は引き返そうとドアに手を掛けた。
「ま!待って!!」
水音は慌てて、和也の腕を取り、教室の隅まで引張っていった。
「どうしてここにいるのかな」
水音は小声で和也に問い掛けた。
「うむ、醤油の場所を聞きに来たが、邪魔だったようだな」
和也も水音に揃えて声を落とした。
「邪魔とかじゃなくてぇ〜!」
水音は顔をさらに赤く染めて、言葉を捜していた。
「もう!外で待ってて!!」
少し声が上がり気味で、和也に言った。
「?変な奴だな」
和也は、いつものペースで、ドアに歩き出した。
ドアに行く途中、俯いていた滝口と目が合った。
気まずそうに、すぐに滝口は、和也から目を離した。
和也が出て行く音と共に、滝口は水音をチラっと見た。
二人共まだ顔が赤い。
「そ・・・それで・・・返事は・・・・」
おずおずと滝口は言葉を出した。
「えと、ご、ごめんなさい!」
水音はちょこんと頭を下げて言った。
「な・・・」
言葉にならない様に呆然と、滝口は目を丸くした。
「何で!好きな人でもいるの!?」
滝口はさっきとは裏腹に、必死の形相で水音を見た。
「い、いないけど」
滝口の変わりように、水音は驚いた。
「じゃぁ何で!僕は頭もいいし!運動だって出来る!顔も悪くないし、お金だっていっぱいある!!」
滝口は大声で叫びながら、水音に1歩近づいた。
「僕に悪いところは無いじゃないか!!」
水音は動揺しながら後ずさった。
ドンッ!!
滝口が水音を押し倒した。
水音の華奢な体が、地面に叩き付けられた音が、教室中に響いた。
「キャァ!」
小さな声と共に、衝撃で、ツインテールにしていた両端の髪止めが取れ、
赤い、長い髪が床に散りばった。
水音は小さく震えていた
「答えろよ!!!」
滝口は馬乗りになり、怒鳴った。
ガラッとドアの開く音が再びした。
「どうした?」
音を聞いた和也が、ワンテンポ遅れて入ってきた。
声は冷静だが、少し驚いた様に見える。
「和也ぁ!」
水音が和也に救いの目を向けた。
「!」
血走った目で滝口は和也を見た。
和也は、二人を見た後。現状を把握し、水音の姿を見た。
水音は髪を散らばせ、泣きそうな顔になっていた。
「!!!!」
和也の背中に戦慄が走った。
「な・・・なんだよ・・・」
滝口は警戒する様に、和也を見た。
「・・・・れろ」
和也はうっすらと、唇を動かし、小さな声を出したが、
水音と滝口には聞こえなかった。
「何だって?」
滝口は、まだ馬乗りの状態で和也に言った。
「離れろ!!!」
和也の声は暗く、恐ろしいまでに、ドスが聞いていた。
和也の純白のいつも半開きの目は釣り上がり、恐ろしい気配を漂わせている。
誰にでもわかった、和也は怒っていた。
滝口と和也の目が合った
その時、滝口の背中に薄寒い感覚が走った。
「ひぃ!」
滝口はすぐに、水音の上から飛びのいた。
(何?これ?)
皮膚に刺さる様な、どす黒い殺気を水音も感じた。
滝口は動けなかった、蛇に睨まれた蛙の様に足を震わせていた。
(何だ!?こいつは!?)
滝口の人間の残り少ない本能が語りかけていた。
『こいつは危ない、殺される』
滝口の頭の中で何度も何度も声が響く。
『殺される、殺される、殺される、殺される、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ』
和也が睨みながら1歩滝口に近づく、同時に滝口が1歩後ろに退く。
和也がまた近づく、また1歩退く。
「ぅ、ぅわぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!」
滝口が間髪入れずに、ドアに向かって走り出した。
「ぅぅわぁ!?」
足がもつれたのか、バランスを崩し、見事に頭から落下した。
ガン!!という嫌な音が教室中に響く。
運悪く机の角に頭をぶつけて滝口は意識を失った。
「大丈夫か?」
和也は気絶した滝口を無視し、水音に手を貸した。
「え?あ・・・ありがと」
水音は和也の手を取って起き上がった。
散らばった、赤い髪が少し水音の顔に掛かる。
和也は目を合わせない様にそっぽを向いている。
水音は不思議に思いながらも、和也の顔を覗こうとする。
和也が慌てた様にまたそっぽを向く。
和也の一瞬見えた顔が耳まで真っ赤になっていた。
水音は困惑した様に、問い掛けた。
「どうしたの?」
「なんでもな・・・いいから髪を止めろ・・・」
まだそっぽを向きながら和也は言った。
「・・・・うん?」
不思議に思いながらも、散らばった髪を両方で手でくくった。
それと同時に、さっきの真っ赤な顔はどこへやら、
いつものめんどくさそうなアホ面が水音を直視していた。
「・・・・」
水音が変な顔で和也の顔を見た。
「・・・どうした?」
和也が少し頭を傾けた。
水音が手でくくった髪を放した。
水音の赤い髪がまた、はらりと落ちた。
それと同時に和也の顔が真っ赤になり、横を向いた。
「・・・・」
水音がまたジッと和也を見た。
水音がまた手で髪を両方にくくる。
和也の顔がまたすぐにいつもの無表情に戻る。
水音がくくっている手を放す、
和也がまた顔を赤くしてそっぽを向く。
(お・・・・面白い・・・・)
水音はこの時はっきりとそう思った。
「さて、冗談はこの位にして・・・どうしよう・・・・」
水音は髪を止めながら不安そうに気絶している滝口を見た。
「水音、お前は先に外で待ってろ」
いつもの無表情に戻った和也は、無機質な声で言った。
「でも・・・」
水音はまだ不安そうにしながら抗議する様な目を和也に向けた。
「お前がいれば余計ややこしくなる・・・・違うか?」
和也は倒れている滝口に近づきながら言った。
「う〜・・・わかった・・・」
水音は少しむくれてからドアに向かった。
開く音と閉まる音が連続で聞こえた。
和也は水音が部屋を出るのを確認してから、滝口の所でしゃがみこんだ。
「お〜い大丈夫か?」
和也は滝口のほっぺを摘みながら少し心配そうに言った。
「う・・・ん?」
滝口が小さな声を出した。
「お、起きたか?」
和也が滝口の顔を覗きこんだ。
「!!!!」
突然、滝口はガバッと跳ね起きた。
丁度、顔を覗き込んでいた和也の顔面に滝口の頭が食い込んだ。
「ごほぁ!?」
和也は妙な声を上げ、鼻血を出しながら吹っ飛んだ。
和也は「ぐぬぉぉ…」と嗚咽を出しながら顔を抑え、痛みに耐えていた。
「ご、ごごごごめんよ!」
滝口が慌てて和也に謝る。
和也は、顔を抑えるのを止め、
真剣な面持ちで滝口を直視した、まだ鼻血は出ている。
滝口は、和也の純白の視線から目を逸らした。
和也が何を言いたいのかがわかったのだ。
「僕はとても酷いことをしたね・・・」
滝口は誰に言うでも無く、悲しそうに、うつむいた。
「・・・・」
和也はジッと滝口を見ていた。
「僕は、僕は、何て酷いことを…!!!」
滝口は唇を強く、噛み締めながら、とても悲しそうに言った。
和也はスッと立ち上がると、俯いている滝口に背を向けて言った。
「俺から水音には言っておこう、大丈夫さ、
あいつは優しいからきっと許してくれるんじゃないか?」
本当にどうでも良さそうという風にブッキラボウに言った。
滝口は顔を上げ、不思議そうに和也の背中を見た。
「君は・・・?怒っていたんじゃないのかい?何故、僕を助ける様な行動を?
僕は赤の他人なんだよ?」
滝口は本当に和也の行動がわからなかった、
さっきまで、あんなに怒っていたのに、今は怒っているようには見えない。
「さぁーな、」
和也はめんどくさそうにドアに向かって歩いた。
和也は歩きながら小さな声でポツリと言った。
「本当に必死なアンタを、自分に被せて見たのかもナァ…」
懐かしそうに何処を見るでもない空中に目を向けていた。
「え?」
滝口にはよく聞き取れなかった。
ドアの開く音が教室に響く。
「じゃーな、ま、水音とは頑張れよ」
和也は顔だけ振り返りながら、ほんの少しだけ笑って見せた。
「待っ・・・」
ピシャッ
滝口が止め様としたが、その時には和也はドアを閉めていた。
「・・・・」
滝口はその場で呆然と立ち尽くしていた。
(あの人は・・・何だったんだ?)
滝口には、和也の最後に見せた、小さな微笑みがとても悲しそうに見えた。
(あの人は・・・怒っていたんじゃない、悲しんでいたのか?
でも・・・・なにを・・・?)
夕日の射す教室の中、滝口は和也が出て行ったドアをジッと見つめていた。
「・・・・待たしたな」
和也が無表情で水音の後ろに立っていた。
「ぅわぁ!?」
水音は慌てて飛びのいた。
「む・・・どうした?」
和也が少し眉を上げる。
「い・・・いきなり、後ろに立たないでくれるかな、心臓に悪いなぁ・・・」
水音は胸を撫で下ろした。
「悪い」
特に悪かったとは思ってない様な口ぶりだ。
「もういいよ〜」
水音はフウッと小さくため息を流した。
「ほんっっっっとに昨日といい、良い事無いナァ・・・・」
水音は昨日の朝から今日までの事を思い出していた。
「っていうか何で鼻血出てんの?拭きなよ」
水音はそう言うと、ハンカチを出した。
「本当に、良い事無かったのか?」
和也は鼻血を拭きながら言った。
「無かったよ、和也はあったの?」
水音は和也の不振な質問に頭を傾けた。
「ああ・・・・」
その時、一陣の風が吹いた。
水音の髪がフアッと少しだけ浮いた。
「俺は水音と出会えた」
優しく和也の目を見つめ、それは何かを思わすなような・・・
水音は一瞬だけ和也の純白の目が優しく光ったように見えた。
「和也・・・・」
「嫌、くさいよ」
水音は呆れた顔で、和也に言った。
(あ〜、コイツは鈍感なんだな…)
和也の顔がすぐに元に戻る。
試しに言ってみた言葉はあっさりと返されてしまった。
「ほら、怜次君待ってるよ」
告白をされた後とは思えない様なのんびりとした口調で先に歩き始めた。
(大丈夫だと思うが・・・まぁ一応言っとくか)
「アイツのこと許してやってくれよ」
和也の無機質な言葉が水音の心を揺らした。
『アイツ』、滝口の事を理解したのか、足を止めた。
「うん、わかってるよ」
少しだけ振り返ってニッと笑った。
(・・・?わかってる?)
水音の言った言葉を和也は理解できなかった。
水音は歩き始めながら、淡々と話始めた。
「滝口君はあんな事する人じゃないもん、きっと魔がさしただけだよ」
水音はあの時の事を簡単に言った。
和也は予想外の言葉に驚いた。
その時、言葉の意味がわかった。
(ああ・・・そうか、水音は優しいんだ)
「ほら!行こう!!」
水音は走り出した。
水音の赤いツインテールがかわいらしく小さく揺れた。
和也は水音の髪がストレートになった時を思い出していた。
「ったく・・・似すぎだろ・・・」
呟いた独り言が、妙に心に響いた。
あの時の笑顔があの時の悲しそうな顔があの時の怒った顔が和也の中である人を思わす
「沙羅・・・」
和也は水音の後を追い掛けた、
水音の後姿に 。を見たから
―おまけ―
帰宅した寮内にて
醤油が見つからないので、怜次が困っていたが、
水音が、自分が作ると言ったので、怜次は水音に甘えさせてもらった。
青い顔をした二人、もとい、和也と怜次がテーブルに座っていた。
「おい、なんだこれは・・・・」
「嫌・・・・俺に聞かれても・・・・ナァ」
そのテーブルの隣りで、嬉しそうにエプロン姿の水音が立っていた。
大皿に如何わしい食卓がテーブルに置いてある。
「おい・・・・これは何だ」
和也が今度は水音に同じ質問を出した。
「何って?スープだよ?」
水音はそう言うと黄色い汁が垂れながら、何かウネウネと動いている、茶色い物体を指差した。
聞き間違いか、「殺してくれぇ…」という不気味な声がする。
(おいおいおいおいおいおい、これ、料理って言っちゃ駄目だろぉ)
(同感だな、っというよりどうやって作ったんだ?
しかも液体が何故、固体(水音の料理)になっているんだ?)
小声でボソボソと二人が話し合っている。
「前よりも上手く出来たんだけど・・・」
(前にこれ以上の核兵器を作り出したのか?)
二人は心の中で同時に突っ込んだ。
「どうしたの?食べないの?」
キラキラと期待と希望に満ちた目がジッと二人を見ていた。
「・・・・」
「・・・・」
この時程、二人が同調したことはなかったであろう。
(うわぁ・・・どうしよう・・・・)
二人共同時にさらに顔を青ざめた。
この後、
二人分の叫び声が寮内に響きわたった。
第3話 和也と水音 -完-
更新遅かったー!
えー…ごめんなさい、小説を見ている人は少ないだろうけど、今回は、水音と和也のちょっとした関係が少しだけ出たと思います、
和也だけの不思議な感情世界、怒ったり、悲しんだり、感情があるようで無い、悲しい存在だと私は思っています、これからわかっていくと思いますので、どうかこれからもよろしくお願いします!!それでは 第4話 初依頼と黒猫 で会いましょう