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第29話:タナカの最終結論—甘い平和を「制度」にする

タナカは自室で、次の行動に備えて創造魔法のイメージを整理していた。彼が求めているのは、もはや「兵器」ではない。この**「奇妙な誤解による平和」を、いかにして「制度」**として定着させるか、ということだ。


そこへ、ロイド=ブレイブハートが興奮と満腹感を全身に漂わせながら、部屋に飛び込んできた。彼の騎士服には、微かにチョコレートの破片とマシュマロの繊維が付着している。


「タナカ様!ご報告いたします!『戦略的胃袋作戦ストラテジック・ガストロノミー』、完全なる成功です!」


ロイドはそう言うと、敬礼のポーズを取りながら、口の中でビスケットの残骸を飲み込んだ。


「あの**『祝杯戦車』は、補給部隊と近隣の兵士たちによって、一晩で完全に『消費』**されました!残ったのは、兵士たちの満面の笑みと、国王軍の威信が守られたという事実のみ!敵の偵察兵が何を調べに来ようと、証拠は我々の胃の中にあります!」


タナカは、ロイドの満腹そうな様子を見て、内心深く安堵した。


(よし。これで、俺が放心状態で大量のお菓子の戦車を作ったという事実は、**『国王軍の新型・緊急糧食の秘密裏の消費』**という、国家機密レベルの誤解に塗り替えられた。戦争再開の危機は回避できた)


ロイドはさらに、目を輝かせながら語る。


「あの夜、兵士たちは、戦車が食べられるという事実と、その美味さに深く感動し、士気は極限まで高まりました!彼らは、国王陛下と、この作戦を立案されたタナカ様に対し、深く感謝しております!」


しかし、タナカは「士気向上」という言葉を冷静に受け止めた。


(士気向上、か。彼らが喜んでいるのは、戦うことではなく、美味しいものを腹いっぱい食べられたことだ。彼らが本当に望んでいるのは、戦場ではなく、安穏な生活。そして、甘いものだ)


タナカは、ロイドの目の前で、創造魔法で小さな角砂糖を一つ生成した。


「ロイド。休戦は一時的だ。ユグラシア総統フューラー・ヒットラークは、必ずこの休戦期間を利用して、次なる手を打ってくる」


ロイドは、タナカの真剣な表情を見て、顔を引き締めた。 「その通りです!タナカ様!」


最終戦略の立案

タナカは、床に座り込み、この一連の奇妙な現象から得た最終的な結論を導き出した。


(俺の能力は、武力も交渉も通じないこの世界で、**「欲望」という最も原始的な力を使って、平和を生み出すことができる。この『甘い誤解』**を、一時的な現象で終わらせてはならない。制度として、世界に組み込むんだ)


「ロイド。次の作戦は、戦争の『概念』を変えることだ」


タナカは、角砂糖を床に置き、その周りに、さらに小さなビスケットと煎餅紙幣を並べた。


「戦争が続くのは、指導者層が『利益』を得られるからだ。そして、兵士は『報酬』のために戦う。ならば、戦争の目的を、『最も平和なもの』に変えてしまえばいい」


「タナカ様の深謀遠慮……」


「ロイド。お前は、休戦期間中に、国王軍の全補給部隊に接触しろ。そして、こう通達するんだ。『タナカ様の提案により、今後の戦争は、**『甘味による威信競争』**へと移行する』と」


ロイドは困惑した。 「甘味による威信競争?」


「そうだ。戦うのではなく、両軍が、**『どれだけ豊かで、美味しく、巨大で、独創的なお菓子を戦場に並べられるか』を競い合う。これが、このアースガルドの新たな『国家間の対立の形』**となる」


タナカは、角砂糖、ビスケット、煎餅紙幣を指差した。


「我々は、お菓子や甘いものを軍事技術として開発し、**『我々の方が、お前たちよりも遥かに幸福で、豊かだ』という、究極の心理的優位を確立する。これが、『恒久平和のための、甘味協定スイーツ・パクト』**だ」


ロイドは、タナカの言葉を咀嚼し、その真意を読み解こうと必死だった。そして、彼の脳は、タナカの言葉を**「敵国を飢えさせるための、究極の経済戦争」**として再解釈した。


「ははあ!承知いたしました!タナカ様は、『敵を戦場で甘やかすことで、ユグラシアの経済を破綻させる』おつもりなのですね!これは、武力によらない、究極の『砂糖漬け経済戦争』!」


タナカは、ロイドの誤解には構わず、静かに頷いた。彼の目は、**「甘味による平和」**という、前世の絶望を乗り越えるための、最終的な道筋を見据えていた。

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