第34話
昨日は誕生日でした。
しかもお気に入り100件突破日。ありがとうございます!
ネタ帳なくしたり(黒歴史なので誰かに見つかると……)と最近は良いことがありませんが、どうにか更新は頑張っていきたいと思います。
人魚の少女の名前とか、ネタ帳に書いていたので分からなくなってしまいました。また考えたいと思います。
バットエンド、超バットエンド、ハッピーエンドとパターンも考えていたのですが……どうしよう。とにかくネタ帳の早期発見に尽力いたします。
「あ……え、お母、さん?」
「うむ? 当たり前じゃろう?」
何を言っておるのだと言いたげな表情で階段を上ってきたのは、件のエキドナさんだった。
その顔を見て安心したのか、ほっと一息吐く少女。集束された魔力も吐息に吹き飛ばされるように四散する。
「それで? どうしたというのじゃ、大声なんか出して。」
ここにいなかったのだから何もわからない。エキドナさんの当然とも言える質問に、少女が気まずそうな顔をする。
「いや、この男がさ……母さんを……」
「ふむ。余を?」
あー。うー。と勘違いして殺そうとしていたのだからそれも仕方ないことではあるが、言いにくそうな様子。エキドナさん、躾には厳しそうだしな。勘違いで殺そうとしましたなんて言ったら多分タダじゃ済まないだろう。
「あ!!」
すると突然、少女が大きな声を上げた。先ほどとは取って代えたような、良い事閃いた! のテンプレートのような表情さえ浮かべている。
「そう、じゃなくて、お母さん! この男! 覗きなのよ!!」
ビッと指を指してくる。止めてください。
「ほう。覗き!」
気のせいだろうか、キラっとエキドナさんの目が光った気がする。
「そうなの! あたしが水から出たらね! あいつがいたのよ!! ずっと! ずーっと覗いてたんだって!! 信じられない!!」
「ちょっ」
否定できない。あながち間違ってないというか、まんま、その通りなのだ。
覗く気はなくとも、その裸体をばっちり見てしまったのだから言い逃れも出来ない。
いくら人が来ないからって裸でいる自分が悪いんだろと一瞬思ったが、女性陣の非難が怖いので何も言わない。言えない。
こういう時、男に立場はないんだよと父さんの嘆き声が聞こえた気がする。
エキドナさんの登場で事態は解決に向かったかと思いきや、何やら雲行きが怪しくなってきた。
「そなた、覗いたのか?」
エキドナさんが聞いてくる。
「あの、見るつもりはなくて、たまたまここに来たら居たっていうか……」
「ふむ。つまり事故だと言いたいのじゃな? ならばずっと見てなんかないと?」
「い、いや、それは……見てたっていうか見入ってたというか……あんまり綺麗なものだから……つい……」
「んなッ!! や、や、や、っほら!! 聞いたお母さん!? そういうことでね! こいつをやっつけようとしてたの!!」
怒りか羞恥か、俺の言葉に一瞬で真っ赤になったが、ここを勝機ととっているのかそこには触れてこない。少しだけ涙を浮かべながら、只管にエキドナさんに自分の正当性を説明している。
「ふむ。なるほどの」
「そうなの! 分かってくれた?」
「うむ」
納得がいったという表情を浮かべつつエキドナさんがこちらを見てくる。
勘違いで……という問題は綺麗に上書きされたようだ。エキドナさんの中では、この少女の勘違いで俺を殺そうとしたのではなく、俺が覗きをしたからこの少女は俺を殺そうとしたと、そうなっているだろう。いや、どちらも正しいのではあるが。
覗きをした男、被害者の少女、そして被害者の母親に、自白によって証明された覗きの事実。
……万事休すである。これでもか、というほどの詰みだ。
ここが王都ならもがれるかもしれない。ナニをとは言わない。
「ふむ、それではそなた、この子に謝りなさい」
「え?」
俺に対してエキドナさんが言った言葉に、少女が疑問の声をあげる。
顔を向けると何が言いたいのか良く分かった。それだけ? といった表情だ。
「ごめんなさい」
「え? あ、はい」
俺もそれだけ? とは思ったが少女に謝罪を入れる。
すると少女も戸惑った様子でそれを受け入れた。明らかに釈然としないといった顔をしているが。
「うむ。これで良い。時にそなた」
「? あ、はい」
「女の体に興味があるのか?」
「……」
それを聞かれると非常に困る。復讐を誓った身ではあるが、女性と言う存在に全く興味がないというわけではないのだ。
「あるのじゃな?」
「……」
何も言えずに黙っていると、エキドナさんはうむっ! と大きく頷いた。
沈黙が答えとは良く言ったものだと思います。
「それでは次からは余に言うが良い」
「はい?」
エキドナさんの体が光り、蛇の様な下半身が人間のそれに変わる。人化だ。
「ちょ、お母さん! な、なに言って……なにしてるのよ!!」
少女が焦ったような声をあげる。当然だろう。かく言う自分も、事態にいまいちついて行けていないのだが。
「次にそう言った欲求がきたのなら、余が発散させてやろう」
「は?」
「は?」
「うぬ?」
そしてエキドナさんが、かつてないほどの爆弾を投下したのだった。