表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/65

二十七、焼却




荷車は二十分くらい歩いたところで、ラムダのアジトらしき場所に到着した。

そこには、いくつものテントが張られており、ラムダの一族と思しき人間がうろついていた。


彰人(あきと)、それじゃ、あとは頼んだぞ」


彰人と呼ばれた男は、洞窟に来た男の一人だった。

無精ひげを生やしているので、年を食ってるように見えた。

少なくとも、三十代ではないな。


「わかった」


彰人はさらに荷車を動かし、「俺たち」を火葬場と思しき場所へ連れて行った。

煙が上がっているぞ・・

もしかして・・焼却するのか。

これは大変だ・・


ガラガラ・・


彰人がドアを開けて、荷車を中へ入れた。


「おい、これ焼却しとけ。機械は取り出せよ」


彰人は若い男性に、命令口調で言った。


「はい・・」


その男性は帽子を被っていたので顔はよくわからなかったが、とても若そうに見えた。

焼却炉の横には、何体ものマネキンが置かれてあった。

男性は無言で「俺たち」を荷車から下し、粗雑に地面に置いた。


くそっ・・イタタタ・・


「はぁ・・」


男性は突然ため息をつき、その場に座った。


「いつまでこんなん、せんといかんのやろ・・」


え・・関西弁・・?


「なんでこんなん、燃やさなあかんねん。なんで俺がこんなことせなあかんねん・・」


こいつ・・どうしたんだ・・


「しゃあないな・・」


男性は立ち上がり、積み重ねられたマネキンの中から一体、また一体と焼却炉へ放り込んでいた。

このままだと・・いずれ俺もあの中に放り込まれる・・

それだけは絶対に阻止しなければならない。

くそっ・・ファスナーは後ろだし、脱ぐこともできないし、ましてや絶対に動いてはならない。

どうする・・どうする・・俺。


ガラガラ・・


そこで入口の扉が開いた。

すると別の男性が入ってきた。


直也(なおや)・・」


入ってきた男性が名前を呼んだ。

関西弁のこいつは、直也っていうのか。


「なんや、智博(ともひろ)か」

「今日か明日には、やるんだって・・」

「そうなんや・・」

「かわいそうだよね・・あの子たち」

「そんなん言うたって、どうしょうもないがな」


今日か明日・・?

あの子たち・・?やる・・?かわいそう・・?

なにをやると言うんだ。


「まあ・・俺たちは黙って従うしかないんや」

「うん・・」

「もう逃げ出そうなんて、考えたらあかんで」

「・・・」

「あいつが、どんな目に遭ったか、知ってるやろ」

「うん・・」


ちょっと待てよ・・

この二人は、ここへ連れて来られたんじゃないのか・・

どういう経緯にせよ、連れて来られたに違いない。

それで、この智博ってやつは、逃げようとしたんだ。


「手伝うよ」


智博がそう言った。


「ええって。自分の仕事あるやろ」

「もう今日の分は終わったよ」

「そうか。でもええわ。テントへ戻ってゆっくり休み」

「そっか・・わかった・・」


智博は肩を落として出て行った。


「さて、俺も仕事や」


直也は、やれやれといった風に、再び身体を動かしだした。


「えっと・・」


直也はマネキンを数えながら、「ここまでやな」と、最後に俺を数に入れていた。


げ・・今日の仕事は俺を焼却して終了ってことか。

ヤバイ・・

早くなんとかしないと・・


直也は焼却炉の蓋を開け、次のマネキンを放り込んでいた。

その際、ゴオーーッという炎が燃え盛る音がした。


「それにしても、暑いわ」


直也は首にかけたタオルで汗を拭っていた。

俺だって滅茶苦茶暑い・・

ああ・・喉が渇いた・・


マネキンが燃える間に、直哉は機械が埋め込まれているマネキンを解体していた。

あっ・・そうか・・

俺もファスナーを下ろされる・・

その時・・どうなるかだ。


万が一、俺を死体だと思って直也が叫んだら誰かが来るかも知れない。

それはまずい・・

それまでに何とかしないと・・


「さてと・・こいつか」


とうとう直也は俺を解体しようと、うつ伏せにした。


「え・・なんやこのマネキン・・おかしいな」


直也がそう呟いた。


ジー


ファスナーを下げる音がした。


うっ・・どうすれば・・どうすればいいんだ。

万事休すか・・


ガラガラ・・


そこでまた扉が開いた。


「あ、また智博か。どうしたんや」


そうか・・智博が入って来たんだな・・

俺はうつ伏せにされたので、状況が見えなかった。


「直也、出発するんだって」

「え・・俺らもか?」

「うん。そうらしいよ。それで呼びに来た」

「そうか。わかった」


直也は立ち上がり、焼却炉のスイッチを押し火が消える音がした。

そして二人は外へ出て行った。


た・・助かった・・

俺はようやく動くことが出来た。

さて・・どうするかだ。


俺は背中に手を回し、必死でファスナーのつまみを掴もうとした。

すると直也が下げたおかげで、やっと手が届いた。


よしっ・・慎重に・・


ジー・・


俺は左右の手を交替させながら、ゆっくりと下していった。


ジジ・・ジー・・


やっとの思いで腰まで下りた。


や・・やった・・やったぞ・・


俺は急いでマネキンから出て、抜け殻になった「俺たち」の上に重ねた。

さて・・どうするかだ・・

俺は窓から外を覗いてみた。


するとラムダ一族が、慌ただしく右往左往していた。


智博はどこかへ行くようなことを言ってたな。

それでこんな状態になってるのか。

いずれにしても外へは出られないな。


俺は「フゥ」と言って、その場に座った。

焼却場の奥を見ると、水道があった。


俺は急いでその場へ行き、思いっ切り水を飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ