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天岩戸  作者: 細川波人
一章 artist
5/52

4 初任務

4

「はーい、みんな仕事だよ」


堂々と仕事に遅刻した華内が悪びれる様子もなく入ってきた。


 僕たちは、すでに20分近くこのデスクの席についたいと言うのにだ。怒り心頭と言う気持ちよりも僕は呆れる方が勝っていた。

 席に座っている皆の様子を見るにどうやら常習犯であることは確からしい。


「今回は、燈香君の初任務と言うことで難易度の低い仕事にしたかったんだけど、緊急で回ってきた仕事があるからそっちをやるよ」


「ちなみにそっちの難易度は?」


「分かりやすく言えばパズルの上」


 つまりは、佐藤並みの人間、もしくは佐藤よりも危険な人物と合い対すると言うことだろう。ちなみに、その比較対照となったパズルの捕獲は見事に失敗したわけだが。


「なら、俺たちだけで回したがいいんじゃないっすか?初仕事で殉職なんてさすがに笑えねぇ」


 やたらと金属の装飾の施された服に身を包んだ陽が椅子からずり落ちそうなほどだらけた姿勢で正論を口にする。


「そうしたいんだけど、上の人からの命令で燈香君を同行させるように言われているんだよね~」


「頭の悪い陽と同じなのは癪だけど私も反対です。上の判断で全体が危険に置かれるのは嫌です」


 左隣に座る結菜がはっきりと言う。


 然り気無く陽を蔑んだことは置いておいて、この意見は全くもってその通りである。

 

 いくらなんでも上の命令でも仕事は失敗、死傷者多数になる可能性があるのなら僕を外すか、命令自体を断ると言うのが当たり前だ。


 なおその正論に普通の男なら少なからず嫌悪感を抱いたりして、醜く口で抗おうとするものだが生憎僕は普通の男子ではない。


「足手まといで申し訳ないですね~」

「隣、ちょっとうるさい」

「……」


「いやー、こればかりはどうしようもなくてね。君たちも分かるよね」


 そこで全員押し黙る。僕には分からない何かが他の皆にプレッシャーをかけているのだろう。


 この沈黙が嫌々ながらの了承と言う形で話は再び進み出す。


「と言うことで概要の説明を葛籠君お願い」


 一瞬面倒くさそうな顔をするも葛籠は眼鏡に軽く触れて、パソコンのディスプレイに目を向け説明をはじめた。


「ターゲットは張間廉24歳。爪の能力を持ってる。レストランで14年間勤務してて、最近の行方不明の人物との関係性を疑われ逃亡。3区のスラムに潜んでいるっぽい。だからうちにこの仕事が回ってきたんだろうね」


「返り人だから専門であるここに依頼されたってことか」


 確か天岩戸に入る前に華内さんたちからそう聞いた。しかし葛籠は人差し指を立てて左右に振る。


「違う違う。確かにそうだけどそれを言ったら上の人たち、天城の方がより専門だと思う」


「それなら自分たちでやればいいのに」


「ごもっとも。でもね、天城は四針とか危険性の高い返り人を担当としているからこの程度の相手に割く人員がないんだ」


「でも……」


 人手が足りないとは言え人殺し、ましてや特殊な能力を持った返り人だ。危険性から考えれば無理してでも人手を確保し速やかな解決へ向かうべきのはずだ。


「それ以外にも任された理由あるんだよ」


 僕の不満を葛籠君が見透かして説明してくれる。


「うちには返り人の中では少数派の探索型がいるからね」


「探索型?」


「文字通りの意味だよ。敵や物の位置を知ることができるタイプ。返り人にはいくつかタイプがあるんだよ。多い順に説明すると、強化型、単純に身体能力が上がる能力。生産型、剣や銃などの物を作り出す能力。探索型。文字通り物や人の位置を把握することが出来る能力。そして最後に能力型、他の全てに属さない能力。この四種類だね」


 つまりは返り人の能力にはいくつかパターンがあり、そしてこの天岩戸の中にその珍しい探索型がいると。なので天城から即席のかき集めたメンバーよりはその探索型に頼る方が理があると言うことなのだろう。

 

 その探索型は誰なんだろう?パズルの事件で接した陽と結菜な能力は発言からして頭に浮かぶものはいくつか有るのだが探索型の枠ではないこと想像できる。


「誰がその珍しい人何ですか?」


 そう質問すると僕の右隣にいる京香さんが手を上げぴょんぴょんと椅子の上で軽く跳ねる。


「私!私!その珍しい人」


「どんな感じですか?」


 その能力を使う感覚を早くつかみ人間ならざる事をやってみたい。少し子供っぽいけれどすごく興味がある。


「能力を使ったら頭の中に立体的な地図が広がる感じかな。あれ、そうカーナビを頭の中に映したみたいな!どこに誰がいて何をしている分かるし持っているものまでも分かるわよ」


 便利な能力だな。率直な感想だ。これがあれば迷うこともなければ物を無くすことも無いだろうし、上手くやればくじの当たり外れまでも分かりそうだ。


 そんな不純な妄想をしているなか京香は話を続ける。


「それにね。把握している子供が何歳か、どこの学校の子か、何が好きなのか。そして何よりバレずに自宅までの経路を把握することができる!」


 そう言って子供のように目を輝かせ強く拳を握る。まさか自分より不純な人間がこの場にいるとは思わなかった。 


 この人にだけは探索型の能力は渡してはいけなかったと心底思う。神様どうして……。


「と、まあそう言うことだから、僕が監視カメラを使ってある程度エリアを絞るから京香、結菜、陽、燈香は現地に赴いて張間を探して捕獲して」


 各々頷き席を立つ。そして僕は結菜さんに強く手を引かれ武器庫へと向かったのだがそれまでの間長いまつげの下の大きく丸い暗闇の中の猫のようなは双眸が僕の方を向くことはなかった。


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