第68話
若干修正。
「ん?」
くいくいと袖を引かれたので見てみると、今命名された四人が俺の袖を握っていた。
ウチら本当にこの名前で確定なん?
どう考えてもそう言っていた。眼で。
付けられた名前に不満はあるが、敬愛するウーロボロス様の付けた名前に文句は言いにくい。そう物語るかのような悲痛な目である。
「あー。ウル?」
「んー?」
いくらなんでもこの名前は安直過ぎると俺も思うので少し助け舟を出してみることにする。
振り返ったウルの笑顔が眩しい。
「その、いい名前ではあるがな。もっと色々……そう、他に候補とかなかったか?」
「あったよー!!」
その言葉をウルが言った瞬間、四人の顔が輝いたのがなんとなく分かった。
「そ、そうか! じゃあそれも教えてくれないか?」
「んふー。聞きたい?」
「ああ」
「仕方ないですねー。教えてあげるですよー! まずアカちゃん!」
「は、はいっす」
呼ばれた赤髪が返事をする。その際、掴まれた袖がギュッと強く握られた。
「貴様がリュウ子」
「は、え?」
「次にアオちゃん! 貴様がタツ子!」
「あ、あらあら?」
「それでミドちゃんがドラ子」
「ほあー?」
「最後にチャーちゃんが小龍」
「……かっこいい」
……ほとんど同じじゃないか。
どう? どう? と聞いてくるウル。
尋常じゃない命名センス。数千年は生きている筈なのに発想がまるで子供だ。
「ウル」
「今の名前……名前? とさっきの名前で迷ったのか?」
「? うん」
「俺もさっきの名前の方がいいと思うな。うん」
「えへへー。やっぱりー」
こうして彼女らの名前は決まった。
初めの名に再決定した時、安心したように袖を離したので四人もこれでいいと思ったのだろう。一先ず一段落だ。
「……そっちでもいい」
「あっ! 自分の名前だけカッコいいからって!! だめっすよ! だめだめ!! うちらはアカ、アオ、ミド、チャで決定っす! けってーい!!」
「……残念」
「あらあら」
「ほあー」
……ひと段落だ。
それにしても……と周りを見渡して思う。
独りで始めた復讐なのに、いつの間にか周りに多くの人がいる。
復讐なんて孤独にやるものだと思っていたのに、厳しいものだと思っていたのに、俺は今こうして大勢と笑いあっている。
奴と再会できた。次の目標も決まった。その時は着実に迫ってきている。
焼ける様な強い気持ちが消えないまま、俺は笑えている。
まだ礼は言わない。
言うのは復讐を果たした時にしよう。そう決めた。
少しずつ夜は更けていく。
そうしたら朝が来るだろう。
一日程度睡眠を抜かしても、龍にとって何ら問題にはならない筈だ。
たまには朝が来るまで語り明かしてもいいかもしれない。
ここにいる龍達のことを色々と知りたい。そう思ったから。
明日になればもうここには居ない。
新しい街に行き、また新しい街に行き、渡るように種を蒔いていく。
辛くは無いかもしれないが地道な道のりになると思う。
全員が着いてきてくれる。
全員が一緒にいる。
何も夜通し話す必要なんか無いだろう。
明日だって、明後日だって、語り合える。
それでも。
今みんなと話をしたい。そう思ったから。
次話あたりから、多分、おそらく、場面が移ると思います。
上手く書ければ、ですが。