第1話
1話と2話はのちのち書き直します。
序盤の描写と展開はわざとです。ちょっとだけ我慢をお願いします。
14、15話あたりから安定してくるかと思われます。
俺には何もない。
頭が良いわけでもない。
運動が出来るわけでもない。
魔法が上手いわけでもない。
当然のように、夢なんてものも持っていない。
もしかしたら生きる理由すらないのかもしれない。
ただ、死ぬ理由もないから、毎日を漫然と生きているだけだ。
きっと、このまま何もないまま生きて、何もなく死んで行くのだろう。
物語にでてくる村人のように。
特別でありたいと願いながら、特別じゃない自分の存在をなにより自分が一番よく分かっていて。
こんなはずじゃなかったのにな。なんてつぶやきながら。
……俺には出来た妹がいる。この女性優位な世界に似つかわしいほど多量の魔力を内に秘めた妹が。死んだ両親と同じ病気に罹った人を救いたいなんて言う、優しい妹が。「兄さん大好き」なんて言って自分を慕ってくれる可愛い妹が。
彼女は違う。何もない俺なんかとは違う。そこらにいる有象無象の輩とも違う。正しく、物語の主人公になれる器を持っている。世界に二人だけしかいない、俺の大事な家族だ。
理解っている。俺は主人公にはなれない。何も持っていない人間を主人公にしてくれるほど、この世界は優しくない。黒楼や紅蓮のような、才が溢れる人間にのみ、世界は微笑むのだ。
それでも構わない。なりたいと、子供心に感じた主人公になんてなれなくても。俺は妹のためになら、生きることが出来る。
妹の助力になることを生きる理由にしてもいいのなら。
俺の望むすべてを持っている愛すべき妹のために、この薄っぺらな人生を捧げることで、俺の命が、価値あるものになるのなら。




