表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/53

第25話:総統の密かな趣味と、屈辱の一時休戦

ユグラシア連邦軍の本部壕は、重苦しい空気に包まれていた。最前線から帰還した偵察部隊『ツァイト』が持ち帰った報告と、写真のように正確に描き起こされた**『お菓子の戦車スイーツ・タンク』**のスケッチが、机の上に広げられている。


フューラー・ヒットラーク総統は、その報告書を無言で睨みつけていた。


【総統の内心(秘密)】 (馬鹿な!あの戦車の物量はなんだ!一晩で70両以上の戦車師団を編成できるだと!?我が連邦の技術をもってしても不可能だ!しかも、あの奇抜なデザイン……マシュマロのキャタピラ、ココアの角砂糖砲……**非常に前衛的で、芸術的ではないか!**特に、あのキャラメルコーティングは、装甲の継ぎ目を隠すための革新的な手法に違いない!これ、すごく欲しい……)


しかし、総統の口から出たのは、冷酷な命令だった。


「ツァイト部隊よ。ご苦労だった。その情報は、即刻、最高機密とする。兵士の動揺を避けるため、この件は一切口外するな」


総統は、表面上は冷静を保っていたが、内心ではパニック状態だった。彼は自身の独裁政権と権威が、**「音痴な異邦人」が作り出す「甘い物量の脅威」**によって崩壊の危機にあることを悟った。


(あの異邦人は、兵士を懐柔するのではなく、指導者を恐怖で屈服させるという、最も効率的な戦略を実行したのだ!我が連邦が誇る物量を遥かに凌駕する相手に、まともに戦えば、私が無能な独裁者として他陣営から笑われる!)


屈辱的な平和への一歩

ヒットラーク総統は、自陣営の面子よりも、失敗を避け、権力を維持することを優先した。


彼は、腹心であるゲッペルス将軍に、低く抑えた声で指示を出した。


「ゲッペルス。すぐに、レドニア王国軍の最前線指揮官に対し、**『一時休戦』**の申し入れを打電せよ」


ゲッペルス将軍は驚愕した。


「閣下!?休戦だと!?我々が圧倒的に優位な状況で、一体なぜ!?」


総統は、冷たい視線をゲッペルスに向け、威圧した。


「**問答無用だ!このまま攻勢を続ければ、我が軍の戦車師団は、敵の『新型・物量戦車』**によって、確実に壊滅する。我が軍の威信を保ち、他陣営から無能だと笑われないためには、一時的に戦線を凍結するしかない」


総統は、この休戦が、レドニア王国内の指揮系統の混乱を利用するための**『戦術的な後退』**だと、必死に自分に言い聞かせた。


(休戦だ。そうだ、これは時間稼ぎだ。あの異邦人の技術を解析し、我が連邦があの革新的なデザイン、いや、あの兵器をコピーする時間が必要なのだ!)


こうして、フューラー・ヒットラーク総統の**「プライドと失敗への恐怖」**という、最も個人的な感情が、両軍の一時的な休戦という、タナカが最も望んだ結果を生み出した。


休戦の打電が発せられた直後、総統はゲッペルスに気づかれないよう、机の下で、**『お菓子の戦車』**のスケッチをもう一度、うっとりとした表情で見つめた。


(ココア味の角砂糖砲……斬新すぎる。私なら、ここに金色の飴細工で鷲の紋章を入れる。芸術だ……)


タナカの**「絶望が生んだお菓子の兵器」は、ついに、異世界の戦争を、「休戦」**という新たな段階へと突入させたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ