四十一、物色
俺たちが監禁されて、一時間ほどが過ぎた。
「今日は、食事抜きなんかなあ・・」
直也が天井を見てそう言った。
確かにそうだ。
飯島は脱走したし、同じ食事係の慎之介はここにいるんだ。
「確かに腹は減ったけど、我慢しよう」
俺が言った。
「今日の夕飯はなんやったん?」
直也が慎之介に訊いた。
「カレーライスだよ」
「げっ・・カレーかあ。食べたかったなあ」
「それにしても、いつ頃帰って来るんだろうね・・」
蒼空が言った。
「そりゃ、見つかるまでだと思うよ」
蒼空と同じ清掃係の和哉が答えた。
「そうだろうけど、でもここの監視が手薄になってること、構わないのかな・・」
「鍵が閉まってるんだし、僕たちは出ようにも出られないよ」
「まあ・・そうだよね・・」
「あ~~あ!」
直也がそう言って立ち上がった。
「ほんまに!こんなところに閉じ込めやがって」
直也はドアノブをガチャガチャと回した。
「あ・・」
いきなり直也の手が止まった。
「どうした、直也」
俺がそう訊いて、みんなも直也に注目していた。
「ちょ・・マジかいな・・」
直也は振り向いて俺たちを見た。
「どうしたんだよ!」
俺が更に訊いた。
「開いてる・・」
直也はそっとドアを少しだけ開けた。
「え・・うそ・・」
蒼空も立ち上がった。
俺も慎之介も和哉も、ドアの傍まで行った。
すると本当にドアは開いていた。
「おい・・どうする。今やったら誰もいてへんで・・」
おいおい・・マジか・・
ちょっと待てよ・・
鍵のかけ忘れなんて・・
これは千載一遇のチャンスなのか・・
「憲司もいないのかな」
和哉が言った。
「どうなんやろ・・いてるとしたら自分の部屋なんかな・・」
直也は少しだけドアから顔を出していた。
「なんか・・シーンとしてるで・・」
「航太・・どうする?逃げた方がいいと思う?」
蒼空がそう訊いた。
「ちょっと考えよう。逃げるにしても、なにか武器になるようなものとか持たないとダメだろう」
「キッチンにはあるよ・・」
慎之介が言った。
「それって包丁とかか?」
直也が訊いた。
「うん、包丁もあるし、千枚通しとかも」
「それよりさ、やつらの部屋に、なにかあるかも知れないぞ」
俺がそう言った。
「確かにそうだ。やつら銃を持ってるし」
和哉が答えた。
「でも、銃は持って行ってるんじゃない?」
蒼空が言った。
「とにかく、探すんは今のうちや。帰ってこん間しかないで」
俺たちは直也の「号令」によって、部屋を出た。
直也と俺、蒼空と和哉と慎之介という風に、二手に分かれて探すことにした。
俺と直也は、まず憲司の部屋を確かめることにした。
ドアに鍵はかかっていなかった。
「あれやな、不用心にもほどがあるな」
直也がバカにしたように笑って、ドアを開けた。
憲司の部屋は、俺たちがチェックを受ける部屋とは別に、もう一つドアがあった。
「ここは、なんや」
直也がそのドアを開けた。
「ふーん、寝室か」
俺も中を覗いてみると、ベッドが置かれてあり、部屋の隅には机も置かれてあった。
そして贅沢にもクーラーも設置されていた。
「腹立つな!自分らだけクーラーで涼んでたんやな」
「ほんとそれな。ムカツク」
俺は机の引き出しを開けてみた。
すると一冊のノートが出てきた。
ページをめくってみると、俺たちの個人情報が記されていた。
それは憲司から見た個々の性格から、仕事の適正なども書かれていた。
―――ラムダ航太・・性格に難あり。頑固、嘘つき、自尊心が高すぎる、学と教養は無し。今後も教育が不可欠。
なんだよこれ!
教育が不可欠って・・これからも暴行されるってことじゃないか!
―――ラムダ直也・・堅実、従順、言葉に難あり、幹部の素養は無し。
「おい、直也」
俺は直也を呼んだ。
「なんや」
「お前、幹部の素養はないって書かれてるぞ」
「えっ」
直也は俺の傍に来て、ノートを覗きこんだ。
「なんやねん、これ・・」
「だからお前、チェックの日に言ってもムリだぞ」
「くそっ!勝手に決めやがって」
「ちょ・・待って・・」
俺は飯島のところを読んだ。
―――ラムダ樹生・・堅実、利口、実直、最も幹部に適した人材。
「もしかして・・飯島が見つかった時、あいつ本部へ送られるんじゃないのか・・」
「確かにそうやな・・。もう逃げ出せんように本部へ送るで・・」
―――ラムダ睦月・・大食漢、ほぼなにも考えていない、生涯この村で労働が適当。
それを読んだ俺も直也も黙っていた。
―――ラムダ蒼空・・従順、気弱、ただし、航太の影響を受けるとその限りではない。幹部には不向き。
俺は敵ながら、よく見抜いていると思った。
「石竹・・お前、今後も気をつけなあかんで」
「ああ・・そうだな・・」
俺たちはほどなくして、憲司の部屋から出た。
建物の中を歩いていると、蒼空たちが戻ってきた。
「蒼空、どうだった?」
俺が訊いた。
「これ・・見て」
蒼空が紙を広げた。
「おい・・これ地図じゃないか」
そう、その紙はこの島の地図だった。
「これ、どこにあったんや」
直也が訊いた。
「克樹と小百合の部屋だよ」
その地図は、テント村はもちろんのこと、本部への道順も書かれてあった。
「ちょ・・これって、港じゃないのか・・」
島の裏側と思しき場所に、船の絵が描かれてあった。
「そうなんだよ。ここへ行けば船があるんじゃないのかな」
「ほんまやな。そこへ行けば島から出られるかも知れんな」
「他には何か持ってきたのか」
俺が慎之介に訊いた。
「うん、さっきも言ったけど、これ、包丁と千枚通しね」
慎之介は布袋を見せた。
「そっか。それで銃はあったのか」
「なかったよ。残念だけど・・」
「でも地図があるんやから、これが一番大きいことやで」
直也の表情は、とても明るくなっていた。
さて・・あとは飯島と田地だ。
捕まったら、飯島は確実に本部送りで、田地は拷問されることだろう。
俺たちは、この村を出るかどうするかを話し合った。




