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人間の精神

17歳の俺らは、はっはっ、白々しい。俺らは何者で、何者になろうと、くっくっ定義されへん。団塊の世代、新人類、仮にこのような、ふっふっ名称が10年後、名乗れるなら、俺たちは、自分達で、メディアにこう言おう。

『ああ、俺たちは、援助交際世代ですよ!』

ねえ聞いてますかって。死語になりそうなセンス、いやあ、誇りにしよう。仮にも、親世代のマスコミ人間から、さんざんやられているじゃないか。今、現在も。第二次世界大戦中の誇大広告みたいな洗脳を!

『今の女子高生は、普通の子が、援助交際をしている。』

やあ、親友たち!この言葉は、2、3年で消えるやろう。だが俺は背おっていくで、この2、3年を高校生で過ごした人間として。ねえ、俺は感じたんや、崩れる人間の嫌悪感を。報道人ぶった奴らが、同級生の女子を売春婦にする瞬間を。絶対、忘れへんから。ああ、大声の二枚舌め。

マスコミのトリックは、こうだ。援助交際と言われる恋愛が最近多い、最初はこう始まった。女子高生が、年上の男性と付き合い時々こずかいをもらうということ。こういう言葉がいつの間にか、普通の女子高生が、売春をしているという報道へ変わったのだ。これは、一切、援助交際という言葉と関係ない。そして、何度も『ごく普通の』と繰り返し、セックスし、金をもらうのが、援助交際というのです。と何度も言うのだ。俺は思うのだ。そんなことは、あんたら、マスコミが言ったことだ。そして、普通の女子高生がやるのは、年上の愛する男性からこずかいをもらうことであり。売春は、普通の女子高生はやらないし、やるのは、頭のいかれた女子高生だ。

しかも、前者の援助交際をやるのですら、『ごく一部の普通の女子高生』だ。くそ、馬鹿やろう。ああ、さらに悪態をつこう。


ああ、僕は聞いたんだ。売春という犯罪行為を、合法行為だと言いはって、道徳へ持ち込む、その音を!あのスカポンタンの薄ら馬鹿のマスコミ野郎が、戦時中の洗脳なみに、団塊世代の社会の犬に、福沢諭目漱石持ち出して、町中歩きまわらせたんや!そして同級同志を、オッサンの前で膝まづかせたんや。ええ、ええ、俺は今、こう思ってるんや。性を売り物にしてというが、女子高生は性を売りものにできない。売ったのは、マスコミで。買ったのは、性的に目覚めたばかりの無一文の女子高生と、チンカスみたいなくそおやじに違いない、






『お前17歳、まだ17歳か。17歳は、人間の精神がとがっている唯一で最後らしいで。』

と先輩が言った。俺は取り敢えず、

『まじっすか、まじっすか。』

と2回相槌を打ち、午前10時、駅前ロータリーで気を付けや。この先輩は、意味不明なことをよく言う。変化な奴で、説明不足や。先輩は俺を見上げ、

『ほんま、お前でかいのお。また、伸びたんちゃうんか。』

と言い。すぐさま、俺は、

『いやあ、去年でもう身長止まったんですよ。』

と微笑した。そう俺の身長は止まったんや。

成長するなんてことは、病気みたいなもんや。180センチを超えても、どんどんと伸びる身長は、俺を不安定にさせる。ヒゲは日々濃くなり、陰毛やワキ毛が植物のように存在する。俺の中で、自分自身と折り合いをつけることほど憂鬱なことはないのだ。


身長が止まったという事実は、俺の身体的完成を意味している。そのことは、まったく肉体的に感じられたんだ。自分のなかにあった黒板色の重い気体がうようよ動き回る、あの不愉快な陰気さ。特に中学生の時に感じた、動物の排泄的成長なんかは、俺が一番嫌ったものであった。あれはもうなくなったんや。


俺はもう餓鬼じゃない。俺は、生まれてきてから17年間、肉体的に成長させられてきた。俺自身が、俺の許可もとらずに。もう、当分は、そんな自己矛盾に落ちいらない。俺は後10年は、肉体的な老いも感じず、自分自身を自身で制御できるのだから。俺は、もう大人といわれるだろう。もう俺の中のうようよした精神はなくなったのだから。


俺は、成長が止まって、随分たった先輩をうらやましげに見下ろしながら、

『先輩は、自由そうで、いいっすよねー。』

と言った。先輩はフリーターの代表者みたく、

『何も変わらんってのも、これはこれで退屈な日々やで。』

と大あくびをして、唇をなめた。


小さな駅のロータリーに白髪の腐ったバスが停車し、ネズミ色のブラジリアンを吸収していく。郊外の工場で働く奴らの目は疲れ果て、肌は、薄黒く、血色は悪い。腐った毎日、きつく単純な流れ作業、生まれた場所による不平等。高校生の俺にも分かるで。いったいもって、分からへんのは、奴らを支える健全な精神とは何か?


よっぼどブラジルが地獄なのか?


よっぽど帰れば、日本円でいい暮らしができるのか?


よっぽどブラジルの女性が美人なのか?


確かにブラジルの女性は美人ばかりだ。だが、異国の地で人生をかけるほどのものなのかしらん。俺はバスに乗ったブラジル人と目があった。俺は、目を離さなかった。俺は、あのブラジル人のことは、何一つ知らない。あのブラジル人も我々日本人と同じように、美人の彼女と結婚したいという、くだらない理由のために、やりたくない仕事をしたり。友人より、大きな家に住みたいという、つまらない見栄の為に、道徳を裏切ったり。家族を守るという、どうでもいい言い訳の為に戦争を支持するのか。


俺は、外国人労働者を乗せたバスが、出発するのを見て、うっすら考えている。ああ、そして、奴らの目には、日本語のテレビニュースが、でっち上げた、きれやすい17歳の少年A が、映っているのだ。はっはっ人間の脳は、まったくの不良品だ。


『何で、今の少年はきれやすいのでしょう。』

『いや、てすね。一つには、食生活がですね。えー欧米型にですね。移行してですね。ね。ビタミンがですね。ね。あのですね。ね。足りなくなくてですね。ね。ねずみこぞう。』

って言われる俺は、17才だ。親が子をバカにすればきれる。そんなことすらわからん薄らバカを見ると、ますます俺はきれるのだ。


俺の前に、20人乗りのワゴンが停止した。俺と先輩が乗り込んだ。ワゴンが、サービスエリアまで、ノンストップで走り続ける。駅とバイト先を往復する定期便が、なぜあるのかというと、それは、エリア内まで交通手段がないからだ。竜のように日本を縦断する高速道路、それは公共事業だ。そこに独自の日本国が存在する。エリア内は有料であり、特殊な治安維持体制がある。俺は、このバスに乗る時、まったく別の国へ行く気になるのだ。まるで、俺は、日本人でありながら外国人労働者のようだ。あのブラジル人みたいに!俺が、このバイトが好きなのも、この空気のために違いない。長くやるには少ししんどいのだが。


サービスエリアに一般の企業は参入できない。もう、サービス業で独占体制を占めているのはここだけだろう。数キロメーターごとにあるエリア内では、高めの価格設定で利益を確保している。長年勤めるアルバイト社員A 氏の証言によると。毎日、毎日、日本中を走りまわるトラック運転手にとって、エリア内での、まずくて高いレストランは、生命に関わる問題らしいのだ。運転手の間ではレストランの格付けが存在し、私が働くレストランは、ましな店で有名らしいのだ。24時間、千円もする『けんちん定食』や

『日替定食』が飛ぶように売れる。


このワゴン車の中に俺の他に高校生が、もう一人いて、そいつはたこ焼きを売っている。この夏休みの暑い時期に!なんだって売れるんだエリア内の観光客には!信じられない、おまんじゅうの詰め合わせ64個入りさえ。びっくりするほど人がいるのだから。


たこ焼き売りの少年は、夏休みで25万稼ぐらしい。同時期に、始めた友人と半分ずつ入る予定だったが、友人は、遊ぶことに夢中て、その少年は、すべての仕事を一人でしなくてはいけない。


俺と少年と先輩は、ワゴン車を降り、巨大なショッピングモールの裏口から、ロッカー室へ入る。重い防火用の扉を明け、油にまみれた廊下を歩みながら、泣き笑いの表情で、

『ああ、夏休みが、終われば給料の20万円で何をしよう。受験勉強が始めるまでの半年間、それは、すぐ終わるのだから。そしたら、また、社会から逃げるために、勉強し、大学に行かなくてはいけない。』と思い、表情を戻しながら、厨房室へあいさつをし、タイムカードを押す。


洗い場を見ると、ベルトコンベア式の食器洗い機の前で、お婆ちゃんが作業している。ベルトコンベアーは全長15メートルもあり、水洗い、煮沸、消毒等をかなり、ハイスビードで処理していく。かなりの優れ物だ。俺は思わず、ほほえましく笑っている。それは、洗浄機がお盆から、皿まで、すごい勢いでくってしまう為、腰のひん曲がったお婆ちゃんは、ついていけない。まるで、機械を使っているのではなく、使われている。俺は、婆ちゃんがあまりにかわいらしいので手伝ってやる。


残飯を、米、おかず、汁に分けて処理し、皿を、カレー皿、小皿、うどん皿、おかず皿と分ける。15分もすると、洗い場はどんどん綺麗になる。俺は、この仕事が嫌いじゃない。お婆ちゃんの周りに、食器があふれかえった時や、食事休憩に入る時、公休日などは、俺が代わりに入ってやるんだ。一番下端の俺がやるのは、当然やし、フロアを歩きすぎると疲れるというのもあるのだ。


残飯処理係は、愉快な仕事だ。そもそも、昔は、好きな男に食事をするのを見せたくないという女の人が多かった。これは、どうやら食事が生理的欲求だかららしい。今でも、どこかの民族は、食事を見られることは、排泄しているのを見られるのと同じと感じるらしい。


確かに、残して帰ってきた、魚やキャベツ、米をみていると、それが、消化しきれず排泄された物と同じ概念を持っていると感じるのだ。例えば100、200という残飯を、午前12時から回しっぱなしの、厄介なベルトコンベアーの音と、しっかりMIX された、3種の巨大バケツの前で、汗だくになり、さわやかな刺激臭がこびりついた時、消化しきれず排出されるうんこ。消化される前に残された残飯。もしかしたら、消化されていたかもしれない残飯。あれらは同じものだ。料理を持っていく時は、完全な食事で千円分の価値を含んでいるのに、あの食いちらかした後のおぼんは、その人間の生理的欲求の恥ずべき魂なのだ。そこに、人間的欠陥が見える。


俺は、さげられた食器の残飯を、力いっぱい、青の巨大バケツに、叩きつけながら。人間的欠陥と生理的欠陥と資本主義的欠陥に、罰をつける。俺は、食事を残した恥知らず達の欠陥を一手に引き受ける人間だ。婆ちゃんが昼休憩をとるため洗い場を離れた。

先輩が、俺のところへ来て、

『本格的に盆休みぃラッシュや昨日みたいに渋滞やろ。』

と言った。先輩は、フロアから、下げ物のお盆を6個も7個も持ってくる。俺は、この竜のような大日本列島高速道路が夜になっても、大渋滞することを想像すると。車のライトがあまりに眩しいことになるなと思った。


しばらく、洗い場を離れられなかったので俺は、ひたすら、仕事をしていた。60分を過ぎると婆ちゃんが帰ってきたので、俺は、残飯を一度全部、ゴミ捨て場へ持っていくことにした。残飯は、そのままほっておくと肥料になるのだろう。一袋一袋が信じられないぐらいエネルギーを持っているのを感じる。俺は、今人間が必要とするあらゆるエネルギーを捨てに来ている。俺は今、この分のエネルギーを俺自身の人生の中で消化しなくてはならない。俺は、その責任があるのだから。

俺は、ホールに戻った。窓の外には、琵琶湖が一望できた。フロアを見渡すと、200席を超える巨大なレストランに、夏休みの家族連れやら、里帰りの夫婦やろ、海にいく若者たちが、席を埋めている。チケット制のレジの後ろに、席が空くのを待つ、人間の群れがイライラして待っている。


俺は、巨大な、おひや自動作り機から、ガッシャン、ガッシャン、36個ずつ出てくる水を運び、チケットを回収する。チケットにテーブル番号を記入したら、オーダーを通す。注文をとらない合理的システムだ。俺は、騒音のように自分のことばかりしゃべる人間の間を越えて、食事を運ぶ。人々は、自分のいっていることが相手に聞こえないので、さらに大きな声でしゃべる。するとレストラン中の人々が、いっせいに、自分の自慢をして、更に、大きな声を出す。相手に話が聞こえないと分かると、その人は、怒った顔をして、首筋を立てて、最高に大きな声でしゃべるんだ。


その間、俺達ウェイターは、注文を聞かなくていいから、気持ちよく、水を持っていけて、チケットを切り、注文を持っていって、食事を下げる。青すじを立てて、人間としゃべらなくていいんや。


レストランの外には、100名を超える列が出来。くそ暑い太陽のもと、一人一人、レストランの主任が、注文を聞くのだ。

『えーえー、席は空いてないんです。えーえー、申し訳ありなせん。』と言いながら。俺は、何も考えず、目の前の仕事にじっと集中した。


俺は、サービスエリアの帰りしな、燃える人を見ている。エリアから一般道につながる下り坂で、ワゴンは急に止まり、サイドブレーキを引いた。窓の下の道路には、ひっくり返った400ccバイクと、一人の燃える人がいた。タンクトップの少女と皮ジャンを着た青年が燃える人をおいかけまわしている。


バイクから、石油がぼとぼとと蒸れて、あたりに怒鳴り声がする。まったく盆休み的な事柄でない。

我々のワゴンは、その事故現場から、25台分離れている。車は、たちまち渋滞し、その先頭の車から、ドライバーが降りて、交通整理をする。火は、いまだ男の服を焼き、革ジャン男は、バタバタ火を叩いている。革ジャンの男は、パニックで涙が止まらない。どこからか、上半身裸の男が現れ、バケツの水で、燃える人の全身に浴びせかけた。火は何とか収まったが、その友人らしき人々は呆然とし、放心状態になっている。燃える人の体からは、煙がなくなることはない。やがて救急車が近づく音が聞こえ、周りに広がった5,60名の観察者は、僕を含め安堵感を覚えた。救急車の音は、限りなく近づいているのだが、中々来ない。病院はすぐ近くなのだが。もう10分以上は経つのではないか?いよいよ救急車は、事故が起こした渋滞に巻き込まれ、近づくことができない。火傷は60%を越えたら、ヤバイんだよ!と先輩が、俺に言った。燃える人は、さっきまで、動いていたのに、ぴくりともしない。意識を失ったのか。やがて渋滞の間から、担架を持った二人の救急隊員が、びっくりするぐらいあっさり燃える人を持ち出したんだ。


有意義なレジャーに出掛けた若者たちは、これから、今日一日を病院の待合室で過ごすことになるだろう。


隣の席のおばちゃんが娘に電話をかける。


『あー私、何か今、事故で渋滞してんねん。今から、警察が調べはるから、あーごはん作れそうにないわ!何か食べてきー』

と長々と携帯でしゃべり続ける。俺も友人と待ち合わせたいけど。電話はやめた。関西弁は、すこぶる不謹慎だ。


人間の精神は、俺は彼が、きっと助かるだろうって確信している。鮮明に動いていて。我らの精神はどこにあるのか?俺の精神は、いっさい関係ない。


俺は、友人と待ち合わせの、ドーナツショップの席へ座った。友人は、

『遅かったじゃないの?どうしたの?』


と言った。俺は、まったく表情を変えずに、

『燃える人を見とって、遅なったんや。』

と伝えた。友人は、

『冗談ばっかり』

と言った。その時、俺は確かに今の言い方は冗談ぽかったかもしれないと思った。まるで、燃えるゴミっていう時と同じ言い方だったもの。友人は『そんなことより』って言った。俺はそう、まったくそんな言い方はだった。失礼だったと含み笑いした。


その後、友人が話した内容は、今日の出来事の愚痴で、私が生まれてきてから聞いた話の中で、一番おもしろくない話だった。


(05、01、22)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 個人的に一番最後の二行が好きです。 あと、細かい描写がすばらしく、観察眼がするどい方なのかな? という印象を受けました。 [気になる点] 少し、読みにくいですね。 あと、一番言いたいことが…
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