第11話
龍の生態は未だに解明されていない。
個体数の少なさとその強さ故に、研究が碌に進んでいない現状。
龍、竜、ドラゴン、様々な呼び名を持つその存在は、時に畏怖の対象として、時に信仰の対象として長い間君臨し続けている。
これらの存在に共通することは、爬虫類のような体躯とそして、単純に強いということだ。
少なくとも、これらの討伐ランクがC以下になるという事はありえない。
十分に経験を積み、万全の準備を終えた五人パーティが、漸く討伐できる存在。それがリュウなのだ。
弱点が確立されているギーブルでさえCランクである。
そして、飛龍ワイバーン。
鰐のように鋭く大きな牙、刃の様で強力な毒性を持つ棘のある尾。前脚は翼と同化しており、強靭な後脚のみで立つ大型の龍種。
翼竜ヴィーヴルが、気の遠くなるような永い年月をかけて成長したと言われる姿だが、その強さはヴィーヴルとは比べものにならない。
討伐ランクは限りなくAに近いB。
災害種とも呼ばれ、発見次第国に報告。同時に百人を超える討伐隊が結成されるという怪物である。
その怪物が、今、目の前にいる。
ウーロボロスよりも遥かに格下の存在。それなのに……敵意を向けられるだけで、こんなにも……怖い……
「……あ……っ!」
声が出ない。これで何度目の恐怖だろうか……
目の前の圧倒的存在感。自分がとんでもなく矮小な存在に思えてくる。
見上げるほどの体躯にはこちらに対する敵意がありありと見てとれる。
「GRRRRRRR」
ワイバーンが喉を鳴らす。
怖い……怖い。
これが……恐怖に飲まれるという状態なのだろうか。
体が硬直して少しも動かない。ワイバーンから目を離せない。息をするのが辛い。
「GYAAAAAAA!!!!」
咆哮を上げる。
「ひっ!」
悲鳴が上がる。
ワイバーンの口元から火が漏れる。
飛龍、または火龍とも言われるワイバーンの真骨頂。
一度放てば森を焼き、三度放てば街すら落とす、ワイバーンが災害種に指定される原因となる炎が放たれようとしていた。
「ッ!!」
……避けたのは偶然だった。
ガクガクと震える脚を無理やり動かそうとした結果、もつれて倒れた。
自分の頭があった場所を、今まで感じたことのないほどの熱が通過していく。
熱い。当たってもいないのにそう感じるほど強力な炎は、まるで道を走るように頭上を疾走していく。それを現実じゃないような思いで見つめる。
自分と周りの温度はどんどん上昇していき、それに反して、自分の中の何かが冷めて行くような感覚。
勝てない。一目見た時から感じていたそれが確信に変わる。
これが災害種。
……そこからは一方的な展開だった。
俺にはもう、攻撃するという意思すら残ってない。
攻撃という選択肢すら頭に無く、ただひたすら逃げ惑うだけだった。
「があああぁぁぁぁぁあっ!!!!」
どれくらいの時間が経っただろうか……
周りの地形すら変わり、火の海が出来あがった頃。
遂にワイバーンの牙が、俺の左腕を食いちぎった。