第51話：市場の狂乱—ビスケット・ゴールド対腐敗した偽金
タナカの**『永久不滅の金塊ビスケット（ビスケット・ゴールド）』**を手に、ロイド＝ブレイブハートは、レドニアとユグラシア、両国の主要都市に向けて馬を走らせた。彼の使命は、ムッソリーニオのプロパガンダが信用を失う前に、タナカが創造した「真の富」を市場に投下することだ。
プロパガンダの浸透
ムッソリーニオの演説と元老たちの情報操作は、市場で急速に浸透していた。
「転成者タナカが配った煎餅紙幣は、ただの腐敗した菓子だ！現に、湿気でベタベタになり、カビが生え始めた！」
国境付近の市場では、タナカがかつて撒いた煎餅紙幣が、その耐久性の低さゆえに、見るも無残な姿を晒し始めていた。人々は、タナカの平和戦略を**「詐欺」**とみなし、不安と怒りが高まっていた。
「ムッソリーニオ様の言う通りだ！あの異邦人は、我々を騙して戦争を終わらせたかっただけだ！」
ビスケット・ゴールドの投下
その混乱の中、ロイドはレドニアの主要な交易都市の中央広場に到着し、創造魔法で作り出した高台に立った。彼は、国王軍の威信を示すかのように、金色のビスケットを掲げた。
「皆の者！静まれ！これは、転成者タナカ様からの新たな啓示である！」
ロイドの周りには、市場の群衆が集まった。彼らは、ロイドの持つ金色の塊に目を奪われた。
「タナカ様は、偽りの富を捨て、真の富とは何かを示すために、これを創られた！これは、**『永久不滅の金塊ビスケット』**である！」
ロイドはそう叫ぶと、硬いビスケット・ゴールドを一つ取り出し、地面に叩きつけた。
カキン！
ビスケットは砕けることなく、金属のような硬い音を立てて跳ねた。そして、その金色の破片から、芳醇な小麦とバターの香りが周囲に広がった。
広場に集まった人々は、息を飲んだ。
商人A：「金だ！腐敗しない金塊だ！」 市民B：「だが、この香りは……ビスケット！？」
ロイドは、すかさず次の行動に出た。彼はビスケット・ゴールドを手に取り、大きく口を開けてかじった。
サクッ！ゴリッ！
「美味い！」ロイドは、硬いビスケットに歯を食いしばりながら、感極まった表情を浮かべた。「これは、最高に日持ちし、そして最高に甘美な富だ！偽りの金と、腐敗した菓子を捨てよ！真の甘い富を手にせよ！」
ロイドのデモンストレーションは、群衆の認識を瞬時に書き換えた。彼らが目にしたのは、腐敗した偽札とは対極にある、**「腐らず、食べられ、かつ金に見える」**という、究極の価値を持つ物体だった。
ラスボスたちの焦り
ロイドの報告は、ユグラシア連邦の本部壕に即座に届いた。
元老ナチョス：「金塊ビスケットだと！？腐敗しない、食べられる金！？あの異邦人は、富と食料の概念を融合させたというのか！」 元老星輪：「チッ！これで、我々の『偽札プロパガンダ』は完全に無力化された！国民は、**『ビスケット・ゴールドが真の富だ』**と信じ始める！」
フューラー・ヒットラーク総統は、怒りに震えた。
「タナカめ！私の**権力の源泉である『貨幣経済』**を、菓子で破壊するつもりか！」
タナカの**『永久不滅の金塊ビスケット』**は、腐敗と不安に支配されていた市場の心を一瞬で掴み、ムッソリーニオのプロパガンダを打ち砕いた。
タナカは、ウッドストック村で、ロイドからの魔力通信を受け取った。
「タナカ様！作戦成功です！ビスケット・ゴールドは、市場で**『真の富』として受け入れられました！ムッソリーニオの演説は、『腐ったビスケットを真の富だと認めない、頑迷な独裁者』**として、信用を失い始めています！」
タナカは、静かに頷いた。
（よし。これで、プロパガンダの危機は乗り越えた。後は、ムッソリーニオと元老たちが、このビスケット・ゴールドに対して、**どのような「武力」**で応じるかだ）
タナカの「甘い平和」を維持するための戦いは、武力ではなく、経済と味覚の領域で最終局面を迎えていた。
