平穏な日々が
誤字報告ありがとうございます!感謝しております!
少し長めです
魔術国家総長バン・ビルバレットの言う通り、私は前回の記憶を持っています。
しかし、正しくはありません。
だって、私は2回目じゃなく6回目なんですもの!
あれは、私が16歳の時でした。アーノルド殿下の婚約者として、聖国の貴族が通う聖ルミナス学院の卒業を間近に控えていました。そして、元生徒会メンバーと現生徒会メンバーが主催した卒業パーティーで、事件はおきました。婚約者であるアーノルド殿下は、2学年下の特待生で聖女候補である男爵令嬢をエスコートし、4人の男子生徒達を引き連れてくると、私を聖女を虐げアーノルド殿下を暗殺しようとした罪で断罪し、引き連れている男子生徒に斬られてしまいました。それが、私の1度目の人生。
……気を失う寸前に見た、男爵令嬢の私を見下ろし笑っている顔が、今でも脳裏に焼き付いていますわ。
そして、2度目の人生の洗礼式で、1度目の記憶が蘇ってきたのです。洗礼式で金色、紫色、青色の光柱が現れた事、アーノルド殿下との婚約式でファーストダンスを踊ると、私を放置して他の令嬢達と踊っていた事。殿下は学院に入学し寮に入ると、女生徒をひっきりなしに連れ込んでいた事。聖女候補の男爵令嬢が現れると、王城に住まわせパーティーにエスコートして連れて行った事。その彼女と会った事もないのに、虐めたり悪い噂を流していると冤罪を着せられた事。そして、なにより自分が殺された事を思い出してショックをうけた私は、倒れてしまい1ヶ月寝込んでしまいました。
人と会うのが怖く部屋から出る事は出来ずにいましたが、2人の令嬢が毎日の様にお見舞いに来てくれました。
腰まである長いふわふわした淡いピンクが似合う、おっとりしていていつも笑顔の癒し系令嬢、セシル・ランドール伯爵令嬢と、濃いピンクの真っ直ぐに伸びた髪に、切れ長の目にセシルと同じ濃紺の瞳がクールビューティーなアリス・ランドール伯爵令嬢の双子の姉妹です。
お祖父様のお姉様のお孫さんで、私より少し歳上の再従姉妹です。産まれた頃から妹の様に可愛がってくれて、私も姉の様に慕っておりました。
彼女達から外の話を聞いていました。神から見放された悪魔の子、アーノルド殿下と親しい女の子に嫉妬して意地悪をしていると噂されていると聞いて、夢だと思いたかったけれど、記憶の中の洗礼式の後にも同じ噂話が広まっていましたから、私は過去に戻ってきたのだど、改めて確信しましたわ。
それから私は、殿下との婚約を破棄し首都を離れて、病気療養の為に辺境に住む叔母様の元へ行こうと決意しました。多忙で自宅に中々戻らないお父様と、首都の婦人会の中心人物であるお母様を1か月かけて説得して、お父様の部下で魔術騎士であるビンセント・タイムラーを連れて行って、毎日夕食後に通信魔道具で連絡をする事を条件に認めてもらいました。
そして、セシルとアリスとは距離を取り関わりを持たないと決めました。何故なら、2人は私と共に男爵令嬢を虐げと冤罪をかけられて、魔界へと国外追放されてしまったのです。2人を絶対にそんな目に合わせたくなかったので、辺境に行く事を告げずに離れました。
後にお母様から話を聞いた2人から、お怒りの手紙が届きましたわ。
首都を離れてから5年が過ぎ15歳になった私は、女性ながらに辺境伯である叔母様の元で領地経営を学びながら、ビンセントに魔術を学んだり、孤児院に行き子供達に勉強を教えたり(1度目では私は主席で生徒会長でしたから!)と、平穏な生活を送っていましたが、私を悩ます手紙が届きました。
聖国の国王が殿下との婚約破棄を認めてくれないのです。何より殿下が婚約破棄を認めないと言っているのです。
殿下と同じ聖国の学院に通っていて同じクラスのセシルとアリスから送られてきた手紙にも、「婚約者はアリシアだけだ」と、言ってはいるけれど、女生徒を生徒会に連れ込んでいてるらしく、殿下に本気の女生徒達に私が恨まれていると、だから、国王に呼ばれても絶対に聖国には来てはいけないと書いてありましたわ。
幸いな事に、お父様が私は公爵領の別荘で療養していて聖国には来られなく、病状が思わしくなく面会も出来ないと国王に仰ってくれていて、私が辺境に来ている事には気付かれていませんでした。
孤児院で子供達に勉強を教えながら、このまま平穏な日々が続く事を願っていたら、聞き覚えのある吐き気のする女の声で、私の願いは破かれ絶望に打ちひしがれました。
「やっと見つけた!アリシア様ったら、こんな田舎に隠れてたのね!」
後ろから声をかけられその声に恐る恐る振り向くと、会いたくない女の子が立っていました。
聖女である証の少し金色かかったホワイトゴールドの長い綺麗なサラサラの髪の毛を靡かせながら、まだ幼さが残る可愛らしい顔付きに、真っ白な肌に大きなピンクダイヤモンドの様な瞳がキラキラと輝いて、創造神アムラ様の愛し子でる事を証明している。
ベンチで子供の隣に座る私を、忘れることなどない、あの笑みで見下ろしてきました。
「あんたが居ないと、攻略が進まないじゃない!このまま学院に行くわよ!」
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