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第43話:ヤマダ、最初の破壊と、ロイドの緊急報告

ウッドストック村でタナカとチーチートウがスフィアの味の議論を続けている頃、憎悪の転生者ヤマダは、森を抜け、レドニア王国の辺境にある小さな軍事施設にたどり着いた。


ヤマダは、タナカのような創造ではなく、破壊の異能を持っていた。彼の能力は、触れた物質の分子結合を急速に不安定化させ、分解・崩壊させるという、極めて単純だが強力なものだった。


(ヤマダ内心):戦争の種は、武器とそれを生み出す工場だ。戦争をなくすなら、まずそれらを消す。


ヤマダは、その施設が、休戦後に廃棄された古い弾薬庫であることを頭の中の知識で理解した。彼は、一切の躊躇なく、その弾薬庫の硬い石造りの壁に手を触れた。


「破壊」


次の瞬間、ヤマダの触れた部分から、石の分子結合が瞬時に崩壊し、壁が一瞬で砂塵と化した。その砂塵は、音もなく、静かに崩れ落ちた。


ヤマダは、その静かな崩壊を満足げに眺めた。彼の目的は、暴力的な爆発ではない。戦争を可能にするインフラの、静かな、絶対的な消滅だった。


忠犬ロイド、新たな危機に直面する

一方、レドニアとユグラシアの国境交換所では、ロイド=ブレイブハートが、ユグラシア側の補給部隊との間で、スフィアの在庫確認を行っていた。


ロイドは、タナカの「甘い平和」を維持するための補給係として、今や国王軍内で重要な地位を確立していた。


「この**『ココア味スフィア』の在庫を、先週よりも10パーセント増量。ユグラシア側に『我々の富は無限である』**というメッセージを送るのだ!」ロイドは誇らしげに指示を出す。


その時、レドニア国王軍の伝令が、血相を変えてロイドに駆け寄ってきた。


「ロイド殿!大変です!辺境の古い弾薬庫が、跡形もなく消滅しました!爆発音もなく、ただ、砂のように崩れ落ちたそうです!」


ロイドの顔から血の気が引いた。


(ロイド内心):タナカ様の仕業か!?いや、タナカ様は創造の異能。静かな破壊など、まさか……。


ロイドは、この事件がタナカの「甘い平和」を揺るがす新たな脅威であると直感した。彼は即座に馬をウッドストック村に向けた。


タナカの直感とムッソリーニオの策動

ウッドストック村。チー牛と「スフィアの黄金比」について議論していたタナカは、ロイドの到着よりも早く、ヤマダの「破壊」の波動を感じ取っていた。


(タナカ内心):この波動……俺と同じ、異邦人の力!だが、俺の創造とは真逆の、冷たく、暴力的なエネルギーだ!誰だ?何のために……


そこへ、ロイドが泥まみれで駆け込んできた。


「タナカ様!大変です!辺境の弾薬庫が静かに消滅しました!これは、タナカ様が作り上げた**『甘味平和構造』**を、武力で破壊しようとする者の仕業に違いありません!」


タナカは、すぐさまロイドに、ユグラシアの最高指導層の動向を尋ねた。


「ユグラシア側は?」


「ムッソリーニオが、貴族院で**『甘い麻薬から覚めよ』と演説を続けています!ムッソリーニオの目的は、タナカ様の平和を『軟弱化政策』**として葬り去ることです!」


タナカは、最悪の状況が整ったことを悟った。


「そうか。破壊の異能者と、戦争を煽るカリスマ。俺の平和は、二つの方向から攻撃されることになる」


タナカの目の前に、前世の戦場よりも遥かに複雑な、**「平和のための戦争」**が、今、幕を開けようとしていた。

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