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龍は死してなお死なず  作者: とんかつ
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第14話

遅くなりましたが再開します。実はここまでの話だけでラノベ一冊分くらいはかけると思います。あれ、ラノベって普通何万字くらいなんだろう。

夢を見ている。

すぐに夢を見ているとわかるような夢。

明晰夢とかいっただろうか。

そこには両親がいて、妹がいる。


4人掛けのテーブルに少しのスープと肉。

それは殺風景で、けして裕福とは言えない家庭。


しかしそこには、確かな笑顔がある。


「……ん。……さん。兄さんってば! もう! 聞いてるの!?」


声に反応して隣を見ると、頬を膨らまして私怒ってます! と言わんばかりの妹がいる。可愛い。

気が付けば俺は食卓についていた。


「あ、ああ。聞いてるよ。それで、なんだっけ?」


「もう! 聞いてないじゃない! あのね? 私、雪が好きでしょ? でも今の時期は降らないでしょ? それでね。 私調べたんだ! 北にはね、一年中雪が降る場所があるんだって! 寒いと雨が雪になるんだって!」


興奮したように腕をブンブンと振るう。可愛いが、食事中だぞって思ったら母さんに叱られた。シュンとしている。可愛い


「それでね。 水と、火! この属性を組み合わせてね。 氷の魔法を造ってみたんだ。 火が隠し味なんだよ! それでね。ちょっと試してみたいんだ。ご飯食べたら森に行こう?」


少し不安そうな顔でこっちを見ている。妹の方が背が低く、下から見上げている状態だ。可愛い。あ、鼻血。


「いいよ。食べたら行こう」


そう言うと嬉しそうに笑う。やったぁえへへーとか言ってる。可愛い。もう待ちきれない! って感じだ。よし。


「ご馳走様。それじゃ、行こうか。」


「……え? 待って待って! まだ食べ終わってないよ!」


あわわわわと慌てて食べる姿がまた可愛い。この姿を見るために急いで食べたと言っても過言ではないのだ。


「ご、ご馳走様! お父さんお母さん、行ってきまーす」


気をつけてなー。行ってらっしゃーい。と、慌てて俺に駆け寄る妹の背に声がかかった。


「それで、森に着いた訳だけど」


家から出て魔物除けの結界から出ると森だ。

というか庭みたいなところをでるとすぐ森だ。

むしろ森の中に家がある。


「うん。それじゃあ見ててね!」


そう言って右腕を森に向ける。そのまま人差し指を立て、水を司る三角を描く。

空中魔法陣。指先に魔力を込め宙に描くことによって、魔力を空中に残留させる。特殊な発動形態。

……これは……


「出来た。どうかな? 六星魔法陣って呼ぼうと思うんだけど」


「……凄いよ」


円の中に三角と逆三角。丸と、三角が二つ。

たったそれだけなのに、背筋が凍り付くほどに完成された魔法陣。


「ふふふー。お兄ちゃんもやってみる?」


お兄ちゃん。どうやらかなり機嫌が良いらしい。自身の魔法を解きながら、若干幼児退行したように言ってくる姿に思わず鼻を抑える。

左手で鼻を抑えつつ、右手で魔法陣を描く。が、上手くいかない。


簡単に見えて、かなり高度なものらしい。

水を司るといわれる三角に、火を司るといわれる円が馴染まない。

そうじゃないよーと言って俺の手を持ってくる。

頭がくらくらしてきた。


「ん。いい感じ! よーし! それじゃ、やっちゃうよー」


そう言って、完成した六星魔法陣に魔力を込める。

瞬間。世界が凍結した。


「……え?」


「……え?」


雷の如き速さで放たれた魔法は、木に当たった瞬間に貫通し更に拡散。視界に映るもの全てを凍らせたのだ。


「あ、は、は……やり過ぎちゃった?」


「……」


頷きだけで返す。とんでもない魔法が出来てしまった。

恐らく大軍殲滅魔法並みの威力があるだろうソレを見て、寒いのに汗が流れる。


「ふっ封印。これは封印!!」


「と、とりあえず……帰ろっか」


あわあわしながら叫ぶ妹に言う。帰ったら怒られるんだろうなー。寒いし。

なんか雪とかそんな感じじゃないし。


……帰ったら怒られた。何故か俺まで。

妹はえぐえぐ言って泣いてる。可愛いけど。



次の日外を見ると、一面雪景色だった。

昨日あんなに泣いていたのに、妹は嬉しそうに外に走っていった。


ついて行くと、足跡の無い雪の絨毯にうわーいって言いながら顔からダイブする妹。超可愛い。


しかし何で雪が積もったのだろうか。

そう思い辺りを見ると、未だに凍ったままの木が目に映った。

一日以上効果の持続する魔法は特に難度が高い。ハズだったんだけどな……


結果として、一年を通して一番暑いと言われる時期に、一年を通して一番寒い時期に降る雪が、3日間降り続いたのだった。


当然ながらその間は森の中で狩りができず、なんとか家にある食料で食いつないだのだが……妹に再び雷が落ちたのは蛇足だと言えるだろうか。


「んー何であんな感じになったんだろー。何がいけなかったのかなー?」


雪も溶けた日の夕食で、妹が首を傾げる。自信作だったらしい。

確かに雪を降らせる魔法としては失敗だろう。だけど。


「分からない。だけどあの魔法はきっと、いつか、未来の為に出来たんじゃないかな?」


「どういうこと?」


「あの魔法。とんでもない威力があるけど、氷だろ? 例えば……山火事とかさ、魔物に教われた時とかさ」


少し落ち込む妹に笑いかける。


「そういった時なら、あの魔法はとんでもない威力を発揮するよ。どんな魔法にも、使い時ってものがあると思うんだ。雪が降る魔法は出来なかったけど、結果として雪は降ったし、失敗ではないと思う」


唇を舐め、続ける。


「あの魔法はきっと、もっと大事な時に使うことができるよ。雪の魔法はまた今度考えよう。兄ちゃんも手伝うからさ」


ポンと頭に手を乗せ、そのままわしゃわしゃと頭を撫ぜる。

あうあうと声を漏らすが決して嫌そうな顔はしない。妹は甘えん坊さんなのだ。


それからも魔法の研究は続いた。火、水、風、土、四大元素を組み合わせ、補助魔法文字を加え、何度も方陣を描く。火と水を基とすること自体は間違っていない筈だ。問題は、そこにどんな補助魔法文字を加えるか、何の四大元素を乗せるかだ。


父さんが買ってくれた魔術書を開き、妹とあーでもないこうでもないと試行錯誤することは、楽しかった。しかし楽しい時間は終わるものだ。だからこそ楽しいのかもしれない。


ついに、雪を降らせる魔法は完成しなかった。


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