六、洞窟
雨もやがて止み、俺たちが歩き続けた先に、やっと洞窟の入口を見つけた。
「はあ~~・・疲れた」
蒼空は安心したように呟いた。
雨は上がったものの、その代わりどっと蒸し暑さが俺たちを襲った。
蒼空は溜めてあった雨水を、ゴクゴクと飲んでいた。
俺もペットボトルを出し、喉に流し込んだ。
「さて、行くか」
俺は先を歩き、入り口付近まで来た。
昼間だと言うのに中は真っ暗で、何も見えなかった。
「どう?田地くんたちいる?」
俺の後ろで蒼空が中を覗きこんだ。
「どうする?入ってみるか」
俺は振り向いてそう訊いた。
「叫んでみるとか」
「ああ・・そうだな。とりあえず呼んでみようか」
「おおーーーい!」
そこで俺は大声で叫んだ。
けれどもなんの返答もない。
「いないのかな。おおーーい!飯島くん!田地くん!」
今度は蒼空が叫んだ。
こんなに声が反響しているから、いたら聞こえているはずなんだけどな。
タッタッタ・・・
そこで足音が聞こえてきた。
俺たちは少し身構えて待った。
すると現れたのは田地だった。
「なんだよ、きみたち」
田地は不愛想に言った。
「いや・・あのさ、船が迎えに来ないし雨も降って来たからここに来たんだけど」
俺がそう言った。
「ここは僕たちの物って言っただろ」
それにしてもこいつ・・普通に元気そうだ。
何を食べていたんだろうか。
「っていうか、田地くん」
今度は蒼空が訊いた。
「なんだよ」
「今日帰るって知ってるんだろ?」
「知ってるよ」
「だったらなぜ、浜へ来なかったの」
「雨降ってたじゃん」
「そりゃそうだけど、置いて行かれるかも知れないのに」
「置いて行くわけがないだろう。僕たちお客さんなんだよ」
「まあ・・そうだけど。でもさ、探す手間とか考えなかったの」
「いなければ探すのが当然じゃないか」
「いや・・迷惑かけるとか、考えなかったの」
「そんなこと知らないよ」
「あのさ・・」
俺が口を挟んだ。
「だからなんだよ」
「とりあえず、俺たちにもここを使わせてくれよ」
「ヤダね」
「っな・・」
「どうしたの」
そこに飯島がやって来た。
「飯島くん、ちょっと田地くんどうかしてるよ」
蒼空がそう訴えた。
「どうかしてるとは?」
「ここ、じぶんたちの物だって。僕たちに使わせてくれないんだよ」
「田地くん・・きみはまたそんなことを言ってるのか」
飯島は呆れて田地を見た。
「だってさ、最初に僕はそう言ったんだからね。ここは僕たちの物だからって。そしたらさ、この二人、とっとと行けよって言ったんだよ」
「だから?」
「それって、ここを放棄したってことじゃないか」
「それより、迎えの船は来たの?」
飯島が蒼空に訊いた。
「いや、来てないし、連絡も取れないんだよ」
「え・・トランシーバー壊れてるとか?」
「いや、壊れてないと思う」
そこで俺はトランシーバーを取り出し、スイッチを入れた。
「応答願います、誰かいますか」
俺はボタンを押して言った。
相変わらず、ジーというノイズが聴こえるばかりだった。
「ほら、この音だけ。何の反応もないんだよ」
「そうなんだ・・」
飯島は手を出し、俺はレシーバーを渡した。
「あ、あ。応答願います」
飯島がそう言えども、なんの返答もなかった。
「ほんとだ。ダメだね」
「ねぇ、きみたち」
蒼空がそう言った。
「なに?」
飯島がそれに答えた。
「食べ物とか、水はどうしてるの?」
「食べ物は底を尽きたよ。水は雨が降ったからペットボトルに溜めてあるよ」
「そうなんだ・・。で、食べ物どうするの?」
「どうって言ってもなあ・・。とりあえずは水だけで凌ぐしかないよ」
「僕、お腹ペコペコなんだけど!」
田地がまた、自分勝手なことを言いだした。
「この二日間・・田地くんに分けてあげてたの?」
蒼空がそう訊いた。
「ああ・・まあね」
「え・・あの量じゃ、足りないでしょ」
「実は僕、ルール違反して余分に持ってきてたんだ」
「ええっ!なにを?」
「お菓子とかパンとか」
「げ~~マジで?」
「でももう、今朝なくなっちゃったけどね」
蒼空は俺の顔を見て呆れている風だった。
全く・・信じられないな。
サバイバルだっていうのに、これじゃ意味がない。
「で・・現状を整理すると、あるのは水だけ。食べ物はなし、添乗員から連絡もなし、と」
蒼空がまとめる風に言った。
「それで、中ってどうなってるんだ?」
俺がそう訊いた。
「単なる洞窟。雨露は凌げるってだけかな」
飯島が答えた。
「コウモリとか、虫とかいないの?」
蒼空が訊いた。
「いないよ。いや・・暗いからどこかにいるかもだけど、まだ確認してないよ」
「そっか」
「奥はどこまで続いてるとか、わからないんだな」
俺が訊いた。
「だね。僕たちがいるのは、ほんの入り口付近だからね」
「それじゃ、俺たちも入るけど、いいよな」
「うん、見つけたんだし、もちろんだよ」
そして俺たちは飯島の後をついて、洞窟に入った。
それでも田地は、不服そうな顔をしていた。




