六十、鍵穴
俺たちは床に座りながら、次の策を考えた。
けれども、鍵を探そうにも、もうどこにも見当たらない。
見つけたところで、穴は天井で塞がれた後だ。
「次の鍵があるはずなんだよね」
智博がポツリと呟いた。
「そうだな」
「ラムダは僕たちを圧死させようとしている。でも完全に逃げ場がないわけじゃないんだ。これはゲームなんだから」
「うん」
「それで、この天井なんだけど、ここだけ木製っておかしくない?」
「どういうことだ」
「実際に僕たちは壊して中へ入った。これって想定内のことじゃないかな」
「ってことは・・鍵は天井裏のどこかにあるってことか」
「うん。そう思うよ」
なるほどな。
確かに智博の推理は当たっているかも知れない。
この部屋はコンクリートで出来ている。
なのに天井だけ木製って、確かに変だ。
「よし、もう一度上がってみるか」
俺がそう提案し、俺たちはまた天井の裏へ上がった。
室内とは違い、ここは真っ暗だ。
きっと見落としたに違いない。
俺が左へ這って進み、智博は右へ行った。
「あっ!」
しばらくすると智博が声を挙げた。
「見つけたのか!」
俺は振り向いて訊いた。
「見つけた!」
ドーン!
そう言ったとたん、また天井が下がった。
ちょ・・これってもう無理じゃないのか・・
一体、どれくらい下がったんだ・・
まさか・・一番下まで・・?
俺は穴を覗いてみた。
するとまだ50cmほど余裕があった。
「智博・・天井はまだ下がりきってないけど、でも鍵穴は塞がれてしまったぞ」
「ちょっと待って・・」
智博は穴から這い出し、部屋へ下りた。
「おい、大丈夫か!」
俺は上から叫んだ。
「ちょっと待って・・えっと・・ああっ!ここだっ!」
「なんだ!なにか見つけたのか!」
「石竹くん、鍵穴があるよ。早く下りてきて」
「えっ、マジか!」
俺は慌てて部屋に下りた。
「ほら、ここだよ」
智博は寝そべりながら、その部分を指した。
俺も寝そべってそこを見ると、ドアの下の部分に確かに鍵穴があった。
これって・・ドアノブの鍵穴はフェイクってことか。
くそっ・・手が込んでいる。
「挿し込むよ」
智博はそう言って鍵を穴に入れた。
そして鍵を回した。
ガチャン・・
おいおい・・マジか!開いたぞ!
「やったね」
智博はそっとドアを開けようとした。
「あれ・・あっ!そうか!」
「なんだ、どうした」
「鍵は開いたけど、ドアノブを回さないと開かないよ」
「なに~~!」
くそっ・・
ドアノブはもう天井で塞がっている。
これ・・無理じゃないか・・
「もう一度、上がろう」
智博が言った。
「上がったところでどうする?ドアノブは塞がれてるんだぞ」
「また壊すんだ」
「えっ・・」
「ドアノブは天井の位置にあるはず。そこを叩き壊して回すんだ」
「そ・・そうか・・」
もうそれしかない。
迷っている時間もない。
そして俺たちはまた天井に上がり、ドアノブの位置を何度も叩いた。
ドンッドンッドンッ
寝そべった状態ではうまく力が入らない。
くそっ・・いい加減、開けよ!
「同時に同じ個所を叩こう」
智博が言った。
「よしっ。行くぞ、せーーの!」
ドーン・・バリバリ・・
そしてやっと穴が開いた。
「やったね!」
智博は穴から手を出し、ドアノブの位置を探していた。
「あ・・あった!」
ガチャン・・
そしてドアが開く音がした。
俺たちは急いで下り、やっとの思いで部屋から脱出した。
ドスーン!
振り返ると天井は床まで落ちた。
「うわっ・・」
智博は驚いていた。
俺も言葉がなかった。
「これって・・危機一髪ってことだよね・・」
智博が言った。
「いや・・どうなんだろうな。きっと俺たちの様子は憲司たちが見ているに違いない。俺たちが慌てふためいている様子を面白がってるんだ」
「確かにね。それでどこへ行く?」
「直也たちを見つけないとな・・」
そこで俺たちはBと書かれた部屋を開けることにした。
するとAの部屋と同じく、中にはマネキンが一体置かれてあるだけで何もなかった。
「これ・・読んでみる?」
うつ伏せになって置かれてあるマネキンを見て、智博が言った。
「いや、もう関係ないからいいんじゃないか」
「でも、メッセージは書かれてあるよね」
「読んだところで、俺たちはもうAから脱出したんだぞ」
「いや、読むべきだと思う」
智博は中へ足を踏み入れ、マネキンを仰向けにした。
―――Aからの脱出、おめでとうございます。さて次の指令です。きみたちの仲間はこの建物のどこかにいます。それを探し当ててください。ただし、探せる部屋は一つだけ。二つ以上探すと全員死にます。勘を働かせてください。健闘を祈ります。
なんだと!
この建物には部屋がいくつもある。
二階だけでも、ここから見た限り五部屋もあるじゃないか。
一階や三階と足すと、普通に三倍以上になる。
どうやって探せばいいんだ・・
「ここは慎重に行こう・・」
智博がそう言った。
それにしても・・誰もいない。
ジーナはどうした。
飯島はどうした。
俺たちはとりあえず階段を下りることにした。




