六十三、怒り
バリーン!
大津根がジーナに鏡を向けようとしたが、その前にジーナの力によって鏡は粉々になった。
「篤志!いい加減にしなさい!」
大津根は怒鳴った。
「はははは!これでもう誰も逆らえなくなった。みんなここで殺してやる!」
ジーナを見ると、眼の光は更に鋭くなり、小さな身体を目一杯大きく見せるように、両腕を広げて宏志と大津根を睨んでいた。
「やめるんだ・・篤志・・」
宏志は力のない声で、諭すように言った。
「うるさい!」
「篤志・・」
「ちょっとお父さん!なに気弱になってるのよ!」
大津根は父親の頼りなさをなじった。
「お前たちは俺を化け物扱いし、この島に閉じ込めた。俺はずっと一人だった!だからここにラムダの国を作ったのさ!それが悪いか!」
「なに言ってんのよ!お母さんをあれだけ苦しめて、よく言うわよ!」
「自業自得だ!あいつは・・俺をどんな目で見ていたと思う!お前にはわからないだろう!」
「開き直るんじゃないわよ!あんただって、自分の力を誇示してみんなを怖がらせていたじゃない!あんたこそ自業自得よ!」
「うるさい!黙れええええ~~~!」
ゴゴゴゴ・・
そこでまた、地鳴りがした。
「総帥・・もうおやめください」
憲司が怯えながらそう言った。
「黙れ!黙れと言っておる!」
「ねぇ・・ジーナ・・」
そこで田地が口を開いた。
ジーナは田地を睨みつけた。
「田地!ジーナの目を見るな!」
俺が叫んだ。
「いいんだ・・石竹くん」
なにを言ってるんだ・・
記憶を消されるぞ・・
「ジーナ」
田地がジーナを呼んだ。
「・・・」
「僕ね、きみと一緒にいて、今の話も聞いて、僕にはきみの気持ちがわかるんだ」
「なんだとっ!」
「僕も、ある意味・・化け物扱いされていたんだ・・」
「えっ・・」
「僕、以前はすごく太ってて、小学生の頃から虐められていたんだ」
「・・・」
「デブとか、気持ち悪いとか、死ねとか言われてた。だからきみの気持ちはわかるんだ」
「・・・」
「僕ね、ずっときみと友達でいるよ。だからもう、こんなことやめようよ。みんなを帰してあげて」
「誰が帰すものか!ここで殺してやるんだ。みんな死んでしまえばいいんだ!」
「ジーナ・・」
「お前に俺の気持ちなど、わかるはずもない!」
「いい加減にしなよ!」
「うるさい!」
バチーン!
そこで田地はジーナの頬を叩いた。
お・・おい・・
おいおい・・マジか・・田地。
「き・・貴様ああああ~~~!」
ジーナは田地に叩かれたことによって、怒りが増していった。
すると地鳴りは更に激しくなり、もう立っていられないほどだった。
ガガガガ・・
ガガガガガガ・・
「う・・うわあ~~!」
俺たちの仲間が、誰ともなく叫び声を挙げた。
天井を見ると、亀裂が入っていた。
「危ない!このままだと押しつぶされるぞ!」
俺はそう言ってドアを蹴った。
蒼空や直也たちも同じようにした。
憲司たちも命の危険を感じたのか、俺たちところまで来て手伝った。
バリバリ・・
ドアにも亀裂が入った。
よしっ・・あと少しだ。
バリーン!
そしてドアは潰れた。
俺たちは急いで部屋から出て、階段へ走った。
その際、智博だけは逆方向へ走った。
「智博!どこ行くねん!」
直也が呼び止めた。
「直ぐに戻る!」
そして部屋の中は、ジーナと田地、宏志と大津根だけが残った。
「ダメだ、田地を連れてこないと!」
俺は後戻りしようとした。
「航太!もう間に合わないよ!戻ると押しつぶされてしまうよ!」
蒼空が俺の腕を引っ張って、引き止めた。
「このままだと田地が死んでしまうぞ!」
「戻ったら航太だって死んじゃうよ!ダメだ、絶対に行かせない!」
「蒼空、なに言ってるんだ!あいつを見捨てるのか!」
ふと見ると、飯島も立ち止まっていた。
「飯島!お前、総帥が死んでもいいのか!」
俺はそう怒鳴った。
「・・・」
「飯島!しっかりしろ!総帥を助けろよ!」
そして飯島は引き返した。
「飯島くん!」
蒼空が飯島を呼んだが、飯島は振り返らなかった。
そこに智博が慌てて戻ってきた。
「智博!どこ行ってたんや!」
「説明してる暇はないよ」
智博はそう言って部屋へ入ろうとした。
相変わらず揺れはひどく、先頭を行く智博も俺たちも、壊れた部屋の入口を掴んだり、なにかを掴みながら進まなければならないほどだった。
「篤志!お姉ちゃんは、あんたを殺して私も死ぬわ!」
大津根は力づくでジーナを止めようとしていた。
「うるさい!死ぬのはお前たちだ!」
そこで大津根は、鏡の破片を拾った。
「さあ、覚悟しなさいよ」
大津根は破片をジーナに向けた。
「真奈・・やめてくれ・・」
宏志が弱々しく止めた。
「総帥!」
飯島はジーナの前に出て、自らの身体を張ってジーナを守ろうとしていた。
「どきなさい!」
大津根は飯島にそう言った。
「いや、どかない!私は総帥をお守りする!」
やがて天井の一部が崩れ落ちてきた。
「危ない!飯島!田地!早くこっちへ来い!」
俺が叫んだ。
「石竹くん、ここは僕に任せて」
智博はそう言って、服の中から何かを取り出した。




