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第13話 VSクラスメート

目の前に居るのは常に笑い合ったクラスメート。

その面影は今は無く、その赤い眼は何を見ている。

手に持つ凶器は何の為に…?

簡単だ、俺達を殺す為に使う道具なんだろ?

どうしちまったんだよ?正人?


お前もあの『言葉』に踊らされてるのか?



  第13話『VSクラスメート』

和也達のクラスで警報の音が鳴り響いていた。

本当ならば目を覚ましてもいいような耳障りな音に、誰一人反応を見せない。

みなが同じように小さな寝息を立てていた。


耳障りな音がプツッと突然途切れた。

それに合わせたかのように、先程まで寝息を立てていた生徒の数人が目を開けた。

全員が目を開けたわけではなく、幾人かは目を開けず今も小さな寝息を立てていた。

起き上った生徒達はバラバラに動き出す。

軽快とはいい難く、ノロノロとした動き。

床に突っ伏して寝息を立てる教師や、今も目を開けず机に突っ伏すクラスメートには目もくれない。

迷いも無く、生徒達は自らの求める場所へ向かった。

そして手にした物は、

人を傷つける物

有る者は剣を、有る者は槍を、

生徒達には、いつものお茶らけている姿は無かった。

顔に笑みは無く、悲しみも無く、怒りも無い、唯々無表情に。

だが、全員の目の色が変わり、統一されていた。

ひたすらに赤い赤い瞳、


明るいあのクラスの姿は何処にも無かった。

一人が開かなかったはずのドアに手を掛ける。

ドアは音を立てて簡単に開いた。

一人、また一人と生徒達はドアから出て行った。

その中には怜次の姿もあった。



生徒達の後ろ姿を見つめる感情の無い黒い視線には誰ひとり気付かなかった。


視線の主は生徒達から目を離すと、教室の後ろへと目を移した。

そこに一つだけ残された物が立てかけられていた。

視線の主は目を細めて白い布で覆われた長い棒を見つめた。


VSクラスメート



「正人…だよな?」

和也の言葉に正人はニヤッと笑った。

「そうだよ、まさか忘れたなんて言わないよな?」

確かにいつも見ていた正人であった。

声も、その姿も。

だが赤い瞳も、簡単に『殺す』という言葉を使ったのも、正人とは思えなかった。


正人は慣れた手つきでサーベルをヒュンヒュンと音を立てて回す。


「…?」

水音は不思議そうに正人を見つめた。

(あれ?こんなんだっけ?)

鋭すぎる感覚は本人が自覚せずに反射的に思わせた。

一歩、和也と今井よりも前に出た。


正人が回していたサーベルがピタッと止まった。

「!?、水音ちゃん!!離れて!!」


「え?」

水音は今井の叫び声に後ろを振り向いた。

今井の瞳には正人が、サーベルを水音の直ぐ後ろで頭に振り下ろしている姿があった。

「水音ちゃ!!」

今井の言葉はドガァッ!!という音に遮られた。

今井の言葉よりも素早く和也の飛び蹴りが横から正人の顔面を捉えていた。

正人が横に吹っ飛ぶと、固い床に打ち付けられる。

「え?え?」

水音が突然の音に正人の方を見ると、仰向けで正人が倒れていた。

その直ぐ前に和也が立っていた。

(和也…?)

普通の人間には変わっていないように見えたが、水音には確かに和也の目つきが変わったのが解った。。

「正人…冗談にしては笑えないな」

和也の眼は正人に対して敵意を向けていた。

薄らと和也は怒りを見せている。


「クク…」

仰向けのまま正人は吹き出すのを堪えるように両手を口で抑えていた。

「ククク!アッハッハッハッハ!!」

堪え切れない笑いが正人の表面上に爆発した。

足をバタつかせ、腹を抱えて笑い出した。

その姿は水音には異様に見えた。


「正人…」

和也の目にも正人の姿は異様に見えていた。



「ッハッハハハ…」

正人は笑うのをやめると、何事も無かったように、立ち上がった。

いつもおちゃらけている正人の、あまり見たことのない真剣な顔。

「駄目なんだよ和也…」


「駄目…?」

水音も何となく正人がいつもと違うこと事に気づいている。

今井のみ深刻な顔付で状況を見つめていた。


「体ン中で叫んでんだ…」

両手で自分を抱く様に腕をクロスさせた。

「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せってなァアアァァァアアァ!!!」

叫び声と共に和也達に向かって正人は走り出した。

「!?」

意表を突かれた和也は咄嗟に身構える。

先頭に居た和也にサーベルを振り下ろす。

数歩後ろに和也が飛んだ。

ブゥン!と和也の前でサーベルが空を切る。


「和也!」

水音が慌てて両手を正人に向けた。

状況を判断するよりも正人を止める事を優先する事にした。

能力発動の為に集中力を瞬時に底上げする。

水音の周りに水気が増していく。

横目で正人はそれを見ると、手の中でサーベルを回すと、下手持ちへと切り替えると同時に、そのまま床へと突き刺した。

ドキャ!という音と共に床にサーベルが突き刺さり小さな破片が飛んだ。

「甘いな!笹草ァァ!」

正人の言葉と共に、サーベルを刺した床から、ベキベキ!!と音を立てて、亀裂が走った。

亀裂は水音へと一直線に向かうと大きく広がっていった。


(能力か!?)

和也がそう察した時には、亀裂は水音を捉えていた。


「っひや!」

水音は小さな声を上げながら、その場から横っ跳びに飛んだ。

集められていた水気は、水音の集中力が切れたと同時に、無造作に周りに飛び散り、水溜まりを作った。

それを見た和也が胸を撫で下ろす。

瞬時に正人が和也から水音へと体の向きをかえた。

下に刺していたサーベルを水音に向かって下から上へと振り上げるた。

ブォン!と先程と同じ様にサーベルが空を切る。

(え?)

(…な?)

水音と和也が同時に眉を上げた。

まるで無意味な行動に意図が読めないでいた。

今井の焦った声が上がった。

「水音ちゃん!『来る』ぞ!!!」

水音が、え?と声を上げた瞬間、水音の体が『弾かれた』。

空中で弾かれた水音は、正人の作った床の亀裂に落ちて行った。


「っくっそ!!」

今井は即座に亀裂へと近づくと、亀裂の中を覗き込んだ。

今井の険しい顔に和也も状況を理解した。

「和也!!俺は水音ちゃんを追う!!その馬鹿片付けたら追ってこい!!」

それだけ言うと、今井は水音の後を追うために、亀裂の中へ消えていった。


「……簡単に言ってくれる」

和也の表情はあまり芳しくはない。

「お前とはガチで戦って見たかったんだよなぁ」

手のひらでクルクルと慣れた手つきでサーベルを回す。

ヒュンヒュンと耳障りな音が和也の気分を害する。

無表情のまま正人を見つめる。



「俺は武器も無いんだが・・・・」


【ガチ:意 平等に】


「……」

「……」

2人の視線が交差する。


「お前とはハンデ有りで戦って見たかったんだよなぁ」


「おい…何で言いなおした」

和也の迅速な突っ込み。


「うっせーなー!もっと楽しもうぜ!」

正人は和也に向かってサーベルを上から下に振り下ろす。

「勝手な野郎だ」

再び和也は後ろへと飛ぶ。

サーベルが空を切る。

「ああ!わりぃね!」

正人が一歩前に出て次は下から上に振り上げる。

(顎から脳天を切り上げる気か…)

溜息まじりな息を吐くと、今度は後ろへと下がらず、前へと一歩出た。

「まぁ、構わんがな」

サーベルが和也の体に当たる瞬間に横に向いた。

和也は、すぐ目の前で空を切るサーベルを瞬きもせずに見送った。

数本の純白の髪を切り取っていった。

「!?」

正人が全力で振り上げた筈のサーベルは和也の目の前を過ぎる。

和也は武器に向かって行くと、当たる前に体の向きを変えたのだ。

現在、振り上げた形の正人のすぐ横に和也が居る状況である。

「楽しむ前に終るかもな」

皮肉めいた声と共に右足をサーベルへと蹴り上げた。

ギィン!と弾く音と共にサーベルが正人の手から離れ、宙へ飛んだ。

「ぐ…ぁ!」

和也の蹴りを受けた右手がビリビリと痺れる。

反射的に左手で右手を守るように抑える。


和也はつまらなそうな瞳を正人に向けながら、右手を宙へと上げた。

タイミングを見計らったように、サーベルの柄が和也の手に吸いつく様に落ちてきた。

柄を握り込むと、痛みに呻いている和也の目の前に、サーベルの切っ先を向けた。

「ハンデが足りなかったか?」

和也は暗い笑みを浮かべて正人を見据えた。


「わぁお…映画みてーだな!和也」

正人は素直に和也の情人離れした動きに感嘆な声を漏らす。

(こいつ…脅しは利かんか…)

試しに、サーベルを軽く揺らしてみるが、正人の顔色は変わらない。

「とりあえず…何故俺達を襲った?」

正人は冗談で人を殺そうとする人間では無い。

「いきなり情報収集?かったい人間だな〜…」

正人は赤い眼を細めてつまらなそうに和也を見た。

「その眼もだ、今この学校で何が起こっている」

確実に何かが起こっているのは確信していた。

床に亀裂が走っても、剣を振りまわしている人間が居ても、ここまで騒いでも誰一人来る気配を見せない。

明らかに妙だと感じていた。


正人は質問に答えず、ニヤッと笑ってみせた。

「っへへ、いいのか?和也」

和也は軽く片眉を上げて見せると、眼を瞑る。

再び眼を開けると、睨みつけるような純白の目を光らせる。

「質問をしているのはこっちだ」

正人は顔色を変えず、言葉を続ける。

「こんな事してる暇あったら笹草や今井を追った方がいいんじゃないか?」


「何…?」

その言葉が軽く首を傾げた。

その瞬間、ドォォォン!!!と何かを破壊させた様な音が響き渡った。

音と共に、激しい揺れが襲った。

「ぬ…!?」

和也は突然の揺れにバランスが取れず、膝を付いた。


「いい揺れじゃん」

正人の声が頭上からした。

正人は激しい揺れの中、当たり前の様に立っていた。


「!」

ッゴ!と鈍い音と共に和也が宙に浮いた。

何かの衝撃が和也の体にぶち当たった。

何かが飛んできたわけではない、突然衝撃が和也を襲った。

自分が宙に飛んでいる事に一瞬気づく事が出来ないでいた。

床に激突した衝撃で初めて、自分が飛んでいた事に気づいた。


固い床に上向きで倒れていた。


「!?」

慌てて起き上がると、自分の右手を見た。

その手に握っていたはずのサーベルが無くなっていた。

カランッと自分が先程立っていた場所で金属が落ちる音がした。

頭が混乱していた。

まるで、真正面から巨大な者に衝突した様な感覚。

しかし、自分の体よりも前に出していたサーベルに最初に衝突を感じるはずであった。

しかしサーベルには衝撃はきていなかった。

サーベルを通り抜けて、掴んでいた掌には確かに衝撃があった。

それだけでは無い、体のにまで衝撃が走った。


茫然としていた。

まだ何が起こったのかわからなかった。

「大切な者なんだから大事に扱えよ」

正人のむすっとした声に和也は我に返った。

前を向くと、正人が自分の武器を拾い上げている所であった。


「っ〜〜〜!!??」

慌てて立ち上がろうとすると、体中が悲鳴を上げた。

激痛に目を瞑る。

(何だこれは…!?)


「丈夫だなー…てか普通は今ので眠ってても、いーくらいなんだけどな」

正人は、サーベルを回している。

ヒュンヒュンと音を立てて。

「お前の力(能力)か」

和也の言葉に正人は赤い目を細めて、笑って見せた。

「まだまだ…楽しもうぜ…和也ァ」


目の前のクラスメートは笑い合う存在では無くなっていた。

赤い眼は狂気を示し、狂喜に溺れる。

VSクラスメート ‐完‐

えー…はい、『VSクラスメート』でした。

大分遅くなりましたが、話が長くなりすぎたので2つに分けて調節している間にこんなに時間が…

新しい別の話作ったり、部活だったりで、忙しいもんですね学生。ええ。

マジニートになりたいです。

ひきこもりてぇ!

と思う最近でございます。

今も修行中のトーシロの自覚ありますので、感想が有れば非常にうれしいですが、アドバイスとかアドバイスとか頂きたく存じ上げます。

「もぉお手上げだよヘタクソが・・・」という方も見捨てずにお願い致しますm(_ _"m)

それでは、また次で逢いましょう。

ありがとうございました。





5/26 本文の変更を行いました。

入れ忘れていた文章が在ったことに気づき、慌てて入れさせていただきました。

ご迷惑をおかけします。

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