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#8 裏側


エルノアは散歩と称してフィーユを様々な場所に連れて行ってくれた。客人を持て成す際に使われるサロンでは美しい絵画を見せてもらい、医務室では何かあれば遠慮せず利用するように念を押され、ディナーの準備に忙しい厨房では昼間にマフィンを用意してくれた料理長に会って挨拶をした。最初のうちは足取りが重かったフィーユだが、行く先々でのエルノアの言動を見ているとフィーユが王宮で過ごしやすいようにという気遣いを感じて、嬉しくなっていた。



「やっと見つけました。ずっと探していましたのよ」


エルノアと他愛ない言葉を繰り返しながら歩いていたところ、背後から聞こえてきた声は僅かに怒りが滲んでいた。突然のそれに驚くフィーユに対し、エルノアは声だけでそこにいるのが誰か分かったらしく「リズメリー。わざわざ来なくても、時間を見つけて行くと言ったはずです」と溜息交じりに彼女のほうを向いた。


「ですが、折角、食事を用意したのに冷めてしまいます…」

「何度も言っているように食事は料理長に任せて。リズメリーに無理をさせて注意を受ける僕の身にもなって下さい」

「ただ、私はエルノア様の元気がないのではないかと心配しただけで…今日くらい許して下さい」


二人の言い合いは痴話喧嘩のようで微笑ましく思えたけれど、胸焼けしそうな甘ったるい雰囲気を放っていた小説の中の二人とはかなり印象が異なるものだった。戸惑いもあって、二人の会話を眺めていることしかできずにいるフィーユを気遣ってか、不意にエルノアの手が腰に触れ「今は彼女を案内している最中です。食事はまた後で」そんな言葉が発せられる。これに驚いたのはフィーユだけでなく、ここまで食い気味で言い返していたリズメリーも言葉を失う。


「あの、私は部屋に戻りますから、お食事をされてください」

「いえ、あと一ヶ所、案内したい場所があるので付き合って下さい」

「ですが…」


話が終わらぬうちから歩き出してしまうエルノアに従うことしかできないフィーユは悲しげに目を伏せるリズメリーに頭を下げると、小走りで彼の後を追った。妖精に対して差別することなく接してくれたリズメリーとはできれば仲良くしたい。そんな思いとは裏腹に、恋敵として認識されかねない現状に頭を抱えてしまう。


「私のことを気に掛けてくださるのは嬉しいのですが、あまり贔屓されると反感を持たれてしまいます。リズメリー様だけでなく、ベルベッタ侯爵様の件もそうです」

「僕もそう思って公の場以外ではあまり関わりすぎないように、と考えもしましたが、後ろ盾がなければ、平気で君を傷つけようとする者がいる気がして…何故か嫌な予感がするのです」


エルノアが予感していることこそ、まさに小説の展開だ。エルノアに距離を置かれ、温室に放置された結果が炎に包まれた夜である。そのことを知らないはずの彼が、どうして予測できたのかは分からないが、既にこの世界は小説と全く別の方向へ向かっていることは明らかだ。自分がもう少し上手く立ち回ることができたなら、エルノアに心配いらないと言えるのだが、ベルベッタにもリズメリーにも何も言えず戸惑うばかりだったことを思えば、おとなしく守ってもらうより他ないだろう。


「そう暗い顔をしないで。目的の場所に着いたので、顔を上げて下さい」


我儘な子供を諭すようなそれに素直に従ったなら、エルノアは安堵を見せたのち目の前の扉を開けた。木の香りを纏った温かな空気と部屋の中へ手招きするような美しい音楽で満たされた空間にフィーユは息を呑む。窓際に置かれた重い色をした高級感ある机と椅子、その手前に思わず飛び込みたくなるほど柔らかなソファセットがあることから察するに、ここは執務室だろう。どうしてこの場所に案内されたのか理解できずにいるフィーユに対し、エルノアは先に部屋の中へ足を踏み入れると窓際の椅子に腰掛け、遠慮せずに入ってくるよう促した。


「あの、どうして此処に…?」

「僕は一日の殆どを執務室で過ごしているので、何かあれば訪ねて来てほしいと思ったのです」


深紅の絨毯の柔らかさに自然と足が前へ進む中、遠慮がちに室内を見渡せばエルノアの拘りが感じられるから、自分が立ち入って良いものなのか不安になる。家具や装飾品だけでなく、レコードが奏でる音楽も、暖炉から零れる温かな橙も、完璧な世界を壊さぬよう無意識のうちに身を縮めた。


「今日一日、読書をしていたと聞きましたが、明日からはこの部屋を使ったらどうですか?暖炉も音楽も菓子もあって最適な空間ですよ」

「い、いえ…エルノア国王のお邪魔になりますし」

「ここは安全なので、僕も君がここにいてくれたほうが安心できます…それに」


途切れた言葉をそのままに、座って数分と経たぬうちに立ち上がって歩き出すエルノアを目で追う。次は何を言い出すのか身構えるフィーユに構わず歩みを進めたエルノアは絨毯より僅かに黄みを帯びた赤いカーテンを勢いよく引いた。


外の冷気が室内に流れ込んで僅かに温度が下がった気がしたが、それよりも大きな窓の向こうで揺れる光に意識を奪われる。ロープで手繰り寄せられるようにして窓際へと歩み寄ったなら、先が見えないほど大きな池と、その水面を染める様々な色の光が見えた。空はすっかり暗いというのに、そこだけ朝日が射しているような明るさだった。


「あの池は王宮を建てる際に埋め立てる予定だったのですが、当時の王がその美しさに魅了され、残すことになり、池が一番美しく見えるこの場所を執務室にしたそうです」

「どうして、池が光っているんですか?」

「妖精の羽根が多く沈んでいるからだと聞いたことがあります。妖精の羽根はある一定の条件で光を放ちます。勿論、様々な説はありますが、この土地は多くの妖精がいたこともあってその説が有力となっています」


この景色を見ていると心安らぐというエルノアはフィーユもそうであれば嬉しいと言ってくれるから、居心地悪く感じていた執務室が離れ難くなる。それはエルノアが言っていた通り、この場所に椅子を置いて窓の外の光で読書をしたらきっと素敵だろうと考えてしまうほどだ。いつまでも見飽きない光に意識を奪われていたフィーユだったが、唐突に二人の元へ近付いてきた兵士が「エルノア国王。サーテリアル国のピオニー王女から謁見したいとの連絡がございました」と声を掛けてきたことで、不穏な空気が立ち込めるのを感じた。


「エレンタン様がお断りしましたが、聞く耳も持たぬようで…」

「あれは熊のような女性だから仕方ない」


その例えを聞いたフィーユはガタイの良い女性を思い浮かべ、恐ろしくなる。「少し顔を出してこよう」と面倒くさそうにしながら答えるエルノアに、自分も付き添うべきなのか不安を滲ませるも「君はここで待っていて下さい」そう言ってくれるから、安堵交じりに頷いた。


それからすぐにエルノアと彼の側近たちは部屋から出て行った。コペリと二人きりで残され、自分はそれなりに信頼されているらしいと口元が緩む。主のいない執務室を物色するつもりはないが、つい大きな机に積み重なった書類や本棚に並んだ書物を物珍しげに見てしまう。しかし、難しい言葉と幾つもの数字が並ぶそれらにすぐに興味は薄れ、ソファに腰掛けてコペリと話をすることにした。


「コペリさんはピオニー王女をご存知ですか?」

「はい。お人形のように愛らしい方でございます」


エルノアの話とは真逆のそれに首を傾げたなら、コペリは透かさず「エルノア国王は性格のことを言われたのではないでしょうか」そう付け足した。サーテリアル国は観光業が盛んで主要国の一つに数えられている。幾つもある観光地の中で人気なのは世界一美しいと称される王宮だ。そして、そこで暮らす三人の王女もまた麗しい見目であると有名で、国内外に後援者が多く、彼女たちが望めば何でも手に入り、どんな我儘も叶ってしまうそうだ。


「ピオニー王女様はエルノア国王様にご執心で、何としても手に入れたいと、どんなに逃げられても拒絶されても、諦めず追いかけているようです」

「ですが、エルノア国王にはリズメリー様が…」

「勿論、そのことは承知でございます。ピオニー王女様が望むのは王妃の座ではなく、エルノア国王様の愛なのでございましょう」

「何だか…リズメリー様は単に王妃候補で、エルノア国王の愛はまだ誰のものでもないと言っているように聞こえます」


そこまで話したところで、コペリはふと何かに気付いた様子で廊下へと繋がる扉に鋭い視線を向けた。あまり大声で話すべき内容ではないため、扉の外にまで神経を張り巡らせていたのかもしれない。その後すぐにノックの音がして、フィーユは理解する。


「失礼致します。お話しされているところを申し訳ないのですが、エルノア様からフィーユ様に夕食のご用意を仰せつかったものですから」


扉が開かれた先に見えたのは相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべたエレンタンだった。これまで話していた内容を彼に聞かれたかは分からないが、その点について特に触れることなく「こちらに食事をご用意しても宜しいでしょうか?」と尋ねてきたため、フィーユは平静を装いつつ頷き答えた。


「はい…お願いします」


フィーユの答えを受けて、廊下に控えていた料理人や侍女が一斉に料理を運び入れる。真っ白のテーブルクロスが敷かれ、そこに絵の具を落としていくように鮮やかな料理が並べられる。肉に魚に、野菜、パン、デザートまで趣向を凝らした様々な料理にフィーユが戸惑っていることが伝わったのか「好みが分からず、一通り用意させて頂きました」とエレンタンは言う。そして、食べられないものは残して構わないという口ぶりにフィーユは眉を寄せた。


「あの、皆さんも一緒に食べませんか?残して良いと言われても気が引けます…」


テーブルの端から端まで一通り見渡したのち、そう声を掛けるとコペリは透かさず首を横に振り、自分は別の仕事があるからと言って部屋を出て行ってしまう。対して、エレンタンは「宜しいのですか?」と僅かに前のめりになる。フィーユも是非と食い気味に答えたなら、彼は自身が使うナイフとフォークをどこからともなく取り出し、向かいの席に腰かけた。


「無遠慮で申し訳ないのですが、実は朝から働き詰めで真面に食事とっていなかったものですから」

「エルノア国王の代わりにですよね」

「通常業務に加えて葬儀に参列された方のお見送りをしなければならず、どうにも気を遣ってしまいまして」


エレンタンはそんな話をしながら、目の前に置かれたサラダにフォークを突き刺した。彼の体型を考えると近くの肉に手を伸ばすと思っていたフィーユは意外に思いながら、トマトを口内に放る様子を眺める。


「最近は健康に気を遣っているものですから、血糖が急激に上がらないようサラダからという教えを実践したりなどしておりまして…本当は甘いものを控えると良いのでしょうが、疲れていると、つい手が伸びていけません」

「大変ですね…エルノア国王との付き合いは長いんですか?」

「元々、私はエルノア様の教師をしておりまして、エルノア様は幼少の頃から、自分が国王になった暁には、私を宰相にしてくれると言って下さっておりました」


当時は子供の話すことだからと真に受けていなかったが、実際に宰相として働いている今思うと嬉しい限りであると目に涙を浮かべるエレンタンに、エルノアが彼を信頼する理由が分かる気がした。


「おかげで、エルノア様に好意を持った女性から幼少期の話を尋ねられます」

「エルノア国王は女性から人気があるようですね」

「近頃は例のピオニー王女が随分と他の女性を牽制しているようですが、一時期はそれはもう大変でした」


再び名前が挙がったピオニーがどんな女性であるのか、フィーユはいよいよ気になってきた。その口ぶりからエレンタンが彼女のことを快く思っていないことが伝わるが、それほどまでに気が強いのか、我儘を言って困らせるのか、怖いもの見たさから興味が湧いた。


「だからといってリズメリー様を強く推すというのも、エルノア様の意志ではない気がしますし、難しいところではあります」

「え…お二人は自他ともに認める仲なのではないんですか?」

「ここだけの話ですが、お二人の婚約はリズメリー様が生まれた瞬間に結ばれたものですから、お互いに大事に思い合っているのは確かですが、お二人に他の選択肢がなかったのもまた事実でございます」


これまでエルノアとリズメリーの間に恋人らしい空気を感じることができなかった理由が分かった気がした。ずっと一緒にいたのなら、恋人というよりも家族に近い認識なのだろう。小説の中で描かれていたのも家族愛であると言われたなら納得はできる。そんなことを難しい顔で考えるフィーユにエレンタンは更に遠い昔話を始めた。


一気に本のページが捲られ、行き着いた先にあったのはエルノアの父、ドネヘシルが国王に就任した頃の話。華やかな就任式の陰にはドネヘシルの兄であるデントルテの存在があった。生まれ順に関係なく実力のある者が国王になることができるこの国で、第一王子の誇りを胸に国王となるべく努力を重ねてきたデントルテであったが、元々才能があったドネヘシルには敵わなかった。


「おめでとうございます。ドネヘシル国王」

「急に仰々しいな。でもまぁ、こうなったからには兄上の分まで頑張るつもりだ」


そんな会話をしつつもデントルテの悔しさは伝わっていたのだろう。燃え尽きて今にも消えてなくなりそうだったデントルテにドネヘシルは一つ提案した。自分が国のために尽力する代わりにデルトルテには世継ぎを育ててほしいと。


「愛だの恋だのといった刹那的な感情に振り回され、公務を疎かにするつもりはない。周りは世継ぎのために王妃見つけろと急かしてくるが、愛のない結婚をしても、女性とその子供が不幸になるだけだ」

「それは永遠の愛を誓った私とアイリーンの仲を否定しているように聞こえますが…」

「いいや。逆に二人を見ているから分かる。ここまで本気の愛は奇跡なのだと。だから、二人に未来を託そうと思う」


ドネヘシルの提案は生きる意味を失ったデルトルテにとって希望となった。幸運にも、その後すぐにデルトルテとアイリーンとの間には男児が生まれ、徹底した教育の甲斐もあって幼くして次期国王として期待されるようになった。しかし、それから数年後、ドネヘシルの前にユウリイが現れたことで歯車は狂っていく。


「俺は次期国王になるべく血の滲むような努力をした。お前に奪われてたまるか!」


ドネヘシルとユウリイの愛に引き寄せられるようにして、子供はすぐに授かった。エルノアと名付けられた彼は幼少期から何においても才能があると評され、彼こそが次期国王に相応しいと誰もが認めた。それに激怒したのは国王になるべく厳しく躾けられたデルトルテの子、リンドだ。エルノアの存在に全てを失うと悟ったリンドは剣を幼いエルノアに向けた。そこに居合わせたデルトルテが王子暗殺を阻止するも親子への制裁は免れなかった。


愛するユウリイを亡くし、子までも失いかけたドネヘシルは自らが過去に不用意な提案をしたことが要因であると理解しながらも、リンドを許すことができず。デルトルテとともに国外追放という裁判所が出した判決に判を押した。


「ドネヘシル国王。こんなことを言える立場ではないが、一つだけ頼みを聞いて頂きたいのです」

「申してみよ」

「アイリーンは身重です。外に放り出されては無事に出産できるかも分かりません。彼女だけでも此処に留まらせて下さい。子が生まれたなら、下働きでも何でもさせて構いません。ただ、寝床と食事を与えて頂ければ…」


国王に跪き請う姿は過去に仲が良かった兄弟からは想像できないものだった。ドネヘシルは自身のせいだと胸が痛んだが、体裁を気にして兄弟だからと優しい言葉をかけることすらできなかった。


「分かった。生まれてくる子に罪はない。王族の血を引く者として相応の地位を与えよう」

「ありがとうございます」


それから間もなくデルトルテとリンドは国を後にした。これは一部の人間しか知らぬことだが、国王の情けにより彼らには一生生活に困らぬ程度の資金が渡されたそうだ。今頃、王族の檻から解放された彼らが幸せであることを願うばかりである。


「残されたアイリーン様は生まれた子にリズメリーと名付け、子供を欲していた伯爵家に託すことを決めたのち、自分の存在は邪魔になるからとデルトルテ様の後を追って国を出ました」

「このことをリズメリー様は?」

「何もご存じありませんが、リズメリー様に王族の血が流れているのは確かであるため、ドネヘシル前国王はエルノア様と婚約を結び、王妃の座に座らせるのが自然と考えられたようです」


次こそ思い描いていた通りの関係を構築するため、ドネヘシルは徹底してエルノアとリズメリーの世界に誰も立ち入らぬよう手を回した。そして、リズメリーは誰よりもエルノアのことを気遣い、エルノアは誰よりもリズメリーを大事にするよう教え込まれた。結果、二人は同世代の友人もなく、互いが隣にいることが当たり前となり、ドネヘシルが思い浮かべた未来がすぐ目の前に迫っていた。


「二人の幸せを考えてというよりも、過去の過ちを清算するための婚約に思えます」

「私も同じように思うからこそ、ドネヘシル前国王が亡くなられたことを期に、エルノア様の心情に何か変化があるのではないかと期待しております」

「期待ですか?」

「王族や貴族の間では政略結婚が主流とはいえ、本当の愛を知らぬ人生など虚しいではないですか」


二人の婚約に真実の愛がないような物言いに気まずくなって、聞かなかったことにしようと思ったフィーユは止まっていたフォークとナイフを何事もなく動かしてバジル香るチキンを口に含んだ。本来は凄く美味しいはずのそれだが、沈んだ気分のせいで全く味がせず残念である。


エレンタンの話によると、エルノアは国王に即位する以前になぜ自身の婚約者が一介の伯爵令嬢だったのか疑問を抱き、真実を知ったそうだ。ドネヘシルのエゴに逆らって婚約を破棄することもできたが、それをしなかったのは既にリズメリーに対して愛情があったからだろう。


これまでドネヘシルの意思に従って国のために尽力してきたエルノアに対し、人生の伴侶くらいは自分が心から愛する女性を選んでほしいと思うエレンタンの心情も理解できるが、今更、エルノアとリズメリーとの間に入り込むことができる女性はいないだろうとフィーユは思う。


「リズメリー様は初めて会った私に対しても親切にして下さった素敵な方です。お二人が築いてきた日々を考えても、彼女以外にエルノア国王に相応しい方はいませんし、それ以上を望むのは贅沢です」

「本来はそう思うべきかもしれませんが…実は私、こう見えて恋多き人生だったものですから、心揺さぶられない熟年夫婦のようなお二人を見ていると、勿体ないと思ってしまうのです」


はにかみながら恋多き人生だったと話すエレンタンが意外で、思わず大きく反応してしまう。すると彼は照れながらもどこか得意げにこれまでの恋愛を語りだす。フィーユは最初こそ興味ありげに聞いていたが、途中からすっかり話題が逸れてしまったことに苦笑して、目の前の食事に集中することにした。穏やかな会話の中では食も進み、テーブルに並んだ料理はあっという間に空になった。







続く


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