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第26話:絶望の底からの吉報と、タナカの再始動

お菓子の戦車の横で茫然自失となっていたタナカは、数時間後、自力で村へと帰還した。彼は自室に戻り、クッキーの帽子を脱ぎ捨て、泥まみれのボロボロの軍服のまま、床に横たわった。


(終わりだ。俺の第二の人生は、ここで終結だ。お菓子の戦車なんて作って、俺は一体何を……)


タナカは、自身の行動がもたらした最悪の結果、すなわちユグラシア軍の激怒と総攻撃を覚悟していた。あとは、レドニア軍が壊滅し、ユグラシア軍の支配下に入った後、自分が「音痴の異邦人」として捕らえられ、**「滅多刺しにされてさらし者になる」**という未来だけだと思っていた。


その時、ロイド=ブレイブハートが、興奮冷めやらぬ様子で部屋に飛び込んできた。


「タナカ様!大変です!奇跡です!」


タナカは、この忠犬の「奇跡」という言葉が、いつも最悪の事態の前触れであることを知っていたため、顔色一つ変えずに横たわったまま、低く呟いた。


「また、俺の失敗が、最悪の形で加速したという報告か。構わん。話せ」


ロイドは、タナカのその態度を**「全てを予知した賢者の冷静さ」**と解釈し、さらに興奮した。


「違います!今回は、本当に奇跡です!ユグラシア連邦軍の総統、フューラー・ヒットラーク閣下から、我らが国王軍に対し、**『一時休戦』**の申し入れがあったのです!」


タナカの体は、床に横たわったまま、ピクリとも動かなかった。


【タナカの内心】


(**休戦!?**嘘だろ!?あの独裁者が、この状況で!?俺の『感情伝達ランタン』の誤解を利用して攻勢に出るはずだったのに!?何が起きた!?)


タナカの思考は、一瞬でパニックに陥ったが、彼はこの異世界の常識ではありえない吉報に対し、絶対に驚きを見せないと決めていた。


ロイドは、興奮しながら、国王軍に入った情報をタナカに伝えた。


「ユグラシア側は、『両国の兵士の疲弊が極限に達した』ことを理由に挙げていますが、本営の分析では、これは明らかにタナカ様の最終兵器が原因だとされています!」


「最終兵器だと?」タナカは冷静を装い、声のトーンを維持した。


「は!あの**『お菓子の機甲師団』です!一晩で数十両が出現したという報告がユグラシア側に極度の恐怖を与え、我々が物量で遥かに上回っていると誤解したのです!しかも、国王軍はユグラシア側の休戦申し入れを、『彼らの新型兵器の開発時間を稼ぐための罠』**と見抜いていると、本営に報告しました!」


ロイドは、タナカの「お菓子の戦車」が、**「物量で敵を屈服させる」**という最も分かりやすい形で成功したことに、感動で震えていた。


タナカは、横たわったまま、ロイドの報告を最後まで聞き終えた。


「……そうか。休戦、か」


タナカはそう呟くと、ゆっくりと立ち上がった。彼の表情は、相変わらず無感動で、感情を読み取ることはできない。しかし、その瞳の奥には、**「戦争終結の可能性」**という、前世の絶望を打ち破る、強烈な光が灯り始めていた。


(休戦だ。これが、俺の失敗と、独裁者のプライドが織りなした、最良の結果……。これで、次の手が打てる)

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