五十四、尋問
俺が連れて行かれたのは、平屋のコンクリートの建物だった。
ここは、この建物以外、他の建物はなかった。
周りは木々で覆われ、いわば孤立しているような場所だった。
「入れ」
鉄の扉が開き、男に腕を掴まれたまま、俺は中へ入れられた。
村の建物も、コンクリートだ。
ここもよく似ている・・
細い廊下を進むと、右側にドアがあった。
男はドアを開け、俺を中へ入れた。
そこには机と椅子が置かれてあり、男は椅子に座った。
こいつは俺を見つけた男だった。
俺は立たされたまま、男の正面に向き合った。
後ろでは、もう一人の男が俺の腕を掴んだまま立っていた。
「さて・・訊きたいことが山ほどある」
男は両手を組む形で、机に肘を置いた。
「まず、お前はなぜここへ来た」
俺は何と答えていいかわからず、黙っていた。
「来る目的があったはずだ。答えろ」
「・・・」
バンッ!
男は激しく机を叩いた。
「答えろ」
男はもう一度、そう言った。
それでも俺は黙っていた。
「英二」
男は俺の腕を掴んでいる男にそう言った。
こいつは・・英二っていうのか・・
英二はいきなり俺の腕を捻りあげた。
あああ・・うっ・・痛いっ・・
俺は体をよじらせた。
「英二、足りないようだぞ」
すると英二はもっと捻りあげた。
「い・・痛いっ・・」
俺は思わずそう口走った。
「なんだ、喋れるんじゃないか」
男はそう言って笑った。
「い・・痛いです・・やめてください・・」
「ここへ来た目的を言え」
「そ・・それは・・痛いっ・・」
「英二、もういい」
すると英二は俺の腕を元に戻した。
「うう・・」
「ここへ来た目的を言え」
「目的は・・別に・・」
「別に、なんだ」
「その・・友達が・・ここにいて・・それで・・気になって・・」
「友達って、睦月のことか」
「あ・・はい、そうです・・」
「ならば、なぜこんな夜中に来たんだ。しかも鍵まで開けて」
「・・・」
「鍵を出せ」
鍵は・・智博が持ってるんだ・・
どうしよう・・
「えっと・・落としました・・」
「落としただと。まあいい。で、その鍵はどうやって手に入れた」
「え・・」
俺が答えに窮していると、男は俺をじっと見た。
「お前一人で来たのか」
「はい、一人です」
そこは、はっきりと答えた。
「嘘だな」
男は直ぐにそう言った。
ダメだ・・見抜かれてる・・
「いえ、一人で来ました」
「まあいい。調べればわかることだ」
「・・・」
「航太と言ったな。お前のやったことは重罪にあたる。死刑も免れんだろうな」
えっ・・し・・死刑・・?
うそ・・嘘だろ・・
「そ・・そんなっ・・」
「なんだ。不満か」
「いえ・・不満とかではなくて・・あの・・総帥と話をさせてもらえませんか・・」
「あはは!なにを言うかと思えば、総帥と話だと?冗談もほどほどにしろ」
「いえっ・・あの、総帥とは村で話をしました。村の中も案内したり、海にも連れて行きました」
「ほーぅ」
男は、少し意外だという風な表情をした。
「それで・・座談会も開きましたし・・。だから総帥と話をさせてください」
「お前な、ここへ来た目的も吐かずに、図々しいにもほどがある」
「だから・・目的は、睦月くんが気になって・・」
「そんな言い訳が通用するとでも思ってるのか」
「言い訳って・・違います、本当なんです・・」
「もういい。英二、こいつを監禁しろ」
英二は俺を強く引っ張り、部屋を出ようとした。
「ちょ・・ちょっと待ってください!それなら・・総帥に会せてもらえないなら、睦月に会わせてください!」
俺は英二に抵抗しながらそう言った。
けれども男は、俺に背を向けたまま、なにも言わなかった。
「行くぞ」
英二はドアを開け、俺を隣の部屋へ連れて行った。
ドアを開けると、そこは何もない部屋だった。
「入れ」
俺は英二に押された。
「ちょっと待ってください!」
しかしドアは容赦なく閉められた。
くそっ・・
これからどうしたらいいんだ・・
ここから出るのは無理だし、田地にも会えない。
智博は逃げ果せたのだろうか・・
捕まってたら、ここへ連れて来られているはずだ。
来てないと言うことは逃げ果せたに違いない。
頼む・・智博。
なんとか・・なんとか方法を見つけて、田地を救ってやってくれ・・
それとだ。
俺が帰らなかったら、直也はどうなる。
蒼空も・・和哉も・・慎之介も・・どうなるんだ。




