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1/1

チー牛に出会いを求めるのは間違っているだろうか

「チーズ、君を追放する!」



その日は職場の内定式。

集団就職で王都の冒険者ギルドにやって来た俺は、ギルド長直々に追放を宣言されてしまった。




『えええ!?

そ、そんなー。

内定式の日にいきなり追放とか言われても困りますよー!


どうして俺が追放されなくちゃならないんですか!』





  「クスクス、まさか初日から追放される奴がいるなんてねww」

  「村の恥だぜ、まったく!」

  「だーから、あんな不細工を連れて来るなって言ったんだ。」




「うむ。

そこまで言うのなら説明してやろう。


先程の身体測定に伴うスキル鑑定において

君のスキルが《チー牛》であると判明した!」




『ち、チー牛?

なんですか、それ!?』




「こっちが聞きたいくらいだよ!!


いいかね?

そもそも《チー牛》とは《チーズ牛丼》の略で、陰キャを揶揄するスラングだ!」




『い、いや

言われてみれば、自分でも内向的な方だとは思いますが。』




  「ギルド長、そいつ地元でも根暗で有名でした。」

  「ザ・陰キャって感じだよねー。」

  「教室の隅でラノベ読んでるイメージです。」




「やはりそうか!


うむ。

改めて確信した!

君は不細工だし、有名なあの画像っぽい顔をしている!

そんな人間が所属しているとなれば、我が冒険者ギルドの株が下がってしまう!


やはり私の判断に間違いはないな!


チーズ!

君の就職内定は取り消し!

この冒険者ギルドから追放する!」




『そ、そんなーーー!!!!』




「内定者諸君!

最初のミッションだ!

そのチー牛野郎を敷地内から叩き出せ!!」





   「わはははww 超ウケるww」

   「悪く思うなよ、チー牛クンww」

   「おい、オマエら足を持て足を!!」





『み、みんなー待ってくれ!!

一緒に田舎から出て来た仲じゃないか!

せめて取り成しくらいしてくれよー!!』





   「アタシ、ブサメンって生理的に駄目なんだよねー。」

   「オマエみたいなアデノイド顔が居ると地元の評判下がるし。」

   「結局、世の中見た目が全てだろ?」





『オイイイイイッ!!

ルッキズムやめろよーーー!!』





   「じゃあ、みんな放り投げるぞ。」

   「ははは、あばよチー牛野郎ww」

   「この面汚し野郎、いやオマエの場合は生まれつき汚いだけだったかww」






『う、うわああああ

何もドブ河に向かって投げ捨てなくても』






    「「「せーーーーーの!!」」」」


    「「「チー牛1丁、廃棄しまーーーーーすwwwwww」」」






『うわああああああ!!!!!!』







ドボ―――――――――――――――――――――――ン!!!!





こんな経緯があって、俺は内定式の日に職場を追放され

全く土地勘の無い王都のドブ河に叩き込まれた。





=========================






『ゴボゴボゴボゴボッ


ゴホッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!


ゼハ――――  ゼハ―ーーー


…し、死ぬかと思った。』





俺はドブ河を数キロ流され、王都の城壁の外まで流されてようやく岸に上がる事が出来た。

周囲を見渡すと…  森?   

郊外の更に外側に流されたのだろうか?





『ひ、酷い目に遭った。

都会は本当に恐ろしいトコだよ。』





それにしても、まだ昼間だと言うのに周囲は薄暗く

あちらこちらからモンスターの唸り声が聞こえて来る。




え?

ちょっと待って。

ひょっとしてセーフゾーンを外れてる?

戦闘…  ってこっちは丸腰だぞ。

というより、戦闘技術を身に着けたいから冒険者ギルドに就活したのに!




  「プニニ プニニ」

  「プニプニプニプニ」

  「プニーーーーー!!」




ひょ、ひょっとしてスライムか何かに囲まれてる?

や、やばい!


何か武器になりそうなものはないか!

あ、そうだ!

スキル!


確か俺には《チー牛》なるスキルがあるんだったか?

聞くからに役に立たなさそうなスキル名だが…

逃走の手助け位にはなるんじゃないか?




『ステータス・オープン!!!』




俺は高らかに叫ぶ。





=========================




【名前】


チーズ・B・ライスボール



【職業】


無職



【ステータス】



《LV》  1


《HP》  11/20 (50)

《MP》  09/10 (30)


《腕力》 3  (15)

《速度》 2  (13)

《器用》 2  (11)

《魔力》 1  (9)

《知性》 2  (10)

《精神》 1  (7)

《幸運》 1  (10)

《経験》 0  


※次のレベルまで残り10ポイント。



()内は同世代男子のレベル1平均値



=========================




我ながら相変わらず低いパラメーターだよな。

そりゃあ志望校落ちまくって、集団就職コースを選ばされるよ。

しかも職業欄が無職になっとる!!


身体測定の時は《冒険者ギルド職員(研修中)》って表記されてたのに!

きっちりクビになっとるやんけ!!


まあ、いい。

今はそれどころじゃない!


スキルだ!

スキルを使ってこの場を切り抜けなければ!




=========================




【スキル】


「チート上」 


※読んで字の如く、チートを用いて自身の能力を上書きする。




【所持金】


0ウェン




=========================




ん?

スキル欄だけ字体が違わないか?


《チー牛》のトコだけ字体が変だぞ…



いや、違う!!

これ《チー牛》じゃなくて《チート上》だ!

《ト》と《上》が重なって《牛》の字にも見えるけど。



いや、そこじゃない!

説明欄だよ!


※読んで字の如く、チートを用いて自身の能力を上書きする。





ゴ、ゴクリ。

え?

どういうこと?


チート!?

漫画とかに出て来るチート能力を俺が持っていたってこと?



…上書き

上書きってどういうことだ。

せめて使い方くらい、ちゃんと書いててくれよ。




  「プニニ プニニ」

  「プニプニプニプニ」

  「プニーーーーー!!」




あ!

やばい!!

スライムの包囲網が縮まってきた!


くっそ!

こんなに四方八方を囲まれたら逃げ場がないじゃないか!!

ただでさえ俺は足が遅いんだから。


《速度》が2ポイントしかないんだぜ?


絶対に逃げられる訳が…


ん?

自身の能力を上書きすれば、どうなんるんだ?



例えば、《速度》を上書きしたり…




【申請承認。  

パラメーター《速度》を上書きします。】




え!?

な、なんだ今の声は頭の中から聞こえたぞ!?

ちょ、意味わからねーよ!!




【チュートリアル申請承認。

数値を一カ所操作する毎にMP1を消費します。】



え? え? え?



『じゃ、じゃあ! 速度だ!!  

まずは速度を早くしてくれ!!』




【申請承認。

MPを2消費します。】





=========================



【名前】


チーズ・B・ライスボール



【職業】


無職



【ステータス】



《LV》  1


《HP》  11/20 

《MP》  07/10 


《腕力》 3  

《速度》 200  ※下2桁を上書き  

《器用》 2 

《魔力》 1  

《知性》 2  

《精神》 1  

《幸運》 1  

《経験》 0  


※次のレベルまで残り10ポイント。




=========================





え?

《速度》200?

と思った瞬間!



俺の身体はスライムの群れの僅かな隙間を縫って、あっさりと外周に抜け出していた。

は、早い!!

こ、これが鈍足で知られた俺の脚なのか!?




『ふははは!

この糞スライムが!!

チートさえあればッ!!

オマエらなんて怖くないんだよーーー!!!!


喰らえ必殺!  チーズパーンチ!!!』





ポフッ!  《ダメージ0》




『くっそーーーー!!!

力だ!!  力も上げてくれよ!!!』





【申請承認。  

パラメーター《腕力》を上書きします。】





=========================



【名前】


チーズ・B・ライスボール



【職業】


無職



【ステータス】



《LV》  1


《HP》  11/20 

《MP》  05/10 


《腕力》 300  ※下2桁を上書き 

《速度》 200  ※下2桁を上書き  

《器用》 2 

《魔力》 1  

《知性》 2  

《精神》 1  

《幸運》 1  

《経験》 0  


※次のレベルまで残り10ポイント。




=========================




『ふははははは!!!

腕力300!!!!

世界チャンピオンだって怖くないねぇ!!!!


行くぜッ!!

チーズパ――――ンチ!!


オラオラオラオラオラオラオラ!!!!!』




10匹は居たであろうスライム達は俺の華麗なるラッシュによって原形を留めず霧散した。




【経験値10ポイント(1ポイント×10匹)を取得しました。】

【レベルアップしました。】




同時に脳内にアナウンスが響く。

ああ、これが噂に聞いていたレベルアップコールか。

気持ちいい…





=========================



【名前】


チーズ・B・ライスボール



【職業】


無職



【ステータス】



《LV》  2


《HP》  11/25   (5up)

《MP》  05/12   (2up)


《腕力》 4     (1up)

《速度》 4     (2up)

《器用》 3     (1up)

《魔力》 2     (1up)

《知性》 2     (0up)

《精神》 2     (1up)

《幸運》 4     (3up)

《経験》 10     


※次のレベルまで残り20ポイント。




【スキル】


「チート上」 


※読んで字の如く、チートを用いて自身の能力を上書きする。

※有効時間が2分に延長。 (new)



【所持金】


0ウェン



=========================




え?

有効時間2分に延長って…

今まで2分なかったのか?

これ、レベル×分数が有効時間なのだろうか?


ちょっと短いな。

チートとは言え、あまり楽観出来ないかも。






まあいいや!!!

よくわからんが、俺はチーズじゃなくてチートだああ!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは。 チート上書き…昔のゲームであった、プロアクションリプレ○だのXターミネータ○だのを使って入力する改造コードみたいな感じですね。但し永続でなく時間制限付きみたいですが。 [一…
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