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三十、蒼空の潜入




ドンドンッ!


突然、ドアを叩く音がした。

直也は俺の方を見て、ロッカーへ行けという合図をした。

俺は椅子から立ち上がり、腰をかがめて急いでロッカーへ入った。


ガラガラ・・


「なんで鍵なんてしてるんだ!」


ドアを開けると、男が怒鳴った。


「すみません・・」

「ほら、廃棄分だ。どけ」


男は十体ほどのマネキンを乗せた荷車を中に入れた。


「全部、今日中に焼くんだぞ」

「わかりました・・」


直也は終始、俯いて返事をしていた。


「それと、鍵は仕事が終わってからかけろ」

「はい・・」


そして男は出て行った。

直也は急いでドアを閉め、俺に「出てきてええぞ」と言った。

俺はなるべく音がしないように、扉を開けて出た。


「なんか、偉そうな男だったな」


俺がそう言った。


「いつものことや。別に気にしてへんよ」

「そうか・・」

「さて、また仕事の追加や」


直也は荷車から、一体ずつマネキンを下していった。

単なるマネキンと、ファスナーがついているマネキンを分け、数も数えていた。


「えっと、まずこっちから解体するか」


直也は、ファスナーがついているマネキンを解体することにした。


「俺も手伝おうか?」

「いや、ええって。鍵も閉めてへんし、いきなり入って来られたら終わりやで」

「そっか・・」


俺は椅子に座り、直也の作業を見ていた。


「喉が渇いたら言ってくれよ」


俺がそう言った。


「あはは、ええって。それよりいつでもロッカーへ入れるよう、心構えしとかなあかんで」

「わかった」


それから直也は手慣れた様子で、マネキンから機械を取り出していた。

三か月もこんな作業させられてるんだもんな。

しかも朝から晩まで。


「さて、次や」


直也は次のマネキンをうつ伏せにした。


ジー・・


ファスナーが下りる音がした。


「え・・ええっ!なんやこれ!」


直也は後ろにひっくり返った。


「どうした!」


俺は思わず直也に駆けよった。


「人・・人やがな・・」

「え・・」


マネキンを見ると、確かに人の背中が見えた。


「し・・死んでるんかな・・」

「ちょっと待ってくれ・・」


俺はもしやと思って、ファスナーを腰まで下げ、頭の部分を脱がせた。


「こっ・・これは、蒼空!蒼空じゃないか!」


そう、中に入っていたのは蒼空だった。

けれども蒼空は、気を失っていた。


「蒼空!蒼空ああ!」

「ちょ・・蒼空って石竹の友達か?」

「そうなんだよ。こいつ・・なんでこんなこと・・」

「大変やがな。はよここから出さな」


俺と直也はマネキンから蒼空を出した。


「蒼空・・聞こえるか。俺だよ、航太だよ」


俺は蒼空の耳元で囁いた。


「どうや、目を覚ましそうか?」


直也が水道でタオルを濡らし、俺に手渡してくれた。


「あ・・ありがとう」


俺は蒼空の額にタオルを乗せた。


「まさか、むりやりここに入れられて、変な注射とか打たれたんちゃうやろな」

「そんなっ・・」


俺は蒼空の身体をゆすってみた。


「う・・ううっ・・」


すると蒼空が気がついた。


「蒼空・・大丈夫か」

「え・・ああ・・ああっ!航太!」

「航太じゃないぞ・・。お前、どうしたんだよ」

「ここはっ?」

「焼却場だよ」

「ラムダの?」

「うん」

「そっか・・」

「っていうか・・お前、なにやってるんだよ」

「なにって・・。あ、僕、気絶しちゃったんだね」

「まったく・・」

「え・・その子は誰?航太、大丈夫なの?」


蒼空は直也を見て警戒していた。


「ああ、こいつ直也。直也もな俺たちと同じ目に遭ったんだよ」

「え・・そうなんだ・・」

「俺、佐竹直也。よろしく」

「ああ・・僕、池垣蒼空。よろしくね」

「しっかしまあ、じぶんら、大胆にも程があるわ」

「え・・」

「石竹だけでもびっくりしたのに、次は友達かいな」


そう言って直也は笑った。


「飯島と田地はどうした」


俺が蒼空に訊いた。


「僕たち三人で航太を助けようって、この方法を使おうとしたんだけど、田地くんにあうマネキンがなくてね。それで飯島くんは田地を一人にできないって言って、今も洞窟で隠れてるよ」

「そうだったのか・・」

「航太が無事でよかったよ・・」


蒼空はタオルを俺に手渡した。


「こんなんさ、一か八かの賭けやんか。死ぬかも知れんかったんやで」


直也は半ば呆れてそう言った。


「でも僕たちは、航太を置き去りになんかできないよ。それなら助ける以外にないだろう」

「そりゃそうやな・・」

「それにしても・・直也くんだっけ。きみもサバイバルをしたの?」

「うん。石竹から聞いたけど、俺らもじぶんらと同じゲームやっとったんや」

「そう・・なんだ・・。それで捕まってしまったの?」

「うん。船でここに連れてこられたんや」

「・・・」

「それより、あれやな。ロッカーに二人は入れんし、どこに隠れるかやな」


直也は焼却場を見渡していた。


「机の下くらいか・・」

「なんか、ごめん。僕が来たせいで・・」

「いや、かめへん。それにしても、ロッカーも机の下も、寝られへんがな。どうしたもんかな・・」

「直也、俺たち平気だから」


俺が言った。


「まあそう言いなや。なんとかテントまでバレんように行けたらええんやけどな・・」


直也はしばらく考え込んで「あっ!」と言った。


「あの荷車や」


直也は焼却炉の横に置かれたままの荷車を指した。


「ほんでやな、テントからシーツを持ってくるから、それで隠して運ぶわ」

「大丈夫なのか・・。バレたら俺たちはいいとしても、お前、マズイんじゃないのか」

「バレたらバレた時のことや。もうこんな奴隷生活、うんざりや!」


そして直也はシーツを取りに、テントへ向かった。

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