エピローグ
小話です。
小話「登場人物がプレイするギャルゲ」
「こ、これが……、『モモミネウィンドリグレット』……」
「そう、ですね」
自分の入院が終わり、胡桃の戸籍に関するあれやこれや、どこに住むのか、これからどうしていくのか、それらが済んで暫くしての事。
遂にこのときがやって来た。
作中のサブヒロインだった彼女が、彼女が出ていたゲームをプレイするときだ。
「”シュガーベーグル♪”」
タイトルロゴが出る。
「あ、秋風さんの声だ」
やっぱり分かるものなのか。
「”モモミネウィンドリグレット♪”」
タイトルコールと共に、タイトル画面が出た。
「憂ちゃんの声だ。ふーん……こんな感じになってるのね。確かに皆の特徴を捉えてる気がする」
もしかしたら全く違うかも、なんて思ったけど、そんなことはなかったようだ。
「途中からのセーブデータもあるから、『あの後』からも分かると思うけど、どうする?」
「うぅ……ん。最初からやってみる。私が憂ちゃんと喧嘩してトラックに轢かれた後の話は、最後にする」
「分かった」
こうして、カーソルを「はじめから」に合わせて、クリックした。
……。
「ふーん。あの朴念仁は、このとき、そんなこと考えてたのね」
まずは共通ルートから。
ゲームは基本的に主人公である「久木 浩司」の目線で話が進むため、胡桃はこの主人公がその時々で何を考えていたのかに特に注目していた。
「話には聞いてたけど、こんなことが起こってたんだ……」
そして、彼女の知らない彼女にとっての裏話についてなども。
……。
「”ちょっと!”」
「あ」
「”『誰?』って……、科若胡桃!このクラスの委員長!というか、久木君は去年も同じクラスだったでしょ?”」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
胡桃は作中の「科若胡桃」の登場に、悶えていた。
「ちょ……大丈夫?」
「大丈ばない……」
「どうしたの……?」
「なんか説明台詞みたいになったのがこういう理由だったのかっていうのと、自分が撮った声がスピーカー越しに聞こえてるみたいでこう……心がゾワゾワする……。あとBGMが……」
「休憩する?」
「それは……大丈夫」
「そ、そう……じゃあ、続けるよ?」
「はい……」
カチッ
「”鳥頭なの……?”」
「んに゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!」
「……本当に大丈夫なの?」
……。
取り敢えず、萩野憂ルート以外の全てのルートを攻略し終えた。
「……ご感想は?」
「話としては、まぁ、面白かった……かな?話の部分部分で『ん?』って思うところはあったけど、それぞれ最後は纏まってたし。あとは……それぞれの私の最期については確かに、私だったらこうするだろうなって感じだったかな」
「解釈違いはない、と?」
「俯瞰しているから『こうした方が良いと思う』って思ったところもあったけど、実際にああいった場面に出遭ったらそうするのかな、とも思った」
「なるほど……」
やっぱり、胡桃はこのゲームの世界に近似した世界の存在なんだろうか。
「じゃあ最後に、萩野憂ルート行くけど、いい?」
「うん……」
そしてセーブデータの、登録した萩野憂ルート開始部分からのデータにカーソルを合わせて、クリックした。
……。
ルートクリア後。
「……うん」
タイトル画面に戻って来て、彼女は静かに、そして小刻みに頷いていた。
「……、どう?」
「憂ちゃん……ちゃんと立ち直れて、良かった……。あの朴念仁は最後の最後まで朴念仁だったけど……」
その頬には、一筋の涙。
「そっか……」
「ちょっとだけ、1人にさせて……」
「……分かった」
そして、部屋を出た。
……。
暫くして部屋に戻って来てみた。
「大丈夫?」
「うん……」
「改めて胡桃は、その……どうだった?」
「そう、だね……。私がしたことが、ちゃんと、意味のあることだったんだなって。皆、私のことを憶えてくれていて、それでいてちゃんと前を向いて幸せになってくれて、良かったって、思えた。私はそれで、十分だよ」
「……本当に?」
「いやぁ……ハハハ。分かってはいたけど、私の家族が私に触れていた部分が少なかったから、そこだけが心残りかな……。ま、考えても仕方のないことだから、幸せになってくれることを祈るばかりって感じ、かな……」
「……うん」
「すぅー……ふぅー……」
胡桃は天を仰ぎ、溜め息を吐いた。
「今日寝るときまで、手、繋いでもらって、良い?」
「うん、分かった。……コーヒー淹れようと思うけど、いる?」
「ありがと。ミルク多めでお願い」
「はーい」
あのゲームをしたことによって、彼女にとって、人生の一つの清算が出来ていると、いいな。
良ければ是非ともご評価・ご感想・誤字報告等を頂ければと思います!




