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龍は死してなお死なず  作者: とんかつ
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第66話

四頭の名前が決まらない思いつかない。

名付けは苦手です。

誰か考えてくれませんか?

更新。

「誰って、そりゃないっすよぉ兄やん! ウチら兄やんの眷属になったばかりなのに」


ひどいっすと頬を膨らませる少女。分かってはいたが、彼女達はあの四頭の龍らしい。だが記憶の限りでは彼女らは人化出来なかったはずなのだが。


「いや、なんか急に出来るようになったンすよ。ほんと。なんか急にビビビっと、あ、出来るなって思って、それでやってみたら出来たンすよ」


「恐らくだけど、あんたの遺伝子情報を読みとったのでしょうね。あんたの中にある、ヒトの形。それが基本骨子となって彼女らにこの形を取らせた。まあそれぞれ特徴が出ているみたいだけど」


指をピンと立てて説明する少女。それを補足するように同じくメアも指を立てる。

その言葉にハッとなる。


目元が、妹にそっくりなのだ。


慌てて他の三頭も見る。

口元、鼻、体格や雰囲気。それぞれがどことなく、妹に似ていた。


「ミーシャ……」


涙が零れたのが分かった。

初めて、自分の意思で妹の名を呼んだ。


「おおお!? 兄やん!?どうしたンすか!?」


「ちょっとあんた、いきなりなんなのよ!」


「はわわ。アレクさん」


「どうしたの? どこか痛いの?」


赤髪の少女、メア、ルサルカが突然のことに驚き、ヴィーラが心配そうに駆け寄って俺の膝に手を置いてくる。

他の三頭も口にはしないが、心配そうにこちらを見ている。


「い、いや、なんでもないよ。大丈夫」


そう言って笑いかけたが、本当は大丈夫じゃない。

メアは、俺の中の遺伝子情報を読みとったのだろうと言った。

記憶ではなく。遺伝子情報だと。

俺の中には、父と母の遺伝子が流れている。俺や、妹に似るのも理解出来る。

普通はそう考える筈だ。

だけど、俺の中にはもっと強い確信があった。


あの日。あの雨の日。俺は妹に、助けられた。文字通り、命を懸けて。


妹が生きている可能性があるなんて小声で謳ってはいたが、本当は分かっていた。

あの時、俺は致命傷で、妹も致命傷で……そして妹は、俺の手を握って、生きて欲しいと笑った。一緒に生きたいではなく、俺だけは、生きて欲しいと笑ったのだ。


妹が魔力を媒介にした治癒術と編み出そうとしていたのは知っていた。

元来ある回復力の向上ではない、別視点からの魔力による、健康だった状態への強制再生。回復量に比べると多すぎる消費魔力。まだ完成していなかった術。


あの日。妹はそれを俺に使ったのだ。

考えないようにしていたのかもしれない。妹が居ない理由。服だけが残った理由。そして何より眼を逸らしていた、目が覚めてから明らかに上昇していた俺の魔力量。

妹は俺が殺したのかもしれないという事実。


俺は悔いるべきなのだろう。俺のせいで妹が死んだのだ。俺のために妹が死んだのだ。

それを今、自分は確信したのだから。


「本当に? 大丈夫? どこか痛いの?」


笑った俺に、それでも心配そうにヴィーラが見てくる。いつの間にか、彼女の手は俺の手を握っていた。


「違うよ。違う。本当に、大丈夫なんだ」


また涙が零れる。嘘ではない。

俺が流している涙は痛みや悲しみ、後悔といった負の感情から来るものではなかった。

無いと言ったら嘘になる。負の感情は確かにある。

それ以上に、俺の中は歓喜で溢れていた。


俺のせいで妹が死んだ。俺のために妹が死んだ。妹が命を懸けるほど、俺は妹にとって大切な存在だった。


胸に手を当てる。自覚して改めて分かる。妹の魔力。

目の前にいる、良く見れば妹に似ている少女達。


『ミーシャは俺の中で、確かに生きている』


思い出の中でなどという陳腐な言葉では無い。確かに今、自分の中に妹を感じる。

まるで妹と一つになったような一体感。苦しいほどの幸福感。欠けたピースが埋まった様な充足感。


俺の中で、妹が笑った様な気がした。


妹生存ルートにさよなら

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