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第16話 レヴィアタンVSデストロイヤー

2人の洗脳の能力者。

一人は心に、一人は身体に。

心は、無情に奥底の狂気を引きずり出す。

身体は、意志とは無関係に殺戮を求める。


一人の能力者は、言った。

『無意識の心』


赤目の少女の思いは続く。

心の思いは想いとなり望む。

想いは重りとなりて、その体を急き止める。


心は涙を流し、身体は悲鳴を上げる。


それをみつめるは同じく赤い瞳。


狂気と狂気がぶつかり合う。

水音は座っていた、一列に並ぶ蛇口からは大量の水が流れ出ている。

空気中に冷気が舞っていた。

それに合わせるようにゆらゆらと揺れる粉雪が水面に落ちる。

その部屋には春だとは思えない肌寒さがあった。

スカートや制服がずぶ濡れになっていく、少女は気にせずに水浸しの床に座っていた。


赤く長くストレートへと変わった髪は床に付く。

濡れる髪の毛も気にせず、俯いていた。

その目は何を見るでもなく、ひたすらに下を見ていた。

ブツブツと小さく口を動かしていた。

それは言葉と言うにはあまりにも言語として機能していなかった。

それでも歌う様に、呪文の様に繰り返す。




水音の口は突然止まった。

ゆっくりと立ち上がると、ドアへと歩き出した。

一歩足を踏み出すたびに、水浸しの床がパキパキと音を立てる。

歩いた後に氷の足跡が出来ていた。

ゆらめく粉雪は水音の周りを舞い、水音の移動に合わせて粉雪も動いていた。

小さな粉雪は一点に集まっていくと白い球体へと変わっていた。

それを繰り返し、幾つもの白い球体が水音の周りを浮いていた。

水音の周りに白い冷気がまとわりつき、流れる様に消え去った。

その後に、濡れていたはずの水音の服は濡れる前の姿へ戻っていた。

それは、乾いたというより水分を取り除いたという方がしっくりくる。


凍りついたドアの前に立つと、水音はほんの少しだけ首を傾けた。

それに合わせて長い赤髪が顔に掛かる。

目の前に自らが凍らしたドアが在った。

右手をそのドアにかざした。

水音のストレートの赤髪がフワッと少しだけ浮いた。

同時に凍りついていたドアがパキッと小さな割れるような音を立てた。

凍りついていたドアは更に被せるように、凍っていった。

パキパキパキ!と音が何度も響く。


パキィン!と大きな音を立てると、ドアはバラバラと崩れていった。

凍りついていたドアは唯の破片へと変わった。


そのドアの先に、


黒いショートをなびかせる親友が居た。

俯く目は床をみつめる。

その瞳は赤く輝く。

その瞳は狂気を示す瞳。




第16話 レヴィアタン【Leviathan】(捻れた水使い)VSデストロイヤー(破壊で示す者)







突然に破片へと変わるドアに、今井は反射的に目が行った。

氷の破片の後には水音が立っていた。

2つ縛りの赤髪が下ろされていた。

その姿に、今井は水音が無事だった安心より不安が脳裏に過った。



最初に声を掛けたのは美奈だった。

「水音…!」


瞬間、


ヒュンッと美奈の顔の横を何かが通った。

え?と小さく声を上げてソッと掠めた頬を掌でなぞった。

赤い血が掌を少し染めた。

頬が切れていた。

『切れる』というより『斬れる』といった方がしっくり来る気がした。

それほどスパッと切れていた。

そこで水音の周りに幾つもの白い球が浮いている事に気づいた。

(何だ?)

今井が茫然と水音を見ていると、その内の一つがパキッという小さな音を立てながら細い針状へと変わっていった。

再びヒュンッという音がするとその針状の物は消えた。

同時に美奈が素早く右手を自らの目の前へと出した。

一瞬、今井には美奈が何をしたのかが解らなかった。


美奈の右手に集中すると、人差し指と親指で細い針を掴んでいた。

それは先程の水音の周りにあった針状の物。

「・・・・へぇ」

親指と人差し指でその針状の物をクルクルと回していると、針状の者はゆっくりと形を崩した。

(あれは…氷?)


針状の物は液体へと変わり、美奈の掌を湿らした。

美奈は湿った掌をグッと丸めると拳を作った。

その拳をジッと見つめるともう一度呟いた。


「・・・・へぇ」

水音がゆっくりと掌を美奈に向けてかざした。

美奈は自らの拳から水音に視線を映した。


明らかに様子がおかしい事は今井にも直ぐに解った。

嫌な予感が過った。

水音が顔を挙げた瞬間、嫌な予感は的中する。

黒い瞳が深紅の瞳へと変わっていた。



「マジかよ…」

そんな言葉が漏れた。

茫然としている今井に美奈が振り向いた。

今井と美奈の視線が一瞬だけ交差する。

だがそれは一瞬で、振り向いたと同時の回し蹴りが今井の胴に直撃した。

「ぁ…がぁ!?」


苦痛の声と共にバキィ!と乾いた音がした。

ヒビの入っていた今井のあばらが美奈の一撃で完全に折れた。

体が浮くと、そのまま壁へと激突した。


そのままズルズルと床へ落ちて行った。


「何しやが…る…!」

声を出すと、横腹に激痛が走った。


そのまま一周した美奈は今井の方を見ず、背中を見せたまま冷たい声を放った。

「邪魔…」


「な…に?」

睨み合う美奈と水音。

凍りつく空気、戦闘の始まりの一歩手前といった状態。


(何で…?)

水音の目は、おそらく『マインド』により目が赤い痕へ変わっていた。

今井には何があったか解らないが、操られているはずの美奈と水音が睨み合っている。

(仲間じゃないのか?)

操られている2人に戦う理由なんて無いはずだ。

無いはずなのだ。



「何でそんなに敵意を向けるかなぁ…」

先程の冷たい声とは違う悲しそうな声。

「一緒になったら…戦わないで済むと思ったのにな」

あの明るい美奈からは信じられない、震えている声。


(なんだよ…それ?)

一緒に、とは同じ操られている状態になったらという事だと今井は認識した。

どうやらこの状態は、美奈本人にも解っていない様だ。

唯、解ることは美奈は水音を仲間にしようとした。それは殺したくないから。


最早、操られている美奈自身の苦肉の策、水音を想う友情。

「そんな事が…」

驚異の精神力が操られてもなお、忘れない友情が在るのか。

今井は感動していた。そんな真剣な美奈に。


「何で…」

美奈が小さく零した。

「何で…」

美奈は一度掌を開くと、ゆっくりと拳を握りこんだ。

「何で…」

声の震えが止まっていた。

「何デ…」

そこで今井は美奈の様子がおかしい事に気づいた。

自らの精神力と、洗脳の力が美奈自身の中でグチャグチャに掻き回される。

理性が崩れる。


今井には、気のせいか嗚咽で漏れる声が嬉しそうに聞こえた。


「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何デ何デ何デナンデナンデナンデナンデ!!」

美奈は大きくかぶりを振る様に頭をを大きく振った。

「!?」

叫び声が廊下に響きわたる。

「戦ったら止まらない!!戦ったら殺してしまう!!殺したくない!!殺したい!!駄目ェ!!駄目駄目駄目駄目駄目駄目!!!」

「み…美奈ちゃ…」

突然の豹変に今井は目を見開いた。

水音の表情は変わる事は無い。

唯唯、美奈を見つめる。


瞬間、美奈が目の前から消えた。

美奈は瞬時に水音の目の前に移動した。

右手を深く後ろに引き、タメを作るその拳が美奈に振り下ろされた。


バキィン!!と割れる音が響き渡る。

水音が再び瞬時に氷の壁を作ったのだ。

しかし、先程と同じ様に美奈の力押しで氷は砕け散った。

拳はそのまま水音の顔面を捉えんと走った。


ッゴ!!と鈍い音が響く。


(直撃!?)

今井の視線が美奈を捉えた時、既に鈍い音がしていた。

確かに美奈の拳は直撃していた。

しかし、水音は目を細めるだけで、動く事は無かった。


美奈が殴った部分に薄い何かが張っていた。

(あれは…?)

その光る薄い膜は生きているかのように蠢くと、美奈の拳にすざまじい速さで纏わりついた。


「あ…あ…!?」

慌てて美奈は拳を放し、距離を取った。

拳に着いた膜は除所に広がっていった。

銀色に輝く液体は腕を完全に覆った。


水音が腕を美奈に向けた。

瞬間、周りで浮かんでいた大量の氷の針が美奈に向って飛んだ。

「っく…!」

得体の知れない液体で動かない腕を庇いながら瞬時に足に力(能力)を入れると横っ跳びに高く飛んだ。

美奈が居た場所に幾つもの突き刺さる音がした。

水音の赤い瞳は美奈に向けられ、離れる事は無い。

両手を美奈に向けると、水音が小さな声を漏らす。

「水の…柱」

水音の両手の前に大きな水球が作り上げられると、弾丸の様に美奈に向って走った。

いくら速く動ける美奈でも空中で動く事は出来ない。

そのまま水の塊が美奈に直撃した。

「…!」

そのまま美奈の体は宙を浮くと壁に叩きつけられた。

「ぐ…ぅ!」

呻き声が美奈の口から漏れた。


美奈が床に崩れ落ちると、そこに水音の追い打ちによる氷の針が飛んだ。

床に足が付いた瞬間、既に美奈の姿はそこに無かった。

能力の瞬間的な速さが廊下を駆け抜ける。

同時にまだ動く左手を後ろに引き強くタメを作る。

一瞬で縮まる、水音と美奈の距離、反応が遅れた水音は、今度こそモロにみぞおちに入った。

バキィ!!という音と共に水音が吹っ飛んだ。

壁にぶち当たると、美奈と同じ様に床に崩れる。

美奈に殴られた部分がキラキラと光りながら崩れた。

瞬間的に作り出した氷が美奈の拳の威力を殺した。

しかし、それでも完全に殺す事は出来ず、無造作に立ち上がる水音の脚がグラついた。


美奈は水音を見下ろす様に睨みながら、口から赤い物を吐いた。

赤いソレは壁にぶち当たった衝撃による物。

水音の口の端から血がツーッと流れる。

水音と美奈の赤い視線が再び交差する。


(なんだこれは!?)

その全てを見ていた今井には何が起こったか解らない。

早すぎる攻防。

何よりも、水音が美奈と互角以上に渡り合っているのが『ありえなかった』

今井は美奈の実力は知っていた、知っていた上で水音が勝てる勝率は皆無の『はず』であった。

だが今の水音はあまりにも違っていた。


「強いじゃん…」

そう零した美奈が笑った。

美奈の体は銀色に光る液体で体半分が覆われていた。

パキパキと音を立てながら、最初に液体が広がった右腕が凍りだした。

美奈の体がぎこちなく揺れる。


体が動かなくなっている。

今井にはそういう風に見えた。

水音の見せる初めての技、氷と水以外に見せる『液体』。



動かない美奈に水音は左手の人差し指で指差した。

(!?、空気が変わった?)

同時に水音の周りがキラキラと光りだす。

次に体を横に向けると、右手の人差し指、中指、親指で掴む仕草を見せ、左手と垂直に胸の位置まで引いて見せた。

周りの光が水音の一点に集まっていく。

向けていた人差し指を、細長い物を掴むように縦に握る。

光が集まると、そこに長い孤を描く光る透明な棒が現れた。

目を凝らさなければ解らない程の細い透明の糸が棒の先と先に繋がっていた。

それは弓と呼ばれる武器。

飾り付けの無いシンプルな弓は、演舞に用いる物の様に細長い。

(水音ちゃんが…武器!?)

今迄に水音が武器を持つ所は見た事が無い。

情報人として働く今井に『知らない』という事は許されない。

高校に入る前から水音の事は知っていた。

今までに水音が武器を持つというのは聞いたことが無かった。


そんな考えをよそに、水音は動けない美奈に標準を向ける。

水音の周りの雪の様な小さな白い球が次々と細い氷の針へと変わる。

その針の向きは全て美奈に向けられていた。


今井の背中でゾワッと寒気が走り抜けた。

今の水音に躊躇は無い。

初めて見る殺意に満ちた水音の目。

「ダ…ダメだ!!水音ちゃん!!」

今井は叫んでいた。


昨日まで笑い合っていた2人が目の前で殺しあっている。

優しかった水音が美奈を殺そうとしている。

いつも楽しそうで、笑っていた美奈が親友に何度も拳を振るった。

(なんだよこれ…)

今井は奥歯を強く噛み絞めた。

何も出来ない自分が、力の無い自分が悔しくて。

目の前の現状をどうする事も出来ない。

声を上げる事なら誰でも出来る。

情けなく叫ぶ自分が居た。

狂ったように叫ぶしか無かった、この声が届きますように。

何て非科学的な事を考えながら。

闇の世界は沢山見て来たつもりで居た。

情報人という仕事は嫌でも残酷な情報を頭の中に焼き付ける。

だからこそ思い込んでしまっていた。

だが、違った、今、本当の闇を見ている気がした。

自分の考えの甘さを嘆いた。

「クソ!クソ!」

立ち上がろうともがくも、足は言うことをきいてくれない。

ミシミシと折れたアバラが軋む。

幸せな学校に戻って欲しいと、願いたかった。

今井の思いも知らず、美奈の指が羽から離れる。

同時に水音の唇が小さく動く。


『断絶の矢』


友の命を絶ち切る断りの矢が美奈の心臓を狙う。

瞬間、矢の羽からペンシルロケットを思わせる水の飛沫が噴射した。

その勢いに乗せた輝く矢は、動けない美奈に向って真っすぐに飛ぶ。

ありえない速度は風を起こし、矢の通った後の蛍光灯は次々に割れていく。

ワンテンポ遅れて、水音の周りの大量の氷の針が美奈に向って飛んだ。

氷の針は小さな孤を描きながら大量の流れ星の様に容赦無く降り注ぐ。


今井が目を強く見開いた。

自分の知っている人間が…


美奈を中心とし、1メートル内に抉れる地面のコンクリートが砂煙として舞い上がる。

砂煙がゆっくりと晴れていく。






今井の目が驚愕で更に見開く。




そこに美奈の姿は無かった。

美奈は水音の能力で身動きは取れないはずだった。

しかし、美奈はそこにいなかった。

大量の血が美奈の行き先を示していた。

水音の首が血の先にグリンッ!と回った。


その機械の様な反応に今井は背筋を寒くする。


水音の視線の先に、血だらけの倒れている美奈が居た。

肩に水音の放った『断絶の矢』が突き刺さり、体中に幾つもの氷の針が刺さっていた。


美奈は瞬時に、まだ凍っていない左足に力(能力)を注ぎ、強く横に飛んだのだ。

しかし、右足を主体にする美奈は、慣れない左足で飛ぶ事によりバランスも取れず、確実に避ける事は出来なかった。

心臓を狙う『断絶の矢』を完全に避ける事は出来ず、肩に突き刺さった。

それでも即死を防ぐ為に、速すぎる矢の当たる位置をずらす美奈の高い運動神経が伺える。


美奈が先ほど居た場所から、美奈が倒れている位置にまで、夥しい血が流れていた。

美奈は震えながらも手を地面に付いて立ち上がろうとしていた。

ボタボタと赤黒い血が肩から流れ落ちる。体の到る所からも血が流れている。

刺さった氷の針は溶け出していた。

当たりながらも瞬時に飛んだ時に、噴き出した血は、生きている量とは思えなかった。

美奈に付いていた氷が『断絶の矢』の衝撃で剥がれ落ち、立ち上がる美奈からパラパラと落ちていく。


ゴフッと美奈の口から血が噴き出た。

自分で思っている以上に美奈のダメージは大きいと発覚した。


「あ…あぁぁ…」

美奈の口から小さく声が洩れる。

美奈は空中を仰ぐ。

「ぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゜あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

廊下に美奈のシャウトが響き渡る。

(・・・・・な!)

ビリビリと肌に伝わる振動に今井は言葉を失う。

「・・・・」

水音は表情一つ変えず、再び美奈に輝く弓を向ける。


掴む仕草を見せ、後ろへ弾くと光が瞬時に集まり矢の形を形成する。

再び美奈の心臓へ、狙いを定める。

弦を放すと同時に再び矢から水飛沫が飛び発射した。

血だらけの美奈に最早避ける力は無いと、今井自身にも解る。

美奈は強く歯を噛み締め、矢へと顔を向ける。

息を強く吸い込み、右腕を後ろに引いた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

美奈が迫る矢に合わせるように拳を振った。

同時に、衝撃が美奈の体に響く。

体中から血が流れる。

『断絶の矢』と美奈の拳がぶち当たった。

コンマ数秒だけ、衝撃で矢が止まった。

しかし美奈が腕を振りぬくと『断絶の矢』は砕け散った。


水音の表情が少しだけ動いた。

「まだ…まだぁ!」

目の前で立っている少女の足元には血の池が出来ていた。

(…?)

その姿を見ていた今井は違和感を覚えた。

その違和感の招待を掴む事が出来ない、胸の中でモヤモヤしたものが広がる。

(なんだ…?)



少女は迷わない。

右足で地面を蹴った。

瞬時に水音の矢が放たれる。

最大速の2つのスピードは一瞬で距離が詰まる。

美奈が頭を傾けた、顔のすぐ横を『断絶の矢』が通り過ぎる。

完全に避け切れず、頬の皮膚が切れる。

外れた『断絶の矢』は、空中で霧散して消えた。

美奈は水音の直ぐ目の前まで来ていた。

振り被る右は水音の顔面を狙っている。

水音の顔の皮膚に、薄い液体の膜が現れる。

(あれは、さっきの!)

最初に美奈が触れ、広がっていく液体。

今井には水音が不敵に笑った様に見えた。


そして、美奈はハッキリと不敵に笑った。

振り上げた拳は水音では無く、地面に叩きつけられた。

コンクリートの破片が飛び散る。

予想外の行動に水音がひるんだ。

一歩後ろに引くと、コンクリートの破片が水音の目に飛んだ。


慌てて眼を閉じるが、直ぐに目を開いた。

目を開くと目の前に美奈が居た。

右足を前に左足を後ろにし、両手とも握りこんだ拳に左は脇を閉じた体制、突き出した右の拳は水音に触れないように間を開けて腹の前に置かれていた。

(あの構えは…!?)

今井にはソレに見覚えがあった。



美奈と水音はすぐ近くにいた。

赤い瞳は無表情で美奈の顔を覗く。


美奈は嬉しそうに笑っていた、さっきまでの狂ったような衝撃が嘘の様に。

「アッハッハ!あ・た・し・の勝ちィ〜」

楽しそうに笑い声を挙げた。




美奈の純粋な黒い瞳が水音を見つめていた。


「あ…ぇ!?あ!?」

今井がワンテンポ遅れて、異変に気づいた。


美奈の瞳が赤から元の黒に戻っていたのだ。



「ばぁいば〜い♪」

美奈の楽観的な声と共に、右足の親指に全体重を掛けて、腰を回す。

拳は水音に触れずに、放たれる。

ドォン!!という音が響き渡った。

音とともに美奈が宙を浮く。

そのまま壁に激突すると、壁に亀裂が入った。

ゆっくりと床に落ちると、ガクッと首を落とした。



「ワ…ワンインチパンチ…」

今井が声を漏らした。


「アッハッハ!本当は寸勁すんけいって名前なんだけど…」

血だらけの少女は今井にそう言いながらも、いつもの笑顔を見せた。

「ね…」

小さく零すと、そのままゆっくりと冷たい床に倒れた。






第16話 レヴィアタンVSデストロイヤー -完-

はい、今回の話は戦闘一色でございます。

最初は脇役予定の美奈が、ここまでいくとは…


今回の、水音の別名として出したレヴィアタン【liwjatan】ですが、本当はコレ英語で【Leviathan】リヴァイアサンです。旧約聖書に出てくる海の怪物です。

ちなみにレヴィアタンはヘブライ語です、ヘブライ語でレヴィアタン【liwjatan】の意は「ねじれた」「渦を巻いた」です。

ヘブライ語の方が元の様ですね。(よくわからんが)



後、美奈が最後に使った技、『寸頸』は実際にあります。

深く説明するとネタばれになりますのでやり方だけでものせようと思ったのですが、これがどうして…、一人寂しく「エィヤ!トゥオウ!」とか言って頑張りましたが、トーシロには無理です。自分でお調べになって、同じ思いをして下さい。


それではここいらで、

遅い更新ですが、これからもお願い致します。



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