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第11話:忠犬ロイドの虚偽報告と、モフモフ兵器の誤解

タナカの自室は重い静寂に包まれていた。タナカは、あの夜の惨劇以来、自身の**「創造魔法の致命的な欠陥」**、すなわち「シリアスなイメージが食べたものの記憶によって歪む」という事実に気づき、深く落ち込んでいた。彼の目標はあくまで戦争の終結だが、その手段は全てが奇妙な方向へ逸れていく。


しかし、ロイド=ブレイブハートは、タナカの沈黙を**「深謀遠慮」**の証と解釈していた。


(タナカ様が失敗するはずがない!あれは、我々には理解できない、深淵なる戦略に違いない!)


ロイドは、タナカへの絶対的な信仰と、国王軍への忠誠心という二律背反を、**「タナカ様の行動は全て国王軍にとって最良の結果を生む」**という論理でねじ曲げた。


国王軍駐屯地での報告

国王軍の駐屯地に到着したロイドは、すぐに第3補給部隊の隊長に謁見した。隊長は、前回の「マシュマロ補給」と「音痴ソング」の報告で既に精神を病みかけている中年騎士だ。


ロイドは、国王軍の威厳を保つため、虚偽を織り交ぜた報告を始める。


「隊長!転成者タナカ様より、緊急のご報告です!」


「お、おぉ……ロイド君か。また君の**『転成者様』**の報告かね。今度はなんだ?歌うマシュマロか?それとも踊るココアか?」隊長は顔を引きつらせた。


「違います!今回の作戦は、**『敵の士気崩壊と情報操作』**です!」


ロイドは声を大にした。


「タナカ様は、両軍に雪原の巨人を**『見せつける』**ことで、ユグラシア側に新型魔物兵器の開発を疑わせ、彼らを極度の緊張状態に追い込むことを目的とされました!」


「魔物兵器?あの、巨大な羊毛の塊が?」隊長は信じられないという顔をする。


「は!あの魔物は、**『偽装巨像ダミー・ゴーレム』**です!敵が攻撃しても、その羊毛でできた皮膚が一切の物理攻撃を無効化し、兵士の心を折る!そして、ユグラシア側は、あのモフモフが単なる巨大な綿菓子だと判断できず、我々が次にどんな恐ろしい兵器を投入するのかと、パニックに陥ったのです!」


「な、なるほど……!確かに、あの愛らしい外見で攻撃を無効化されたら、兵士の心は折れる!しかも、両軍を戦わせたのは……」隊長はロイドの言葉に誘導され、自ら答えを見つけ始めた。


「タナカ様は、**『偽装巨像』**を見た後、恐怖と混乱に陥った両軍をあえて衝突させ、ユグラシア側の混乱をカモフラージュすると同時に、敵に新型兵器の情報を一切与えないという、巧妙な情報統制を行われたのです!」


「**おぉ、さすがは転成者タナカ様!**すべてはタナカ様の掌の上だったのか!」隊長は感動で涙ぐみ、机を叩いた。


ロイドは、タナカの失敗を**「戦意崩壊を引き起こす新型兵器の偽装と情報統制」**という、国王軍に最も都合の良い形で報告し終えた。


第二の奇妙な現象

その日の夜、戦場では奇妙な出来事が起きていた。


ユグラシア連邦軍の塹壕。激しい戦闘で疲弊した兵士たちは、再び現れた「甘い匂いの巨大なモフモフの残骸」と、その中に残されたとろけたクリーム色の角を、今度は迷わず集め始めた。


「これ、甘いぞ!前のマシュマロと同じ甘さだ!」 「これは、レドニア軍が隠していた、新型の高級補給品だ!くそ、こんな美味いものを!」


巨大モフモフの残骸は、両軍の兵士たちにとって、一種の**「幻のデザート」となり、再び激しい奪い合いの対象となった。そしてその奪い合いは、戦闘というよりは、「甘いものを得るための争奪戦」**の様相を呈していた。


タナカの「大失敗」は、ロイドの「大成功報告」によって国王軍上層部の評価を上げ、そして戦場では、**「甘いものの争奪戦」**という、さらに奇妙な方向へ戦争を導いていた。


(タナカ様が創造された魔物は、一体何を意味するのか……。しかし、全ては良き方向へ進んでいる!)


ロイドは、タナカの沈黙を**「次の作戦の重圧」**と解釈し、タナカを支えるべく、さらに忠犬ぶりを発揮しようと決意した。

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