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第33話:最後の満腹兵器と、戦場に響く「腹の虫」

タナカは、自室で完成させたばかりの直径5メートルの円盤状の塊、**『究極の満腹兵器サティスファクション・ノヴァ』の最終調整を行っていた。それは、牛肉、米、チーズ、卵の組成が圧縮結晶化された、まさに「牛丼特盛りの化身」**だった。


ロイド=ブレイブハートは、指示通り戦場から煎餅紙幣を回収し終え、興奮した様子でタナカの隣に立っている。


「タナカ様!煎餅紙幣の回収、完了いたしました!やはり、あれは新型兵器の**『エネルギー源』だったのですね!で、この『巨大なチーズケーキ』**のような塊が、最終兵器ですか?」


「チーズケーキではない。これは、戦争の根源である**『欠乏』**に対する、究極の答えだ」タナカは冷静に言った。


【タナカの最終作戦】


設置:ロイドが満腹兵器をユグラシア側の**『飢餓誘発チップス』**の中央に設置する。


発動:満腹兵器は、ナチョスの兵器とは真逆に、兵士たちに**「究極の満腹感と、すべてに対する無関心」**を与える。


勝利:兵士たちが戦闘意欲を失い、戦場を去ることで戦争を終結させる。


タナカは、満腹兵器の表面に、ロイドが回収した煎餅紙幣の残骸を振りかけた。


「ロイド。お前は今すぐ戦場に戻り、ユグラシア連邦軍の陣地深く、あの飢餓チップスの中央に、これを設置しろ」


ロイドは、タナカの行動の全てに深い意味を見出した。


「ははあ!承知いたしました!タナカ様は、**『敵の飢餓チップスに、満腹兵器を同化させることで、敵の兵器を無力化する』**おつもりなのですね!まさに、毒を以て毒を制す!」


不可視化の条件と、ロイドの勘違い

タナカは、ロイドに満腹兵器の最も重要な特性を伝えた。


「この兵器には、特殊な魔法が掛かっている。敵の魔力探知を避けるため、通常は不可視だ。しかし、ある特定の条件を満たした時のみ、その姿を現す」


「特定の条件、とは?」ロイドは前のめりになる。


「それはな……**『極度に空腹な者が、この兵器の存在を強く願った時』**だ」


タナカは、自身の能力が**「欲望」**に強く反応することを逆手に取った。ナチョスのチップスが飢餓を誘発すれば、兵士たちは自然と「満たされる何か」を強く願う。その欲望が、兵器の不可視の障壁を破る、という仕組みだ。


ロイドは、タナカの言葉に再び感激した。


「なんと!タナカ様は、敵の**『飢え』**すらも、我が軍の兵器発動のトリガーに変えてしまう!まさに神業!」


(タナカ内心):頼む。これで全てが決まる。兵士たちの「戦いたい」という欲望ではなく、「満たされたい」という根源的な欲望が、この平和兵器を起動させてくれ!


ロイドは、巨大な円盤状の満腹兵器を、創造魔法で作り出した台車に乗せ、戦場へ向かった。


戦場へ向かう満腹と飢餓

ロイドが出発した直後、タナカは創造魔法で、自らに微弱な**『満腹兵器の残滓』**を与え、深い眠りについた。


その頃、最前線では、ナチョスのチップスが効力を発揮し始めていた。


ユグラシア兵:「くそっ、腹が減った!何もかも食い尽くしてやりたい!」 レドニア兵:「我々は飢餓で死ぬのか!?もう戦う力などない!」


両軍の兵士たちは、ナチョスのチップスの影響で、理性を失い、泥の中をさまよっていた。


そして、ロイドが満腹兵器を中央に設置した直後。


「なにか、食うものが欲しい!」 「腹を満たしてくれ!」


両軍の兵士たちの**「満腹への切実な願い」**が、戦場を覆い尽くした。


その瞬間、設置されたはずの満腹兵器の不可視の障壁が破れた。直径5メートルの**「牛丼特盛りの結晶」**が、飢餓チップスのド真ん中で、光を放ちながら姿を現した。


そして、その満腹兵器を見た、極度の飢餓状態にある両軍兵士の腹の虫が、**「グゥゥゥゥ……!」**と、戦場に響き渡る巨大な音を立て始めた。


戦争の歴史上、最も情けない**「腹の虫の合唱」**が、最終決戦のゴングとなった。

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