風呂
なんというか、可愛いのだ。
可愛さの中に格好良さがあるというか、格好良さの中に可愛さがあるというか。
なかなか形容しがたい、端麗な顔立ちをしたきみがいた。
ポツリと可愛い、と呟いた。
呟いたつもりだったのだが、部屋の中だからなのか、それとも耳が良いのだろうか。
しまった、と思ってきみの方を見ると顔を真っ赤にしながら、再びフードを深くかぶろうとしていた。
が、僕はそれを止めた。
その行動は、ずっと見ていたかったからなのか、それとも直感で更に濡れてしまうと思ったからなのか。
恐らく、その両方だろう。
とにかく、顔を眺めていたかった。
しかし、次の一言で彼女は更に赤面してしまうことになる。
「お風呂、入っていいよ」
僕は何も考えていなかった。
ただ、温まってもらおうと思っただけだった。
彼女はそれ以上のことを考えてしまったのか、はたまた他の理由なのか。
「あ…、いや深い理由はないんだけど…」
「じゃあ、借りる」
そう言って逃げるように部屋を出ていったが、初めての家で間取りが分かるわけもなく、トイレやら寝室やらのドアを開いていった後、最後に開けた部屋に入っていった。
きみがいなくなって、冷静に考えてみる。
これ、かなり危ない状況なのでは。
友達が遊びに来たら?
親がもし家に来たら?
考えただけで胃が痛くなる。
考えるだけ無駄だよな、と自分に言い聞かせてベッドに寝転がる。
とにかく、悪いことは考えたくなかった。
そして、寝転がった途端に眠気が襲いかかる。
不思議なもので、寝転がる前は眠くなかったのに、寝転がったら眠くなったのだ。
無駄に睡魔に抗わず、目を閉じる。
すーっと、夢の中に落ちていった。




