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龍は死してなお死なず  作者: とんかつ
35/69

第35話

少し短いですが更新。

台詞が多いと楽に感じてしまうのは、自分がまだまだ未熟な証拠ですかね

「は、え、ちょ、ええええええ!!!??? ちょ、お母さん何言ってんの!?」


少女が驚愕の声をあげる。当然だ。母親が目の前でとんでもない発言をしたのだ。

むしろこうならない方が不自然とも言えるだろう。自分はと言えば気まずさというかそんな感じで身動き一つとれない。


「ふむ。なに、とは?」


対するエキドナさんは平常運転だ。自分がどんな発言をしたのか分かっていないのだろうか……いや、分かっていてこうなのだろう。実に堂々としている。


「なにって……その……は、は、発散ってつまり……そそそそそういう事をするってことよね!?」


「? 当然であろう? まぐわわずして発散など出来まい」


「まぐわっ!? なな、何言ってんの何言ってんの何言ってんの!? 正気に戻って!! いくら強くたって人間なのよ!?こんな、こんな人間となんて……!」


「人間? なにを言っておる。少年は人間ではないぞ?」


「は? 何言って……ッ!!」


エキドナさんと口論していた少女はこちらを見て来て、そして驚愕に目を開いた。

俺が龍に分類されるという事に気が付いたのだろうか? パッと見は人間以外の何者でもない筈だが……見極め方なんてものでもあるのかな。


「ほん……とだ……。なに……こいつ……。人間? 龍? 存在が……濃くて……薄い……なにこれ?」


すると少女がポツリポツリとそう言った。

……存在が濃くて薄い? どういうことだろうか。


「ほれ、分かったじゃろう?こ奴は龍じゃよ。龍ならば……何も問題はあるまい?」


そう言ってエキドナさんが身を寄せてくる。少し頬を染めて、まるで少女のようにすり寄ってくる。脳が融けるのではないかというほどの甘い香り。思考は中断され緊張が瞬時に身を包む。

人生の中で、母親と妹以外にこれほどまで近くに女性がいた経験などない。

とにかくこれはマズイ。何がマズイってマズイ。離れてもらわないとっ。


「あの、あの、あの!」


「ん? どうした少年? 金魚の真似か?」


まいった。口がうまく回らない。というか空気が足りない。


「あっちょ!! なにしてんのよ!! 離れて! 離れてー!!」


ブツブツと言っていた少女が我に返ったのか、慌てて俺とエキドナさんの間に入ってくる。

た、助かった。


「はあはあ。もう! お母さん! そういうの禁止!! 女なんだからもっと慎みをもってよね!!」


「いや、そうは言ってものメア……余はもう何千年と生きておるし……ようやく見付けたつがい候補なんじゃぞ? いい加減余もそういうことしてみたいのじゃよ」


「そ、れ、で、も! 私たちにとって親はお母さんだけなの!! お母さんだけでいいの!!」


困った顔のエキドナさんに少女が説教する。あのエキドナさんがこんな顔をするなんて……なんか意外だ。珍しいものを見た気がする。


それにしても、メアというのがあの少女の名前なのだろうか。

メア……聞いたこともない名だ。今まで一度も歴史には登場してこなかったのか。


エキドナさんやウル、ラドンなど有名な龍ばかりが住んでいるこの洞窟の、しかも下から二番目に住んでいるのがこんな少女だったなんて、意外だ。

と、説教が終わったのか、少女、メアがこちらを向く。どうやら怒りは鳴りを潜めたらしい。


「あんたも。いい? お母さんが何言ってきても相手にしないでよ? 私はまだあんたを認めていないんだからね」


それだけ言うと、彼女は階段を下りて行った。

それを見送っているといつの間にか近くにいたエキドナさんが、俺の肩に手を置いてメアを見ながら言う。


「ふむ、愛い奴じゃな。それはそうと、ここまで戻って来れたという事は……もうそろそろ行くのじゃろう? その前に家に戻って少し、休憩でもしていかぬか?」


先ほどまでのやり取りが無かったかのように振る舞うエキドナさんも、それだけ言って階段を下りて行った。冗談だったのだろうか。


エキドナさんが最後に言った言葉を反芻する。

確かに……今は少し浮かれていたが、準備が出来たのだ。

いなくなったエキドナさんの言葉に頷いて、俺は後を追った。


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