表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

第19話 クエーカー

違う、違う、違う!


友達だ!!友達だ!!明日また遊ぼうぜ!?明後日も!!次の日も!!ずっと!ずっと!!

友達なんだ!!大切な…


目の前に和也が居た。

正人は理解出来ない。

頭が痛い、顔が痛い、至る所が痛い。

覚えのない異常なまでの疲れがあった。

何でこんなことになっているのか?

「何で?これは?…一体?つか何か顔痛ェ…」

俯いていた和也が顔を上げた。

その表情はホッとした様な安心している様なイメージがあった。

正人は不思議そうに和也をみつめると、和也の右手が目に止まった。


「お!おい!かずちー!何だその手は!?焦げてんじゃん!!、え?何?何があった!?」

正人の焦りも知らずに、和也は微笑を浮かべていた。


嬉しそうに。



「話は後だ、取り合えずここから離れよう」

そう言うと和也は背を向けた。

訳が分からなかった。

唯、ボロボロの和也の姿が戦闘の後だという事は解った。

何故、戦闘の後なのかは解らないが、


「お!おい!待てよ!」

慌てて和也の後を追おうとした。

だが、すぐに止まった。

直ぐ横に自分の武器があった。

「…?」

(何故こんな所に俺の武器が…?)


ッジ…


「!?」

頭の中でノイズが走る。

フラッと一瞬眩暈がするが、直ぐに立ち直る。

(何だ…?今の?記憶?)

頭の中を映像が駆け抜けた。

頭が混乱して、はっきりと解らない。

和也の方に目を向けると、大分離れていた。

「お!おい!待てよ!」

そう言うと、頭をブンブンと振った。


考えている時間は無さそうだ

自分の武器を拾った。


その瞬間。


…ッジ!


再びノイズが走った。

先程よりも強烈なノイズ。

「ぐ…ぁ!」

苦しみで声が漏れる。


よろけながらも、その手に持つサーベルは離さなかった。

(こ、れは!ち、がう!!手が…!)

手から武器が『離れない』

石の様に手が固まっていた。


頭の中で、再び映像が流れる。

今度はしっかりとその映像が見えた。


その映像は、自分が和也を攻撃していた。

絶対に自分がしない筈の事が。

サーベルを振い、和也を傷つけていた。

「あ、う?…あ?」

再び声が漏れる。


頭が痛い。


口からよだれが垂れていた。

「あ…うァァ…」

よだれを気にせず、廃人の様に目がグルグルと回る。


頭が痛い!!


パキン!!

ノイズの流れる頭の中に、割れる音が入ってきた。

頭からポロポロと破片が落ちた。

能力制御装置。

和也の頭に付けていた赤いカチューシェが砕け散った。

形を残さずに。


「あ…ああ…」

後ろに回していた髪の毛が、全て元に戻る。


サーベルを握りなおし、和也の後を追った。

口のよだれを拭う。


自分の目は血走った様に熱い。

熱い!熱い!熱い!


和也には直ぐに追いついた。

背を向ける和也のすぐ後ろに居る。

何も知らず和也は歩いている。


それに合わせて付いていく様に歩く。

サーベルを持つ手を頭上まで上げる。


おい、なにするんだよ。


両手でサーベルを握りなおした。


やめろよ!そんな事したら!


意識とは無関係に手に力が入る。

そして振り下ろす。


ァァァッ!!


ザン!!

肉を切る感触が手に残る。

血が飛び散る、顔に、床に。

不意打ちに力いっぱい振り下ろしたサーベルは、はっきりと深く斬った。

骨までいったかもしれない。

ハムを斬るように簡単に斬れた。

能力まで使っていた様だ。

ドサッと音を立てて和也が倒れた。


ウァァァ!!何て…ことを!


心の声は届く事も無く、唯『自分』は和也を見下ろしていた。


「グッァァ…!」

倒れている和也から呻き声が漏れた。

普通なら気絶してもいい様な致死量の血が流れているのにも関わらず、和也にはまだ意識があった。


早く何とかしないと和也が死ぬ!!ごめん!!和也ァ!!ごめん!!ごめん!!


だが、思いも空しく、体は自由に動かない。

助けようとする思いとは裏腹に和也に向けて再びサーベルを振り上げていた。

止めを刺す為に、手に力が入っていく。

そして、クエーカーとしての『揺れ』の力がサーベルに流れていく。

自らに作り出す微弱な振動をギリギリまで強化する。

微弱な揺れは振動に、強烈な振動で作り出したソレは、電動ノコギリの様に『削る』

そして、『削る』仮定を超えるとその武器は最大の斬り味を作り出す。

どんな物でも、まるでハムを斬る様にソレは簡単に斬れる。

正人自身の持つ、『確実に殺す為の技』

正人の名前は、クエーカー(迷惑な自己地震)


やめろ!やめろ!!


クエーカーは心の中で叫ぶ。

だが、体が動かない。

体が言うことを聞かない。

迷惑な自己地震は、自身すら迷惑と感じる事はしない。

今の和也はクエーカーでは無い。


嫌だ。


唯の『操られた人形』。


サーベルは振るわれる。

正人の思いも空しく和也に狙いを定め『確実に殺す為の技』を使う。



大切な友に、こんな力を使いたくない…

何で…何で『また』この力のせいで…ぁぁぁ!!


アウトサイダー(局外者)は、自らの力を呪う。

正人も例外では無い。

突然手に入れた力。

たった一つの力を手に入れたせいで多くの物を失った。

だが、正人はこの学校に来て、また新たな物を手にした。

多くの新しい大切な物を。

だが、自らの手で再び大切な物の一つを失おうとしていた。


第19話 クエーカー

短いですが、正人サイドの状況を書かせていただきました。

早め、早めの更新を目指します。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ