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ロビンとアリス

完結急いで、短編みたいになりました〜

連続投稿中

アリスと魔法


アリスとの生活は非常にゆっくりとした一日を送っている。張り詰めた空気は一切なく、その日その日を味わうような生活だった。


朝起きて、朝食を取って、森を探索し、薬草や花、いつも食べている木の実を集め、食事をとり、昼寝をした。椅子に座って昼寝をしているのだが、起きるといつの間にか小さな魔女は自分の足に寄りかかり眠っていた。そんな日が続くと不思議と心が穏やかになっていった。そしてお昼寝が終わるとアリスは魔女としての仕事が始まるのだ。


ダイニングのその向こうの扉にはいると、部屋をキラキラと明るく照らす小瓶が三つ、机の上の棚に大切そうに置いてある。そのほかには目立った物は見当たらず、魔法に使用する薬草や花が籠の中に丁寧に置いてあった。


小さな木の器に小川の一番澄んだところの水と薬草と花びらを浮かべ、アリスがそっと息を吹きかける。するとその薬草と花びらはたちまちその色と、鮮やかさを増した途端、水と薬草と花びらは一瞬にして消え、小さな光の粒となる。

アリスは準備した小瓶の中へと誘うように片手を優しく添えるとその光はふわりと瓶の中へと落ちていった。すべての光が小瓶の中に収まると、コルクの蓋で栓を閉め、愛おしそうに胸に抱きとめ、「ありがとう」とつぶやく。その後、小瓶を丁寧に棚に並べて、魔女としての仕事が終了する。


初めはその小瓶に光を集める光景見たさに、部屋に訪れその一部始終を見ていたが、次第に小瓶を優しく抱きしめる時のアリスの表情を見たいがために部屋を訪れるようになった。

終わった後、そばまで駆け寄ってくると、じっとこちらの顔を見つめあげる。


これは一度、魔法の美しさに魅了され、褒めてあげ、アリスを頭を撫でてしまったことがことの発端だった。頭をなでると子猫のように目を細め気持ちよさそうにしている。この魔法が使えるようになったときに、アリスの母も頭を撫でて褒めてくれたのだろうか。


その魔法は自然の力を借りて、少しずつ少しずつ、この大地に恵みを与える魔法だという。他の命を犠牲にして人は生きており、そこに感謝の思いをのせ、真心を尽くせば自然は応えてくれるとアリスの母は、アリスに教えてくれたそうだ。


アリスの母が病に倒れ、その命が尽きるそのときまで、感謝の思いの大切さを毎日アリスに語ったそうだ。

その命が尽きる瞬間、最高のおまじないをアリスに本人にかけてくれたらしいが、そのときのおまじないのコトバを思い出せないとアリスは言っていた。

アリスの母はそのときが来れば必ず、自然とわかるようになると教えてくれたそうだが、ロビンもどのような魔法、否、おまじないかどうか気になっている。

しかし、アリス本人が思い出さない限りそのおまじないを聞くことはないだろう。


思い返せば、お世話になっている村はよく実り、豊かな村だ。それに今まで転々としてきた村の中でもダントツの獲物の量であり、本当にこの魔法のおかげでこ地は潤い、豊かになっていると思い始めていた。そうなるとアリスはこの地で、村で、とても重要な存在なのではないかと思案する。

アリスの母は一週間に一度程度でその効果は持続するというが、アリス本人は毎日行わないと効果が出てこないという。頑なにこの地を離れるのを嫌がる理由もこれなのかもしれない。


アリスと弓矢


弓の手入れをしていると、アリスは不思議そうにその作業を見続けていた。彼女はテコでも動きそにないほど食い入るようにじっと見つめていた。

次第にその作業を手伝うと言い始め、油で表面を拭き取り、手触りを良くする作業を教えてあげた。器用に弓を磨いていたが、次第に自分の弓も欲しいと言い出したのだった。それならばと森を探検することになった。


「どんな木でもいいの?」

「そうだな、できれば真っ直ぐな木がいいね」

「じゃあ、いっぱいあるよ」

「本当かい?そこまで案内してくれる?」

「わかった」


森の中を元気に走り回るアリスを見ていると、危なっかしく思うものの、安心もしていた。始めてあった彼女と今の彼女でははるかにその外見の様子が変わっているからだ。朽ちかけていた体と、今の体を見れば一目瞭然。その目には活力が満ち溢れ、活発に動き回るようになっていた。


「ロビン、ここ」

「えっと……」


確かにまっすぐなのではあるが、それは木のようで木ではない、竹と呼ばれるものだ。辺り一帯に広がる竹林は思い思いの方へと伸び、見上げればその竹の笹が光を遮るように無造作に生えていた。


「ね? いっぱい」


弱った……竹で弓矢を作ったことも作くれるのかさえも知らない。しかし、この期待に満ちた目で見られてしまっては応えてあげたくなるものだ。


「よし、一本切って持って帰ろう」

「おー」


明るく元気に答えるアリスは飛び跳ねながらロビンの周りを回った。本当に最初に会った頃に比べると、元気になったものだ。生気すら感じなかったあの頃はどこへ行ってしまったのやら。もともとはこんなにも明るい少女だったのかと改めて思わさせられる。


まっすぐな竹を鉈で切る。根の部分を持ち上げると以外な軽さに驚いてしまった。これなら簡単に小屋へと持ち帰ることできる。アリスは喜んであたりを転げ回っていた。


以外にも弓は簡単に作ることができた。

適当な長さに切り、縦に鉈を入れると綺麗に割れたのだ。その工程を繰り返し、アリスの握りやすい幅に切りあわせる。木と同様で外皮の方が強い繊維が集中している。アリスの力でも弦を引くことができるように内側を削り出す。少しナイフを傾けてやれば簡単に削れてくれる。ささくれが手に刺さらないようにナイフを立てて丁寧に角を取れば全体が滑らかになった。両端に弦をかけるくぼみを作れば、弓本体が完成する。

そして竹をさらに細く細く糸のように削り、それを三つ編みにして弦を作った。くぼみにその弦をかけるば弓の完成だ。

ついでに矢も竹で作ってみた。


「ロビンできたの?」

「ああ、完成だ!」

「わー! わたしの?」

「ああ、アリスのだよ、ほら」

「やったー! 嬉しい! ロビンありがとう!」


受け取り無邪気に喜ぶ姿は作った甲斐があったと思わさせられる。弓矢の扱い方を教えると初めはびっくりして怖がっていたが、だんだんと慣れていった。的も作って的あてをして一緒に遊ぶ時間はあっという間に過ぎていった。


イチイの木


いつかは自分用に新しく弓を作る必要があるとロビンは思っていた。弓には最高の材料を、と探していたが、案外どこにでもある木がそうなのだ。しかし、どの木を見ても納得の行くまっすぐに伸びた木を見つけるのはなかなか困難だったが、アリスはいとも簡単に見つけてしまった。


「これがいいの?」

「あ、ああ。これはいい木だな」


頬ずりしてしまいそうになる程、まっすぐ綺麗に伸びたイチイの木があった。


「アリス、わかんない」


木を撫で続ける姿を見てため息混じりにアリスは言った。


「いいか、アリス。弓を作るための木はとても大事なんだぞ! こうやってまっすぐに伸びてる木じゃないと後々、変形してしまうおそれがあってだな、その度に火で炙ってひねりをくわえてやる必要があるんだぞ。またそれが結構時間がかかって骨が折れる作業なんだ。だけども、それもまたなかなか面白くてだな、時間を忘れていつの間にか夕暮れって時もあったな。それに……あれ」


アリスは自分の竹弓で遊んでいた。


「よ、よしこの木を切るぞ!」


木を取り直してアリスの見つけてくれた木と向き合う。

改めて見ると少し若い気もするが、弓作りには申し分ない。

木を切り、樹皮を剥がし、半分に切る。

弓の形は、そうだな。機能性を重視して、変な装色入れない、単純な形にすると決める。

削り出して形を整え、表面をなめらかにする。

綺麗にやすりがけを行えば、綺麗な弓の完成だ!


「ロビンできた?」


ワクワクした様子で完成した弓を見つめている。


「わあ、かっこいい!」

「ふふん、そうだろ?」


そう言って自慢げに高々と掲げる。

矢を弦にかけ、的あて用の板めがけて放つと、矢はすいこまれるように、的の中心へと到達し、的の後ろまで貫いていた。


「わ! 真ん中だ!」

「ああ、かなりいいぞ!」

「アリスもやる!」

「はは、アリスには無理かな~」

「できるもん!」


そう言って、ロビンから弓矢を受けとり矢を引くが、どれだけひいいてもアリスが引く弓はしなることはなかった。


「むぅ、硬い。ロビンみたい!」

「へ?」

「知らないの? 毎朝、ロビンの……」

「ま、待つんだ! それ以上は何も言わなくていい」


アリスから弓を受けとり、再び弓を引くが、強い風が吹いてきた。この風はしばらく止みそうにない。

風の吹く方を見つめていると、アリスは不思議そうに尋ねてきた。


「どうしてやめちゃったの?」


「風が強くてね、ちゃんとまっすぐ飛びそうにないな」


風を読み、標的をいることはできなくもない。だがこう風が強いと弓の性能を見るには不都合な状況だ。


「ふ~ん」


アリスは何か考えるようなそぶりを見せ、空を見上げた。しかし風が本格的に強くなってきた。小屋へ戻った方が良いだろうとロビンはありすへ言った。。


「アリス、小屋へ戻ろう」


「……うん」


***


 アリスはロビンとベッドの上で寝ていた。しかしアリスはぼんやりと天井を見つめていた。ロビンにはいつも助けてもらってばかりだ。何かお返ししてあげたいと思っても、ロビンはなんでもできてしまうから、何もしてあげられていなかった。だけど初めてロビンができないことがわかった今、アリスは何かお手伝いできないか考えた。


アリスだにできること、それは、おまじない。


だけどどうすればいいか考えているがなかなか答えが見出せないまま、夜が深まっていく。


隣ではロビンが寝息を立てている。外を見ていると昼間吹いていた風はまだ強く吹いている。


何か思いついたのか、目を見開く。ロビンを起こさないようにベッドからゆっくりと下り、小瓶を持って外へと向かった。


風上へとその小瓶を向けて、頭の上に両手で構えた。ロビンのために使うおまじない、とても素敵なおまじないにしたいと思いおまじないを唱えた。


「かぜさん、かぜさん。ロビンのおてつだい、おねがいします」


すると吹いていた風はゆっくりと止み、小瓶のなかへ小さなつむじ風となって集まっている。

コルクの蓋で栓をして小屋へと戻り、机の上にイチイの木で作った弓を置く。


そして、小瓶を胸に抱きしめ、蓋をあけると小瓶からでてきたつむじ風はゆっくりとアリスの小さな両手の上で渦巻いている。


両手の上のつむじ風をロビンの弓の上に両手を移動させ、おまじないを唱えた。


「かぜさん、かぜさん、ロビンのおてつだい、おねがいします」


つむじ風は、開かれた両手から降りて、イチイの木の上にふわりと舞い降りた。弓全体を確かめるかのように、弓の周りを一周すると、渦を巻いていた風は弓全体を包み込むかのように解けて消えていった。


「かぜさん、ありがとう」


お礼を言って、弓をもとあった場所へと静かに置く。


そして、ロビンを起こさないように静かにベッドへ潜り込んだ。


「ふふ。ロビン、喜んでくれるかな?」


ロビンが喜ぶ姿を想像しながら、眠りにつくのだった。


もうすぐ終わるよ〜

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