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七福神

作者: 知美

1.宇治北家うじきたけ


「……やっと、終わった」

 影牙えいがさん、片付け終わったかしら。

 私はゴミがいっぱい入ったゴミ袋を、両手に持ちリビングに行くとソファーに、横になっている影牙さんがいた。ローテーブルの上には、読み終わった本、テレビのリモコンが、出しっぱなしになっていた。

「影牙さん、出したら片付けてね」

「ゴメン、迩奈にな。つい癖で……」

「今日はもう、大晦日なのに……」

「……そうだな」

 とりあえずの片付けはしたけど、見た目がなんだかゴチャゴチャしてて、汚く見える……。

 ハァー……。


2.菊伊家きくいけ


 フローリングがキレイに光ってる。埃もない!

「これで大掃除完了! れい、そっちはどうだい?」

壮二そうじさん、お疲れ様。お正月の料理もだいたいは出来たから、後は、年越しそばを作ればいいだけよ」

 さすが僕の奥さん。幸せだなぁ。

「僕も手伝うよ」

「ありがとう」

 来年はどんな幸せが、待ってるんだろう。


3.乾杯! さぁ行くぞ!


 たくさんの荷物を、船に載せカウントダウンを待っていると、展望台の入り口にいる神様が、メガホンを出現させ大きな声で、カウントダウンを始めた。

 いよいよだ!

「5、4、3、2、1! 七福神達、あけましておめでとう。今年も無事に、新年を迎える事が出来た。これも七福神達のおかげだ。さて新年があけたから、早速仕事に行ってもらうが、その前に乾杯といこうか」

 神様がそう言うと目の前に、御猪口が出てきた。中にはお酒が、つがれていた。

「乾杯!」

「かんぱーい!」

 数えきれないぐらいの、七福神達がいるから「かんぱーい!」の声が良く響く。

「それでは七福神達、気を付けて福を配ってくるんだよ」

「はい!」

 さてがんばるか!

恵比寿天えびすてん様行きましょう。他の七福神達は、既に、人間界へ出発して行きましたから、ここに残ってるのは、私達7人だけですよ?」

 弁財天べんざいてん様に、そう言われ周りを見渡すと、自分達以外誰もいなく雲の上にいるのは、自分たちが乗っている船だけだった。

「そうだな。行こう」

 大黒天だいこくてん様、毘沙門天びしゃもんてん様、弁財天様、福禄寿ふくろくじゅ様、寿老人じゅろうじん様、布袋尊ほていそん様と、一緒に人間界へ向かって行った。


4.どうぞ


「着いたな」

「今度の家は菊伊家です。皆さん、準備できましたか?」

「出来たぞ」

 大黒天様が答えてくれた。大黒天様の周りには、福がたくさん入った袋が、準備されていた。

「行こう」

 たくさんの福が入った袋を持ち菊伊家の玄関をすり抜け中に入ると、家にいる神様達が迎えてくれた。

「七福神様、あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます。今年も福を持って来ました。皆さんで、分けてください」

「はい。わかりました」

「それでは、また来年お会いしましょう。おじゃましました」

 玄関をすり抜け、船に乗り込み次の家に向かって行った。


5.どうしようか


「着いた!」

 展望台に着くと、福を配り終えた七福神達が、中で楽しく談笑していた。

「恵比寿天様、お疲れ様でした」

「ありがとう」

 船から降りて展望台の中に行くと、まだ福が入った袋を持っている七福神達が、ちらほらいた。

 自分と同じ格好をしている恵比寿天様に「どうしたんですか?」と聞くと恵比寿天様から順番に答えてくれた。

「福を渡しに行ったんだが、家の中に入れなかったんだ」

 恵比寿天様は、しょうがないという感じだ。

「あらゆる窓で試したが、ダメだった……」

 大黒天様も、同じような感じだが、悔しさがにじみ出ている。

「中を覗いたら……」

 毘沙門天様は、その家の中を思い出してあきれているようだ。

「イヤー!」

 弁財天様は、毘沙門天様の言葉を聞いて、部屋の様子を思い出してしまったようで叫び出した。

 うっ、耳が……。

「見た目が汚かったんだ……」

 福禄寿様は、遠い眼をした。

「きっと奥の埃がとりきれなかったんだな」

 寿老人様は、なんで中に入れなかったか、分析しているようだ。

「埃があったり見た目が汚かったりすると中に入れないからな……。確か宇治北家だったか」

 布袋尊様は、わざわざ家の名前まで教えてくれた。

「そうだったんですか……」

 それを横で聞いていた弁財天様が「キレイな家にあたって良かったです」と耳打ちしてきた。

 確かに……。

「でもこの福どうするんだろう?」

「心配無用!」

 神様はそう言った後、指を鳴らし福が入った袋を集め始めた。


6.改めて


 何をするんだ?

 神様は長いテーブルと椅子を出現させると、七福神達全員に席に着くようにうながし始めた。全員が席に着くと、神様は福の入った袋を開けその福を、すべてのテーブルに行きつくように置いていった。するとその福が、豪華な食べ物や飲み物に変わっていった。

 すごい……。

「福は好きな物に変えられる。配れなかった福で新年のお祝いをしよう」

「はい!」

「改めて、あけましておめでとう。今年も幸せで楽しい1年が過ごせるよう願って乾杯!」

「あけましておめでとう! かんぱーい!」


7.宇治北家


 玄関を開け家の中に入ると、なんだか空気が重かった。

「なんだか新年から散々だったわね」

「そうだな……」

「まさか、掃除がちゃんと出来なかったからとか……」

「……そうかもな」

 今年こそは、ちゃんと掃除しよう。


8.菊伊家


「今日は良い事いっぱいあったな」

「そうね」

「これも、がんばって家中をキレイにしたからかな?」

「きっとそうね」

 今年もキレイにするぞ!

読んで頂きありがとうございました。

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