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第35話:満腹の戦場に降臨せし、もう一人の異邦人

タナカの**『究極の満腹兵器』によって、最前線は深い静寂に包まれた。両軍の兵士は泥の上で牛丼の結晶を抱きしめ、幸せそうに眠っている。戦争は、「満腹」**という極めて平和的な理由で停止した。


タナカは、自室で深い眠りについていたが、突然、彼の意識が覚醒した。


(なんだ、この感覚……)


それは、初めて自分が異世界に来た時に感じた、**「異質な力の波長」**だ。それも、自身の創造魔法と酷似しているが、もっと下品で、もっと安っぽい波動。


タナカは急いで戦場へと馬を飛ばした。


満腹の戦場に現れた異物

最前線の中央。眠りこけた兵士たちの間を、タナカは慎重に進んだ。満腹兵器は、巨大な塊のまま、まだ周囲に濃厚な牛丼の香りを撒き散らしている。


その巨大な牛丼の結晶の上。突如、一人の男がなんの脈絡もなく、泥の上に降臨した。


男はタナカと同じ、20代くらいの青年だ。服装は、異世界の粗末な服でも軍服でもない。清潔だがヨレたチェックのネルシャツに、カーキ色のチノパン、そして黒縁メガネをかけている。手に握っているのは、前世の日本のコンビニのレジ袋だ。


その男は、辺り一面に広がる泥と、牛丼の香りに満ちた極度にシュールな光景を見渡し、戸惑った表情を浮かべた。


「え、なにこれ?臭い。てか、牛丼?なんでこんなところに……いや、それより、ここどこ?」


男は、タナカと同じ、完璧な日本語を口にした。


【タナカ内心の衝撃】


(日本語?そして、この服……前世の人間?俺と同じように、異能を持っている……!?しかも、波動が牛丼臭い)


タナカは、自分の存在を悟られないよう、物陰に身を潜めた。この新参者が、この戦場の状況をどう認識するのか、見極める必要があった。


チー牛、能力発動

男は、足元の泥で汚れた自分のスニーカーを見て、不満そうに呟いた。


「最悪だ。この泥、靴洗うの面倒くさいし……あー、もう、腹減ったな」


そう呟いた瞬間、男の周りの空気が一瞬歪んだ。男は、コンビニのレジ袋を床に置き、両手のひらを上に向けるという、極めて慣れた動作をした。


そして、その手のひらの上から、タナカの創造魔法と酷似した光が発せられた。


男の能力によって生成されたのは、**具材が偏った『チーズ牛丼・特盛り・つゆだく』**だ。男は、生成した牛丼を無造作に手に取り、泥の上で食べ始めた。


「よし。やっぱり、俺の**『創作再現クリエイティブ・リプロダクション』能力は使えるな。どこにいても、とりあえずチー牛が食える。ん?この牛丼、味はいいけど、なんか米が固い**な。チー牛って、米が命なのに」


男は、生成した牛丼を汚い手で口に運びながら、満足げに微笑んだ。


(タナカ内心の解析と絶望)


(創作再現能力……!俺の『食べたものを再現する』能力と似ているが、もっと特化している!しかも、彼の波動の安っぽさは、**『チーズ牛丼』**に特化しているからか!?そして、米が固い?)


タナカは、自分の**『究極の満腹兵器(牛丼特盛り結晶)』**を見やった。


(そうか!あの男の能力は、米を固くするような**『不満と偏見』**に満ちた再現だ!そして、奴の名前は、見た目と能力からして……)


タナカは、この場の状況と、目の前の男の姿、そして彼の持つ能力から、その男の名前を悟った。


チー牛(チートウ)……」


タナカの長きにわたる平和戦略に、極めて安易な名前を持つ、もう一人の異邦人が、何の脈絡もなく介入してきた。

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