家
家に着くまで、僕達は少しだけ話をした。
「どこから来たんですか?」
と、かなり思い切って聞いてみた。
すると彼女は、さっきと声色少し変えずに
「あそこの公園」
とだけ答えた。
「高三屋公園ですね。よく通るんですけど、来たのは最近ですか?」
質問をするタイミングで、小学生の頃に友達とよく遊んだことを思い出す。
「んー、一か月前ぐらい」
その答えが、一か月前から家なしになったのか、それとも一か月前から別の場所からこの公園に来たのか。それは分からなかった。
しかし、聞こうとも思わなかった。これ以上踏み込んだ質問は彼女を傷つけてしまうかもしれないと思った。
「家、どの辺なの?」
逆に、質問が飛んでくる。
「もうすぐですよ……はい、着きました。ここです」
僕は、お世辞にも綺麗とは言えない築数十年のアパートを指さして止まる。
「へぇ、──い…」
彼女がぽつりとなにか呟いたような気がしたが、トラックのエンジン音が邪魔をしてよく聞き取れなかった。
が、大方「小さい」とか「汚い」とかだろう。
特段大きくもなく、なにか目立つものもない。言ってしまえば、とにかく平凡なアパートだった。
「自転車停めてくるからちょっと待ってて」
と彼女に言い、僕は自転車置き場に向かう。
彼女はよく聞いていないのか、あぁうん、とだけ返した。
僕はそれを確認して自転車を停めに行き、戻る。
待ってて、とは言ったが、雨に打たれながら待っててと言ったのでは無い。
彼女は屋根も何もない所で僕を待っていた。
「うわ、ベチャベチャじゃないですか。早く家行きましょ」
僕はそう言い、少し早足でアパートの中に入る。
そして、そのスピードで3階まで階段で登っていく。
登り慣れてはいるが、少し息が切れる。
「着きました…。ここです」
息を整えながら僕は自分の部屋…301号室を指さす。
少しも自慢にはならないが、角部屋なので、少し他の部屋より大きくなっている。
「入ろ」
きみがそう言い、すこし強引に鍵を僕から取って鍵を開ける。
ガチャン…ギーッ、と少し大きな音を立てながら、ドアが開く。
「お邪魔します」
と、さっきまでと比べて少し元気になった声できみが言う。
「ただいま」
といつもと変わらない声で僕は呟く。
家に女性を上げたのは初めてだ。
少し気恥しさというか、そんなものがあった。
そして、彼女はフードを取るのだが、その時に僕は驚いた。




