四十七、ジーナ
ジーナに出された料理は、俺たちが口にできない手の込んだものばかりだった。
ローストビーフに、オニオングラタンスープ、生ハムのブルスケッタ、という具合に、フランス料理が並べられた。
ジーナはどれも美味しそうに食べ、満足している様子だった。
「総帥、ご堪能いただけましたか」
憲司が訊ねた。
「うん。とても美味しかったぞ」
「恐れ入ります。それで・・お休み頂くのでしたら、私の寝室をご利用ください。準備は整えてございます」
「その必要はない。私はテントへ行く」
「総帥・・テント・・ですか」
憲司は面食らっていた。
「それとその方たちの案内も必要ない。私はこの者たちと行く」
ジーナは俺たちを指した。
おい・・マジかよ・・
「えっと・・お前の名は」
俺はジーナに訊かれた。
「航太と申します」
俺は少々、ためらいがちに答えた。
「航太か・・。その方は」
今度は直也が訊かれた。
「え・・直也です・・」
直也も戸惑っていた。
「私は航太と直也に案内してもらう」
「そうですか・・。承知しました。では航太、直也、総帥をご案内しなさい」
俺と直也は憲司にそう言われ「はい」と答えた。
「総帥、私もお供致します」
飯島がそう言った。
「うん。お前も着いて来るがよい」
こうして、俺と直也が村を案内することになった。
これって・・いいのか・・
飯島と話とかできるのか・・
でも安易に話しかけるのは危険だな。
なにかの罠という可能性もある。
「なかなかいいところだな」
外に出るとジーナがそう言った。
「総帥、どこから参りましょうか」
飯島が訊いた。
「そうだな・・まずテントが見たい」
「承知しました」
飯島は俺たちを見て「テントへ案内いたせ」と言った。
え・・飯島、お前テントの場所、知ってるだろう。
俺と直也は顔を見合わせて、戸惑っていた。
「航太と言ったな。早く総帥を案内いたせ」
「あ・・はい・・」
俺と直也は二人の先を歩き、テントへ向かった。
「ちょ・・航太・・。飯島、おかしいな・・」
「演技かも・・」
「うーん・・そんな風には見えんけどな・・」
ほどなくしてテントに着き、俺と直也が寝泊まりしている場所を案内した。
「ここです」
俺は扉を開けて見せた。
「ほほう・・」
ジーナは珍しそうに中を覗いていた。
「総帥、いかがでしょうか」
飯島が訊いた。
「うん。ちょっと狭いけど建物もしっかりしている」
「恐れ入ります」
「私は今夜、ここに泊まろう」
「え・・総帥、それはなりません」
「どうしてだ」
「総帥がお休みになる部屋は、準備させてあります。そちらでお休みください」
「そう堅いことを言うな。樹生は融通が利かないところが欠点であるぞ」
「なにを仰せですか。総帥の身の安全をお守りするのが私の使命でございます。ここは奴隷が寝泊まりするところ。変な病気がうつるとも限りません」
「まったく・・わかった」
ジーナは半ば呆れ、同時に落胆したようだった。
そして次に焼却場を案内することになった。
焼却場へ着き、直也が鍵を開けた。
ガラガラ・・
扉を開けると、ジーナは昨夜の積み残しのマネキンを見ていた。
「炉を動かせ」
ジーナが命じた。
「あ・・はい」
直也が炉の前に行き、スイッチを押した。
すぐにゴオーッという炎が燃え上がる音がした。
「これを入れてみよ」
ジーナはマネキンを指した。
直也は炉の蓋を開け、一体のマネキンを放り込んだ。
直也が炉の蓋を閉めようとすると「そのままでいい」とジーナが言った。
そしてジーナはマネキンが燃えるさまを、じっと見ていた。
「総帥、お下がりください。火の粉が飛び散ります」
飯島が言った。
「かまわぬ」
ジーナはなんでマネキンが燃えるのを見ているんだろう・・
「ところで・・」
ジーナが振り返り、俺たちを見た。
「航太、直也。その方ら、年はいくつだ」
「俺は十七です・・」
俺が答えた。
「俺も十七です・・」
直也も答えた。
「そうか・・」
「航太、直也。総帥も十七であられるぞ」
飯島がそう言った。
えっ・・高校生なのか。
小学生だと・・ばかり・・
いや・・高校なんて行ってるはずもない。
義務教育すら受けてないはずだ。
「そうですか・・」
俺がそう答えた。
そしてジーナは焼却場を出ようと扉に向かって歩き出した。
「おい・・飯島・・」
俺は隙を狙って飯島に声をかけた。
「飯島・・?」
飯島は怪訝な表情を浮かべた。
「飯島・・どうしたんだよ・・。お前、おかしいぞ・・」
「無礼な。口を慎め」
飯島は俺を蔑んだ目で見て、ジーナのもとへ行った。
なんなんだ・・
飯島のそれは、演技じゃないのか。
いや・・悟られまいと態度を徹底しているのか。
「やっぱりおかしいな・・」
直也が言った。
「マジでわからない・・」
「おい、何をしている。次を案内いたせ」
飯島が扉のところで俺たちを呼んだ。




