第32話:最終兵器の設計図—究極の「満腹感」による平和
ユグラシア側の最終兵器**『飢餓誘発チップス』と『絶望の星』**の投入により、戦線は再び地獄絵図と化していた。タナカが築いた「甘い秩序」は、ナチョスと星輪の「苦痛と絶望」によって瞬く間に破壊された。
タナカは、自室で創造魔法のイメージを整理していた。ロイドは、タナカの周りで厳かに警護についている。
「ロイド。元老ナチョスと星輪の目的は、兵士の**『欲望』**を暴走させ、戦争を泥沼化させることだ。俺の『甘味戦略』を逆手に取った、非常に巧妙な手だ」
(タナカ内心):マシュマロ、お菓子の戦車、煎餅紙幣……俺の失敗は、全てが**『欲望の暴走』**につながった。ならば、今度こそ、欲望そのものを満たし尽くし、無力化するものを創るしかない。
タナカは、ロイドに指示を出した。
「ロイド。お前はすぐに、戦場に撒かれている煎餅紙幣を全て回収しろ。あの煎餅紙幣は、ただの偽札ではない。**次の兵器を起動させるための『触媒』**となる」
ロイドは感銘を受けたように敬礼した。
「ははあ!やはりあの偽札は、タナカ様の最終兵器の**『エネルギー源』**だったのですね!承知いたしました!」
(伏線①:煎餅紙幣の再利用:ロイドの誤解を利用し、タナカは次の兵器の材料として偽札を回収させる。偽札は甘じょっぱいため、創造魔法の構成要素として最適だ。)
究極の「満腹」と「無関心」
タナカは、頭の中で、自身の食べた記憶を呼び起こした。それは、前世で最高の満腹感と無関心を覚えた時の記憶だ。
【タナカの回想】
前世、タナカが最も金を稼げた時期、深夜の牛丼チェーン店。彼は一日の疲労を癒すため、牛丼特盛りの上に、大量のチーズと生卵を乗せて食べた。 その時、タナカは感じた。「もう、何もいらない。ただ眠りたい」という、究極の満腹感と、それによって生じた「すべてに対する無関心」。
タナカは、その記憶を創造魔法の設計図とした。
「よし。できた。ロイドが言う**『最終平和兵器』**の設計図だ」
タナカが創造魔法で生み出したのは、巨大な**『牛丼特盛りチーズ生卵乗せ』**の成分を、圧縮・結晶化させた、直径5メートルほどの円盤状の塊だった。表面には、米粒の結晶と、黄身の光沢、そしてチーズの繊維が見て取れる。
**『究極の満腹兵器』**の誕生である。
(タナカ内心):ナチョスは**『飢餓』を誘発する。ならば、俺は『究極の満腹』**をぶつける。人が極限まで満たされた時、欲望は消え、戦闘意欲はゼロになる。これは、戦争の根源である『欠乏』への、アンチテーゼだ!
タナカは、その円盤状の塊に、さらに複雑な魔法を加えた。
「ロイド。この兵器は、二つの効果を持つ」
究極の満腹感:この塊を摂取した者は、精神が**「眠りと安穏」**に支配され、戦意を完全に喪失する。
不可視化:この兵器は、敵の魔力探知から隠れる。ただし、ある特定の条件を満たした時のみ、その姿を現す。
タナカは、満たされない過去の記憶を糧に、最も実利的で、最も食べ応えのある「平和兵器」を完成させた。
「ロイド。戦場に戻り、この兵器を、敵の『飢餓誘発チップス』の中央に設置する。これが、俺の最後の賭けだ」
タナカの表情は、どこか諦めたような、しかし確固たる決意を秘めていた。




