五十、衝突
「睦月、ダメだ!」
俺は思わずそう叫んでいた。
「なに・・?」
ジーナは俺を睨んだ。
し・・しまった・・
俺・・気絶させられる・・
いや・・記憶を消されてしまう・・
俺はすぐさまジーナから目を逸らした。
「おい」
ジーナが俺を呼んだ。
「はい・・」
俺は下を向いたまま返事をした。
「なぜ下を向いている」
「いえ・・」
それでも俺はジーナから目を逸らし続けた。
「こっちを向け」
ど・・どうしよう・・
「総帥のお顔を見ろ!」
飯島が叫んだ。
「総帥!」
そこで直也が叫んだ。
「なんだ」
ジーナは冷たい視線を直也に向けた。
「もうこうなったら、ほんまのこと訊きますけど、総帥はなんのためにこんな座談会なんて開いてるんですか!」
直也はもう、やけくそだった。
ダメだ・・直也。
それ以上は訊くな・・
「なんのためとは、どういう意味だ」
「そ・・総帥は・・不思議な力を持ってますよね!それをええことに、俺たちを脅迫してるとしか思えんのですけど!」
う・・うわあ・・直也・・
ついに・・タブーに踏み込んでしまったか・・
「あは・・あはは!」
ジーナは意外にも声を出して笑った。
「直也、お前は正直者だな」
「もうこんな・・意味のわからんことやめませんか?それに俺ら全員、騙されてここに連れて来られたんですわ!もういい加減、家に帰してくださいよ!」
「なるほど・・」
「なるほどて・・。俺らどんな思いでここにいてると思てるんですか。家族かて心配してるんです。俺ら高校生で学校もあるんです!俺の親友の智博は崖から落ちて死にました。あいつはもう・・学校も行けんどころか家にも帰れん・・もう死んでしもうたんですわ!それ知ってますか?」
「それは初耳だ」
え・・ジーナは知らなかったのか・・
「お願いします、総帥。家に帰してください。お願いします!」
直也は土下座をして頼んだ。
「お・・俺も・・お願いします!」
俺も土下座をした。
すると蒼空たちも同じことをした。
そうだ。
もうこうなったら気持ちの探り合いとか、そんなの意味がない。
直訴が一番かも知れない!
俺たちの様子を見て、ジーナはしばらく黙っていた。
「総帥。この者たちのたわごとは、聞き逃してください」
飯島が言った。
「たわごとではないぞ。正直な気持ちであろうに」
「総帥・・」
「全員、顔を上げよ」
そこで俺たちは顔を上げた。
「お前たちの気持ちはわかった。それで・・私の友人として睦月を連れて行く」
え・・
嘘だろ・・
気持ちなんて全然わかってないじゃないか。
「総帥!睦月を連れて行かないでください。睦月も解放してください!」
俺は懇願した。
「航太くん・・僕はいいんだ。総帥の友人として本部へ行くよ」
「睦月!なに言ってるんだ。お前も一緒に帰るんだよ!」
「航太!総帥の決定に逆らうことは許されん!」
飯島が怒鳴った。
「うるさい!飯島、しっかりしろよ!お前の家はここじゃない。お前、総帥に記憶を消されたんだぞ!」
「なにを言うか!無礼者!」
「そうやで、飯島!しっかりせんか!」
直也も加勢した。
すると蒼空も「飯島くん!僕たち一緒に苦難を乗り越えて来たじゃないか!」と叫んだ。
「黙れ!偽りを言うな!これは総帥に・・ラムダに対しての反逆罪であるぞ!」
飯島は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「樹生・・もういい」
ジーナが静かにそう言った。
「はっ・・」
飯島はジーナに頭を下げた。
「お前たちは実に面白い。少なくとも・・私を恐れて本心を言わぬ者どもより話が分かる」
「それなら帰してくれますよね。俺たち全員、この島から出してくれますよね」
俺がそう言った。
「あはは!面白いと言っただけのこと。帰す気持ちはない」
「なっ・・。さっきは解放するって言ったじゃないか!」
俺はもう、敬語も使わなかった。
「お前たちの気持ちが、ラムダにないことはよくわかった。本心が聞けただけでもこの座談会は有意義であった」
「どういうことだ・・」
「今後もラムダのために尽くしてくれ」
そこでジーナは立ち上がった。
「ちょ・・総帥!待ってくれ!」
「睦月、行くぞ」
ジーナは田地を呼んだ。
「はい・・」
田地はジーナに言われるがまま、立ち上がった。
「おい、田地!待てって。行くな!」
俺は田地の腕を掴んだ。
「田地!行ったらあかん。俺らと一緒に帰るんや!」
直也も立ち上がった。
「田地くん・・行っちゃダメだよ。もう一生帰れなくなるよ・・」
蒼空もそう言った。
「お前」
ジーナが俺を見たと思ったら、目が光った。
あっ!し・・しまった・・光を見てしまった・・
次の瞬間、俺は意識を失った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
俺が目を覚ますと、ジーナと飯島と田地はいなくなっていた。
「石竹・・目が覚めたか」
直也が俺の顔を覗きこんで、そう言った。
「あれ・・俺・・」
「気絶しとったで・・」
「え・・マジか・・」
「航太・・大丈夫・・?」
蒼空も俺を見てそう言った。
「た・・田地は!」
「連れて行かれたよ・・」
和哉が言った。
「マジかよ・・。それで本部へ戻ったのか」
「うん。そうみたい」
慎之介が答えた。
「だってもう夜だぞ・・」
「慌てて憲司らが来てな。本部まで送り届けるいうて、出て行ったわ」
マジかよ・・
田地・・なんでジーナと友達になんか・・
お前、なにがあったんだよ・・
なにを隠してるんだ・・




